サバゲ―編1 当然の終戦
全員部活に参加が義務付けられた学校の部活動に馴染めない4人が繰り広げる部活動。
【里】の探索任務を終えた由宇が帰還した。
嵐の学校に束の間の平和が訪れていた。
「鶴のスナイプが反則的に強すぎる」
「そうね。実はあたしもまだ一発も撃っていないのよね」
「だろう? そこで提案なのだが、廊下から教室へ入っても良い事にしないか?」
「…構わない…」
「僕は良く分らないのでお任せします」
「じゃあ次は教室ありでね」
司・鶴陣営
「鶴は廊下で今まで通りスナイプして。あたしは突撃するわ」
「…分かった…他には?…」
「それだけで十分よ。撃てる時には遠慮なく撃って」
「…そう…」
由宇・晶陣営
「俺は窓の外から奴らの陣営の教室まで行ってくる」
「栗戸さん! 教室の外にベランダが無い事知っていますよね?」
「窓枠があるじゃないか」
「教室と教室の間には窓はありません!」
「雨樋があるじゃないか」
「落ちたら大怪我ですよ?」
「その位しないと奇襲にならない。晶はこの教室を死守してくれ。絶対に司が突撃してくる」
「落ちないで下さいね」
「最低でも鶴だけはヤってくるからな!」
サムズアップをして嵐の中へと身を乗り出す由宇。
開始時間まではまだ時間がある。
由宇の作戦はフライング気味に開始された。
司・鶴陣営
「時間ね。突撃するわ。鶴っち。後はよろしく」
「…任せて…」
司が廊下を駆け抜け、晶が潜む教室の隣まで、一気に移動した。
鶴は由宇か晶が廊下に顔を出す瞬間を狙い集中して待機している。
彼女の装着する胸当てから突然『ユーアーデッド』と電子音声が流れた。
『…一体どこから?…』
辺りを見回す鶴の瞳に、窓の外で『ドヤ顔』を決める、由宇の姿が映った。
由宇・晶陣営
鶴の胸当てから廊下中に『ユーアーデッド』の電子音声が流れる。
晶は射程の優位を獲得した。
司が廊下へ顔を出す度に引き金を引く。
その度に凄い勢いで弾が消費されるが司を足止め出来ている。
晶は『栗戸さん。早く戻ってきて』と心の中で思っていた。
残弾の表示は20を切っている。
あと2回、多くても3回、引き金を引いたら弾が無くなる。
司が再び廊下へ顔を出した。
晶はあわてて引き金を引くと、司はそれに合わせたように姿を消す。
晶から完璧に姿を消したはずの司の胸当てから『ユーアーデッド』と電子音声が流れた。
その時司は見た。
窓の外で『ドヤ顔』を決める由宇の姿を。
休戦中
全員が再び教室に集まった。
冷めたコーヒーで戦勝の乾杯をする由宇と晶。
悔しがる司と無表情の鶴。
そんな4人の前に5人目の男が現れた。
「お前達。嵐の中を休校なのに登校なんて勉強が好きだったのだな」
「登校した時はまだ休校の知らせが無かったので。折角学校へ来たのだから、鶴……黒井さんに勉強を教えてもらおうと思って」
「そうか。その言葉が本当ならば先生も担任として嬉しいぞ」
「それ以外に何かありますか?」
「ヂリヲンか……懐かしいな」
4人は胸当てを付けたままだった。
少し遠い目をした担任が語り始める。
「この嵐の中な。無給で見回りをしてくれているありがたい大人達がいる」
「先生の事?」
「先生は仕事だ! そのありがたい大人の方から『嵐の中で校舎の壁を移動している生徒がいる』と連絡が入り、慌てて校舎を見回りに来たわけだ」
「ご苦労様です先生」
「目上の人に対しては『お疲れ様です』が正しい日本語だ。これはどうでも良い事だがな」
「…お疲れ様です…」
「ありがとう黒井。お前達に聞くが『嵐の中で校舎の壁を移動している生徒』の事を知らないか?」
「由宇ね」
「…由宇…」
「栗戸さんです」
担任が由宇の肩をポンと叩いて言葉を繋げた。
「この嵐の中で3階の窓をつたって移動するお前の勇気と身体能力には脱帽したよ」
「そんなに褒められると照れるよ先生」
「褒めとらんわ莫迦! この嵐の中家に帰す訳にもいかん。お前ら4人共課題を出すから嵐が過ぎるまで大人しくやっていろ! それまで【ヂリヲン】は没収だ! こんな貴重な物を濡らして壊したらどうする気だ!?」
こうしてサバゲ―大会は突然終わりを告げた。
担任が【ヂリヲン】で遊んだかどうかは彼のみが知る事である。




