5-5
二時間近くたってから莉奈と汐里が戻ってきた。
「なんか、ずいぶん大きな声出してたな」 涼介が言うと、汐里が、
「これ見て!」
と言って、白い表紙に学校の校舎が印刷されたアルバムを開いた。
「莉奈ちゃんの高校の時のアルバム!」
そう言って、汐里は莉奈の個人写真を指差した。
「かわいい!」
あまねが最初に声を上げた。
「ギャル化する前のコガリナだ。⋯お前ってもしかして美少女?」涼介が続ける。
「そこも驚くとこなんだけどね。驚いたのは、ここよ」
そう言って汐里は莉奈の名前を指差した。
「古河莉奈?」琴葉が呟く。
「よく見て!」汐里は改めて名前を指さして、その指でアルバムをトントンと軽く叩いた。
「あ、古河莉奈!」
涼介がふりがなを読み上げた。
「そう!コガリナっていうのは、本当の読み方じゃなかった!」
「そこ驚くとこかなー」莉奈が少し不思議そうな顔をしている。「まあその、高校時代、ちょっと地味でしょ?――」
「いや、めっちゃかわいいぞ!」涼介が反射的に否定した。柄になく頬を赤らめている。
莉奈はちょっと困った表情で続けた。
「あ、ありがと。でも、本当に地味でさ。大学入ったら変わってやろうって思ってて。『ふるかわりな』よりも『コガリナ』の方がなんか勢いあんじゃん?このイメージにも合うかなって思って。それで、自己紹介の時に『コガリナ』って言ったらそのままあだ名になっちゃったんだよね。まあいいか、ってそのままにしてた」
「面白いエピソードだね」あまねが反応する。
「でしょ?!」汐里にまた興奮が戻ってくる。「それであれこれ話が膨らんでこんなに時間たっちゃった」
あ、という感じで汐里が何かを思いついたようだった。
「今度さ、みんなで昔のアルバム持ち寄って、見せ合いっこしない?」
「え、えぇ⋯」
小さい声ながらも明らかに動揺していたのは琴葉だった。
「まあ、嫌な人はいいけど⋯。見せられる範囲で」
汐里のその提案に、皆口々に、いいね、と言い合った。
「あ、そうだ」と言って、莉奈が話し出す。「ぼちぼち帰る人もいるだろうから、『次』の告知!年越しイベントやります!――続きは靖太郎から!」
それを受けて靖太郎が話し始める。
「年末年始は実家に帰る人もいるだろうから、来れる人だけでいいけど。うちで年越しイベントやろうと思うなりよ。戸建てじゃないから、ちょっと手狭だけど、何とかなると思う」
「ち、近くに神社とかある?」琴葉が質問する。
「あるなりね。地元のだから、そんなに大きくはないけど。」
「じゃあ、カウントダウンした後、すぐに初詣したりもできる?」
「ああ、地元の人はみんなやってるみたいなりよ」
「おー!なんか楽しそう!年末番組見ながら年越しそば食べて、初詣か」涼介がすぐに反応した。
「じゃあそんな感じで!」司会が莉奈に戻ってくる。「帰省との兼ね合いもあると思うから、参加確認はまた後で。分かり次第教えてね」
口々にオッケーと皆請け合った。
みんなで年越しか。去年までの俺では考えられないな、直陽はそんなことを思っていた。
**次回予告(5-6)**
駅に着くと、直陽とあまねは、瞬、琴葉と別れ、二人で帰ることに。




