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いいなずけ無双~中身が小学生男子な学園一の美少女と始める同居生活が色々とおかしい~  作者: ひだまりのねこ


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第九十七話 サンクチュアリ


「おい命、親父から話を聞いたときは正直耳を疑ったけど、マジで全員許嫁なんだよな? まあ俺には菫さんがいるし、美少女を眺めながら星川さんの作った弁当を食べられるんだからなんの不満も無いけどさ」


 薄々そうじゃないかと思っていたけれど、正樹おじさんもやはり一族の人で、父さんの親友でもあり、代々天津家の世話役をしてきた家系なんだとか。直樹もようやくそのことをきちんと聞かされたらしく、おかげで俺も隠す必要が無くなったし、正直かなり助かる。



「ねえ天津、葵から聞いたわよ? サンクチュアリ……したんでしょ? べ、別に催促しているわけじゃないんだからね! ただちょっと差別は良くないなあって心配しているだけなんだからね」


 食事を始めた途端、茉莉が変なことを言い出すのでコーヒー噴きだしそうになった。葵のやつ余計なことを……いや、むしろグッジョブなのか? 


 たしかに茉莉は違うクラスだし、学校での接点も少ない。それは菖蒲もそうだし、霧野先輩やゆり姉は学年も違うから、先に卒業してしまうんだよな……。


 流されるままについイチャイチャしてしまったけれど、これからはそういうこともちゃんと考えて行動しないと不満や不和の温床になってしまうかもしれない。


 っていうか、いつの間にかサンクチュアリするって普通に使われているのが恥ずかしすぎる。



「わかった。じゃあサンクチュアリするか。菖蒲も一緒で良いんだよな?」


「ふえっ!? 一体何の話……」


 ――――サンクチュアリ!



「ち、ちょっと天津、うわっ!? 本当に時が止まっているのね……」


 周りを見回して驚いている茉莉。


「え、えええ!? な、なんですか一体? え? キスするんですか? こ、心の準備が……あ、待ってください、お弁当がまだ口の中に……」


 止まった時の中で、茉莉、菖蒲とキスをする。サンクチュアリ解除、時が再び動き出す。



「ん? どうしたの茉莉、菖蒲? なんだか顔が赤い……なるほど、そういうことか」


 どうやら二人の心を読み取ったらしいゆり姉が、わかっているわよね? と無言のプレッシャーをかけてくる。もちろんだよ、ゆり姉。ちゃんとわかってる。


「ああっ!! ズルいです、私も、私もサンクチュアリしたいです!!」


 そうか……霧野先輩はテレパシーで読み取ったのか。だったら口に出さないで念話で伝えて欲しかった……。


「命、さっきからなんだ? サンクチュアリって?」


「さ、さあ? なんだろうな、新しいメイクとかじゃないのか?」



 直樹に怪しまれる前に終わらせてしまわないと。


 ――――サンクチュアリ!


「ふふ、学校でイチャイチャできるなんて思ってもいなかったから嬉しいわ。また美術部でお願いしちゃうかも……」


「んふふ、天津命くん、先輩をもっと可愛がってくれてもいいんですからね? 私とサンクチュアリしたくなったらいつでも生徒会に来てください。なんなら私を見かけたらいつでもサンクチュアリOKです」


 生徒会か……あの会長さえいなければな。それにしてもいつでもサンクチュアリか……夢のような話だが、俺がじじいになってしまうからな。あまり多用は出来ないのが辛いところだ。




「そういや知っているか命、姫奈先輩大怪我してサッカー出来ないかもしれないんだってさ」


「マジかよ……そんな……」


 白石姫奈先輩。サッカー女子日本代表、最年少でエースナンバーをつけるサッカー界のニューヒロインだ。実力だけではなく、そのアイドル顔負けのルックスとストイックな性格でコアなサッカーファンからサッカーのルールさえ知らないようなライト層まで、幅広く人気がある。


 ちょっとだけ撫子さんに似ているんだよな。性格とか話し方とか。海外移籍の噂もあったのに、まさかそんなことになっていたなんて……ショックで食欲がなくなってしまった。


 実は俺、隠れサッカーファンだからな。当然姫奈先輩の試合やニュースはすべてチェックしている。勘違いしないで欲しいが、純粋にサッカー選手として注目しているだけ。もちろん同じ学校の先輩というのもあるけれど。



「みこちん、丁度よかった。後で話そうと思っていたんだが、放課後私の部室に来てくれないか?」


 撫子さんの部室ってたしか助っ人部? だよな。ま、まさか……部室でサンクチュアリ? いやいやそんなことをする撫子さんじゃあない。


「部室ってここの地下だったよな? 別に良いけど何の用?」


「そうか良かった。大したことじゃあない。姫奈先輩の面接をしてもらおうと思ってな」


「……姫奈先輩の面接? 俺が?」


 ちょっと待て。なんか嫌な予感がする。


「ああ、許嫁採用面接だ」


 な、なんだってええええええ!? あ、あの姫奈先輩が? え……いや面接いらなくない? 合格、合格、っていうかこちらからお願いしたいくらいなんだけど?


「ふふ、勘違いするなみこちん。試されるのは姫奈先輩じゃあない。みこちんだ」


 え? 俺が試されるの? それはそうか。舞い上がってしまって恥ずかしい。



「命……」


「ん? なんだ直樹」


「そろそろ一回爆発しておこうか?」


 あ……いつもの直樹に戻った。


「そうはいうけどな直樹、結構大変なんだぞ実際は」


「じゃあ代わってやろうか?」


「いや、断る」


「やっぱり爆発しろ!!」



 うーん、姫奈先輩のことが気になって、せっかくの葵の料理をゆっくり堪能できなかった。


「残ったお弁当はテイクアウトできますから大丈夫ですよ命さま」 


 さすが万能メイド葵。抜かりはないか。


「ただし、テイクアウト手数料として、3サンクチュアリいただきますね」


 ついにサンクチュアリが通貨単位になったあああ!?


 葵に3サンクチュアリ支払ってお昼は解散だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] まさか最終回ジジイENDじゃないよな(;'∀')
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