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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第三章 夏合宿
52/69

4-1

 後期が始まった。

 十月になり、いわゆる秋晴れが続き、気持ちの上でも晴れ渡る時期。しかし、大学生は少し事情が異なる。

 大学生の夏休みは本当に長い。高校までとは違って、二ヶ月もある。とすれば、それだけ復帰への抵抗も強くなる。

 朝五時半。スマホのアラームで目を覚ます。カラッと晴れた天気とは裏腹に、直陽の心は眠気と億劫おっくうさに支配される。でも今日はあの授業の日。

 そうか、今日はあまねさんに会える日なんだ。でもどっちのあまねさんだろう、という考えが直陽の頭をよぎる。合宿は楽しかったし、その後のLINEでもあまり変わったこともなかった。ただ問題は解決していなくて、不安も残っている。

 身支度をしてバス停へと向かった。



 バス停に近付くと、遠目からあまねが並んでいるのが見えた。

 近付くにつれ、あまねの姿が大きくなる。

 こっちを見ている。そして、小さく手を振っているのが見えた。

 そして直陽は気付くのだ。これは()()()()()()方のあまねさんだと。

「おはよう」若干気を遣っている自分に気付く。

「おはよう」あまねも返事をする。

 ただ、夏のよそよそしさとは少し違った気もした。まずうつむいてはいなかった。よそよそしいというよりは、少し元気がないように見えるといった方がいいかもしれない。天真爛漫さは鳴りを潜めているが、ある意味普通と言えるのかもしれなかった。

「私、どうかな」

「どう、って?」

「合宿のときと、比べて」

「ちょっと元気がないかなとは感じるけど。体調悪いとか?」

「あ、いや、そういうわけじゃないんだ。心配してくれて、ありがと」

 直陽はあまねの目を見た。その目の奥を覗けば、写真で切り取るように、何かが見えてくるかもしれないと思ったからだ。

 何かが見えかけたと思った瞬間、あまねは目をらした。

「バス、隣に座っていいかな」あまねが訊いてきた。

「うん、もちろん」と直陽は答える。

**次回予告(4-2)**


バスの中で「恋愛の近代文学と心理学」の話題になり⋯。

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