3-11
午後の活動が始まった。一度会議室に集まり、簡単な確認をしてから散っていく。基本的に夕飯まで自由。何かあればグループLINEで連絡することになっていた。
手元の研修所の地図のコピーに、どこで何の練習をしてるか手書きで書き込んである。それを見ながら、まずは琴の練習部屋の一つをノックすると、「どうぞ」と声があった。
中に入ると、ショートヘアで少し活発な雰囲気の女子が、こちらを見ている。
「基本的に私たちは練習に専念するので、写真部の方たちは私たちに話しかけないでください。ノックも要りません。空気のように振る舞ってくれれば。そのことを周知しておいてください」
歯に衣着せぬ物言いに、一瞬たじろぐ。ただ、見方を変えれば気を遣うなという意味にも取れる。
「はい、分かりました」
直陽がそう言うと、その部員は再び練習に戻った。
今言われたことをグループLINEに載せる。どうやら皆同じようなことを言われているようだ。
その先輩然とした女子部員の向かい側には後輩の男子がいる。まだ入部したてという雰囲気がある。
昔中学校のころ、学校の授業で琴を習ったことはある。しかしせいぜい「さくら」くらいしか弾けない。目の前の部員が練習しているのはもっと難しい曲だ。
後ろから覗いてみると、楽譜が見える。ああ、昔習ったものと同じだと気付き、少し懐かしい気持ちになった。
先輩と後輩のこうしたやりとりもまた、写真として絵になる。何枚か撮って、次の部屋へ移動した。




