【帰ってきた】までは
「何もありませんが上がってください」
「ここが晶君の家かぁ。由宇のむせび泣いて悔しがる顔が思い浮かぶわ」
「…お邪魔します…」
3人は暴風雨に負けて、最寄りの晶家へ身を寄せた。
晶から「濡れても良いですから」と玄関と接した台所を兼ねる居間の椅子へ2人を座らされた。
朝から嵐対策で雨戸が全て閉めてある為か部屋の中は暗い。
いや、それだけではない。
本来ならば5本分の差し込み口がある蛍光灯へ2本しか刺していないのだ。
その事実に女性陣2人はすぐ気付いたが、互いに頷くだけで、それを指摘する事は無かった。
晶は忙しそうに部屋の中を駆け回っている。
衣替えの時季、夏服の司は白いセーラー服の下に若草色が透けて見えているし。
鶴は鶴で、冬服の黒いセーラー服は下着を透けて見せる事を許さないけど濡れた髪が色っぽい。
目のやり場がない晶はテンパった頭で精一杯頑張っていた。
彼が2人分のバスタオルと着替えを持って奥の部屋から出て来ると、ひと段落ついたようだ。
「今お風呂沸かしていますから。着替えは僕の中学時代の体操服で良ければお貸しします」
「ありがとう。借りるわ」
「…私も…」
「脱衣所が無いので僕は奥の部屋へ移動します。着替え終わったら呼んでください」
「…晶…下着は?…」
「ごめんなさい! 流石に下着までは用意できません」
「…平気…体操服を直接着る…」
「あたしもそうするわ。けどね。せっかくお風呂を用意してくれるのだから入った後ね!」
司は言うが速いか制服を脱ぎ始めてしまう。
慌てて晶は奥の部屋へ行き戸を閉めた。
「晶君。見ても平気よ。陸上競技のユニフォームみたいなものだから」
「ハイそうですか。といえる訳ないじゃないですか!」
「…晶…純情…」
2人へ「僕だって男なんだから気をつけてください」と小声で文句を言うと晶は次の行動へ。
晶が由宇へ電話連絡をすると「俺は学校へ泊まる。晶の家へ行きたい」と返事が返ってきた。
晶は冗談で「森羅万象を操って嵐を止めて来てください」と答える。
由宇からは「統計データを不正して公文書を改竄廃棄しても嵐自体はなくならない」とだけ。
電話代が掛かるので短いやりとりの会話だったが、晶は学校で由宇へ会う楽しみが出来た。
女性陣がお風呂から上がると、晶は洗濯機で全員の制服を洗い、4人分の食事を作り始める。
毎日、母の分まで洗濯をしている晶は平気で女性下着も扱っていた。
晶にとって【中身のない下着】は【ただの布切れ】である。
食事が出来上がった頃に帰宅した晶の母は司と鶴の記憶へ鮮明に刻み込まれた。
「あらあら。今日は娘が3人に増えたわ。あなたが東海林ちゃん。あなたは黒井ちゃんね」
「…正解…晶の母は侮れない…個人情報がかなり流出している模様…」
「お邪魔しています。本日はお世話になります」
「黒井ちゃんは驚くほど聞いていたままだけど、東海林ちゃんは晶の話と大分印象が違うわね」
「母さん。東海林さんは必要ならば猫を被るって言ったよ。それと僕は男です!」
「晶君。それを言ったら猫を被る意味がなくなるでしょ」
「晶から聞いている東海林ちゃんらしくなったわ。それで今日は栗戸君が居ないのかしら?」
「電話をかけたら彼は色々あって宿直の先生と学校へ泊まるそうです」
「あらそう。残念だけど良かったわ。布団は一組しか無いから男の子がいたら困ったもの」
「僕は男です。今夜は僕一人で台所へ寝ますからね!」
「…一緒でかまわない…」
「晶君なら安心だし」
「絶対! 一緒には寝ません! 絶対です! それよりも冷めないうちに食事をとりましょう」
「そうね。晶君の手料理楽しみだわ」
「…興味深い…」
4人の楽しい夜は更けていき、作品的に明日の朝を迎える事は無い……
いつか【帰ってきた】が始まるまで……
半分は活動報告の今作を最後までお読みいただきありがとうございました。




