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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第三章 夏合宿
59/69

4-8

 直陽はその後、一人で授業に出た後、部室には寄らずに帰った。

 直陽は元来一人が苦ではないたちだ。一人でカフェに入り、本を読んだり、勉強をしたり、スマホで情報を集めたり。何時間でも、何なら一日中でも構わない。

 今日は最寄りの駅近くのマックに入った。飲み物を頼んで、一人席に座る。

 読書用の本を取り出すが、本当は少し考え事をしたかった。

 今日のあまねはほとんど目をそらすことなく話をしていた。以前のよそよそしいあまねとは明らかに違っていた。何かの変化があったのだろうか。

 あまねの目の奥に何が見えたか。その目の奥に、写真のように切り取れる一瞬はなかったか。

 明確な何かが見えたわけではない。ただ直陽はあまねを安心させたかった。何かに怯えているとまでは思わなかったが、やはり何かを抱えている。

 推測は推測でしかない。それは彼女が言ったことだ。その言葉に救われたことがあるのも事実だ。

 ただ最近思う。

 推測が人の心を苦しめるのは、その推測に心が飲まれてしまうからだ。心に灯台を持ち、その光を見失わない限り、推測によって嵐に巻き込まれることはない。大切なのは人に嫌われないかと恐れることではない。俺は一人でも生きていける。恐れることなど何もないのだ。それでもなお、『人からの影響』『人への影響』を信じている。それが直陽の灯台だった。

 最悪、あまねに嫌われてしまってもいい。今大事なのは、あまねが助けを必要としていることだ。それだけは何となく分かっていた。

 あまねの目。不安な思いと変化。自分にとっての『それから』。月。コーヒー。

 直陽はそれから長い間、推測の波に、自らを委ねた。

**次回予告(4-9)**


また一緒にバスに乗る二人。微笑むあまね。しかし、直陽はある違和感を覚える。

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