3-21
莉奈と靖太郎は、いつになく真面目な顔つきで話し込んでいるので、どこか近付きがたい。
そこから少し離れたスペースの壁に暁人が寄りかかり、琴葉が一緒に座っている。その向かいに涼介が身振り手振りを加えながら何かを話している。
涼介が、
「だーかーらー、結局楽しんだもの勝ちなわけよ。どんな世界にいても、とにかくノリって大事じゃん?」
と言うと、
「⋯チャラ男め」
と琴葉が毒づく。
それを見ながら暁人が無言でビールをちびちび飲んでいる。不思議な構図だ。
少し離れたところから数枚撮る。
ファインダーから目を離したとき、左の視界の片隅に瞬と楓菜が見えた。
瞬は楓菜の近くで話し続けていて、楓菜も時々返事をする。確かに前よりも楓菜は会話をしている感があって、瞬の努力は無駄ではないことがよく分かった。
ただ気になったのは、楓菜の目線だ。会話の合間に、チラッチラッと何かを気にしているように見える。
あの方向は⋯⋯涼介。あちらのグループに加わりたいのだろうか。
再び元の席に戻り、今日の写真を見返す。和楽器部の真剣な眼差し、部長・副部長の笑顔、涼介の力説。どれも絵になってるなと思う。
何年もたった後、振り返っては、青春だったなと思うのだろうか。おじさんになった後、そんなこともあったなと仕事帰りの疲れた顔で、この写真を見返す時が来るのだろうか。
そんな思いに浸っていた時、スマホに通知が来た。
あまねからのLINEだった。
「時間が空いた時、返事ちょうだい!」
**次回予告(3-22)**
ロビーに直陽を呼び出したあまねは、直陽にある提案をする。




