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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第三章 夏合宿
55/69

4-4

 授業にはそのまま一緒に出た。以前一緒に受けた時とは違うあまねが隣にいた。

 授業が始まり、タブレットを開くように指示がある。

 指定のリンクを開くと、そこには「夏目漱石『それから』」とあった。

 直陽とあまねは思わず顔を見合わせた。

 あまねはにこっとして、「すごい偶然」と言った。

 教授は、

「今日は夏目漱石の生い立ちや経歴など大まかな話をした後、『それから』を読み解いていきます。ただ、内容はまずはみなさんが読むことが大事です。そのリンクで無料で読めますので、読んでおいてください」

 と言った。ここから数回かけて『それから』を読み解いていくから、遅くともそれに合わせて読み進めておくようにとのことだった。

「ごめん。結末まで言っちゃったね」

 隣にいたあまねが申し訳なさそうに言う。

「俺が知りたいって言ったから。それにあまねさんの言葉で聞きたかったというのもある」

「そっか、よかった」

 あまねが安心した表情になる。

 教授が続ける。

「最初にみんなに訊きたいのですが、この『それから』というタイトルを聞いた時、何を感じましたか?では、リンク先のフォームに書き込んでください」

 フォームには、

「1 この『それから』を読んだことがありますか。はい/いいえ」

「2 『それから』という言葉に何を感じましたか」

 とあった。読んだことはなかったので、「いいえ」としたが、二つめの質問の冒頭に「読んだことはないですが、あらすじと結末は知っています」と注記した。

 その上で、「まず『それから』とはどれからなのだろう?いつからなのだろう、と思った。次に「それ」からどうなるのだろうと思った。ストーリーは恋愛もの、しかも三角関係や働くことなど、やや重いテーマであるには関わらず、このような余白の多いタイトルはさすがは漱石だと思った。」

 と書いた。

 ちらっとあまねを見る。もう打ち終わって手持ち無沙汰にしている様子だった。

「どんなこと書いた?」

 と訊いてみると、

「初回だから、教授が求めているのは本当にさらっとした、『それから』という言葉から受ける素朴は印象なのかなと思う」

 と答えた。

「なるほどね。あまねさんは何を書いた?」

「自分にとっての『それから』はいつだろうか。そして、『それから』どうなっただろうか、ってことかな」

 あまねがそう言ったところで教授が話し始めた。スクリーンにいくつかの意見を表示しながら、解説をする。当然というべきか、物語の核心に触れてしまう直陽の意見は取り上げられなかった。

「じゃあ、次の意見」

 教授がタブレットをタップすると、

「自分にとっての『それから』はいつだろうか。そして、『それから』どうなっただろうか」

 とスクリーン表示された。

 ちらっとあまねを見ると、あまねも直陽に目配せをしてきた。あまねが小さく微笑んだのが分かった。

「これはとても本質的な疑問ですね」と紹介しながら続ける。「こののテーマの授業は四回を予定していますが、最後にまた同じ質問をします。その時のみなさんの変化が楽しみです」

**次回予告(4-5)**


「部長とそりが合わなくて」と言うあまねに対して、直陽は⋯。

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