司鶴出陣
同時刻教室。
司と鶴が教室の入口で由宇と晶の話声を聞いていた。
「はっきり聞こえないけど、由宇の莫迦が晶君をからかっているみたいね」
「…この嵐の中で晶の声がここまで聞こえてくるのは異常事態…」
「待って! ねぇ鶴っち。なんか教師から説教されている声が聞こえてこない?」
「…聞こえる…偵察が陽動になった模様…」
「作戦変更! このまま様子を見て、状況次第であたし達2人が強行偵察へ出るわよ!」
「…賛成…敵戦力が分断されている事を願う…」
男性教師の怒鳴り声がはっきりと聞こえてくる。
近場に居たら、どれほど鼓膜へ響くだろうか?
盆踊りの太鼓のように、鼓膜ばかりか腹にまで響きそうだと思えた。
「おまえら。渡した課題はどうした? もう終えたのか?」
「トイレだと? わざわざ別の階までか。嘘ならバレない嘘を吐け!」
「確かに教師の言う言葉ではないな。ならば言わせるような事をするな!」
「今日は嵐で教師も2人しか居ないのだ。迷惑をかけるな。仕事が進まん!」
由宇の声は聞こえてこないが立法府の長なみに意味の無い言い訳と謝罪を続けているのだろう。
糠に釘を打つ男へ、男性教師は同じ説教を延々と繰り返す羽目になり、怒りゲージは上昇一方。
「鶴っちは世界が閉じる事はどう思っているの?」
「…なにも…まんねん童子はキャラクターのバリエーションが少ないから使い回される…」
「確かにね……前回のあたし達は異世界の入口を探す小学生だったわね」
「…そう…賞に合わせて短編を書いているけど〆切に間に合わない…」
「確かに最近は書きかけ放置の作品が多いわ」
「…毎回次回がある…だから優先は本命本編と月1連載…気分転換に投稿短編作成…」
「まんねん童子も処女作で長編懲りたから……これからの作品は十万文字目安で書く予定よ」
「…それが良い…メモをとっても抜け落ちてたりする…その時は探す時間がかかり過ぎる…」
「タイムテーブルとか伏線とか物価表とか風景描写とかメモを見るだけでも膨大になったわ」
「…今や書くより探す時間の方が多いくらい…それでも矛盾を生む…それが万年クオリティ…」
「矛盾に気付く読者様がいてくれたら、それはそれで嬉しいかもね」
「…まんねん童子は自分で気付いた時でも誤字脱字すら直さない…まずはズボラを直すべき…」
「あっ。チャイムね。有益な情報も得たし、そろそろ行動開始しようか」
今日という日はチャイムと言う名のゴングが鳴ってもラウンドは終了しない。
コロナの国難ですら国会を閉じるというのに、男性陣2人へ教師の説教は終わる気配なく続く。
そして「今日いる教師は2人」と言う重要な情報を得て【行動しない】の選択肢は無くなった。
司と鶴は互いにうなずくと無言で職員室へむかう。




