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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第三章 夏合宿
51/69

3-26

 翌日は合宿の最終日だった。

 合宿で撮った写真をみんなで見せ合う公的な品評会。

 二年生の写真は二日目にある程度見ていたので、見られる抵抗感は薄かった。やはり緊張していたのは一年生。そして情けないことに村瀬部長だった。

 とはいっても部長の写真は特別注目を引くものはなく、本人の空回り気味に時間は過ぎていった。

 皆の注目を浴びたのは、瞬と直陽だった。それぞれ別の意味でだったが。

 瞬は楓菜の写真比率が高かった。無意識だったのだろうが、誰もが気付いていただろう。ただそれを指摘するような野暮もいなかったのが彼にとっては救いだったかもしれない。

 直陽はが注目を浴びたのは、その成長だった。数ヶ月前までは人物写真から逃げていた者とは思えない写真ばかりだった。楓菜や琴葉の心の奥を盗み見するような写真に始まり、和楽器部の恍惚とした尺八奏者の顔。引きで撮った、ステージと客席の演者の対峙。どれも間違いなく、この合宿の成果だった。

「なんか悔しいなりね」

「だな」

「だね」

 口々に嫉妬の声が漏れる。

 直陽はというと、涼し気なもので、あまり実感がなかった。特別何かを成し遂げたとか、努力をしたという感覚がないのだった。



 昼食を食べ終わると、撤収の時間になった。合宿所の退館ということで、写真部は慌ただしく動いた。部屋の片付けが一番時間を使ったが、午後二時の予定には何とかみんな間に合い、ロビーに集合した。

「まずはお疲れさま。台風が直撃するトラブルもあったが、何とか副部長が機転を利かせてくれて乗り切ることができた」

 これは将来尻に敷かれるなと皆が思った。

「だが、気を抜かないでくれ。台風の本体は過ぎたが、まだ少し雨は続く。あと一息、がんばろう」

 外を見ると昨日のどしゃぶりに比べればだいぶマシにはなったが、油断はできなかった。

「昨日の和楽器部は大変だっただろうなー」涼介が呟く。

「そういえば涼介、コガリナとは話せたのか?」直陽がふと思い出して訊いてみる。

「それがな、飲み会の記憶がほとんどないのよ」

「そんなことだろうと思った」

 涼介は大きな溜め息をついた。

「それはそうと、直陽、あまねさんとはどうだったの?」

「うん、まあ、今のところは」

「なんか、嬉しそうだな。ま、なら良かったさ。俺の道のりは遠いな」

 涼介のその言葉を聞き、直陽は思う。俺も⋯実は何も解決していないんだ。



 合宿所を出る時、あまねと汐里、それと佐伯が見送りに来てくれた。

 直陽はあまねに一言かける。

「何かつかめそう?」

「うん、たぶん。直陽くん、ありがとね」

「こちらこそ、楽しかった。じゃ、また」

 と言って笑顔で手を振る。

 あまねも手を振りながら笑顔で返した。

「私、がんばるね!また学校でね!」


**次回予告(4-1)**


第四章 「秋」編

後期が始まる。バス停で会ったあまねが「合宿に比べて、今の私、どうかな?」と訊いてくる。


**作者より**


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