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晴れた日には、恋をする  作者: 月舟 蒼
第三章 夏合宿
47/69

3-22

 飲み会場の部屋を抜け出し、一階のロビーに向かう。

 昨日の自販機のあたりにあまねが立っていた。

「ごめんね、急に呼び出しちゃって。大丈夫だった?」

 申し訳なさそうに言うが、飲み会でもちょうど一人だったし問題はなかった。

「大丈夫大丈夫。どうせ毎日飲んでたし、ちょうど『飲み会の谷間』だったし」

「谷間?」

 あまねは不思議そうな顔をする。

「んー、つまりは話し相手がいなくなっちゃった状態」

「ああ、そういうことあるよね」

 うんうん、と頷くあまね。

「で、あまねさんはどうしたの?」

「まあ、私も似たような感じ」

「あまねさんでもそういうことがあるんだ」

「もちろん――でね」

 ちょいちょいとばかりに手招きする。小声で話すような素振りを見せるので、近付いてみる。すると、

「ちょっと探検しよう」

 とささやいた。

「どこを?」

 窓から外を見ると相変わらず雨が打ち付けている。台風の一番強い部分は過ぎたとはいえ、まだ当分雨は続くだろう。

「まさか、外じゃないよ。あっち」

 と言ってあまねは研修所の方を指差した。

 旅館側からは接続廊下が出ていて、その向こう側は研修所に繋がっている。それぞれの建物の出口には扉がついているものの、常に開け放たれている。

 ただ研修所側は真っ暗で、誰もいないのは一目ひとめで分かる。

「研修所?あっちって夜に入っていいの?」

「さあ?でも鍵かかってないんだから、入っちゃいけないってわけでもないんじゃない?」

「それはそうなんだろうけど」

 あまねはワクワクした顔で直陽を見つめている。

 こういうあまねさんにはあらがえないんだよな、と直陽は思う。

「行ってみるか」あまねさんがこういうことを言うときは何か楽しいことが待っている。直陽はそんな予感がした。

「そうこなくっちゃ」あまねは大げさに右手の親指を立ててウィンクしている。

 あまねは直陽の左手を摑んで、

「さ、行こう!誰かに見つかったら行けなくなっちゃう」

 と言って暗い廊下の奥へと引っ張っていった。

**次回予告(3-23)**

会議室に入り込むと、あまねが「あ!」と何かに気づく。


**作者より**


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