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いいなずけ無双~中身が小学生男子な学園一の美少女と始める同居生活が色々とおかしい~  作者: ひだまりのねこ


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第六十六話 泡スポンジ

 

 繰り返しになるが我が家の風呂場は広い。


 たとえ許嫁八人と一緒に入ったとしても十分余裕があるほどに。


 だが油断は出来ない。うっかり視界に入れてしまわないように、身体を洗う際には細心の注意と集中力が必要になる。



「みこちん、背中を流すぞ」


 真っ先にやってくるのは撫子さん。いつもならばこの段階でテンパッてしまうところだが、この状況の中では、むしろ慣れ親しんだ我が家のような、圧倒的なアウェーで味方を見つけたような安心感すら感じる。


 問題があるとすれば、スポンジと間違えて風呂掃除用のタワシを使ってくることぐらいだが、今の俺はナイフですら刃が通らない鋼鉄のボディを手に入れている。たかがタワシ程度怖くもなんともない。



 ガリガリガリッ……


「痛ってえええ!?」


「あ……すまんみこちん、うっかり風呂掃除用のタワシを使ってしまった」


 おかしい……なぜ痛いんだ? いや毎回素で間違える撫子さんがおかしいんだが、それはもう諦めているから良いんだ。


「あはは、命くん、それはね、君が感触を味わいたいと思っているからだよ」


 桜花さんがお腹を抱えて笑っている。お願いですからもう少し隠してください。


 でもそうか……タワシを無効化すると撫子さんの感触が味わえなくなるということか……。


 くそ、なんて残酷な力なんだ。



「ほら、もう痛くないだろう?」


「ありがとう撫子さん」


 結局、またぺろぺろしてもらってしまった。いかん……なんかクセになりそう。


 でもおかしいな? タワシは撫子さんたちが間違えないように捨てたはずなんだけど……?


「ああ、風呂掃除しようと思ったらいつものタワシが無かったから、台所から持ってきたんだ」


 ……撫子さん、それ金タワシ!! 道理でいつもより痛いと思ったよ。




「命くん、そんなことよりも、みんな待っているんだからね?」


 ん? 待ってるって何を?


 振り返ると、バスタオル一枚で恥ずかしそうに並んでいる許嫁のみなさま。



「せ、背中を流すのは許嫁の務めだからね!!」


「か、勘違いしないでよね、住まわせてもらう御礼なんだから」


「は、恥ずかしながら、頑張ります……」


「あら、命くんって思ったより良い身体してるじゃない」


「教え子の背中を流す女教師……いやーん、なんだか背徳感」


「……首を綺麗に洗ってやる」  


 理子ちゃん……ひとりだけなんか怖いんですけど!? 背中、背中を洗って!!



 てっきり順番交代制だと思っていたら、まさかの全員同時!!


 くっ、俺だって成長しているんだ。ここはレベルカンストの般若心経で乗り切る!!


 レベルマックス般若心経発動!!



「ははは、なんだそのへっぴり腰は? 許嫁たるもの身体で語り合わなくてどうする。見本を見せてやろう」


「ふえっ!?」


 撫子さんが身体に泡を大量に付けて背中に抱きついてくる。自らの身体をスポンジ代わりにするという荒技。あっという間に般若心経が無効化されてしまう。


 一体どこでこんなこと覚えてきたんだ!? たぶん……いや間違いなく桜花さんだろうけど。


 間違いなく昇天級だ。以前の俺にこの話をしたら、妄想乙で終わる……いや間違いなくドン引きされるレベルの非現実的な状況。


 だけど撫子さん、この状況でこの流れは……ヤバい!!



「ふふ、撫子、まだまだだね」

「へえ……面白そうじゃない」


 ノリノリで桜花さんと楓さんが参戦してくると、他の面々も黙ってはいられなくなる。   


 

「そ、そんなこと私はずっと前にやっているから平気よ!!」


 ゆ、ゆり姉、無理する必要ないからね!?


「い、いきなりこんなことさせるなんて、この変態!!」


 待て茉莉、させているのは俺じゃない。


「命さん……こ、こういうのが好きなんですね……」


 菖蒲、それは誤解……いやまあ嫌いじゃないけど。


「じっとしていろ、天国をみせてやる」  


 理子ちゃんの場合、ガチの天国の可能性があるから怖い。



 全身360度泡スポンジに埋め尽くされている状況。


 だ、駄目だ……刺激が強すぎてくらくらしてきた。



「天津くん、お待たせ~。泡が足りなくて手間取っちゃったの~」


 み、雅先生!? む、無理です、今そんなものを押し付けられたら……


 そこから先のことはよく憶えていない。



『命くんっ!? 大丈夫……命くん……』


 桜花さんたちが遠くで何か言っているのが聞こえる……。


 

◇◇◇



『やっほー、命くん。また会えたわね』


 ……この神々しい声と軽いノリのギャップ……


「……女神さま?」


 目を開けるといつの間にか和洋折衷の小奇麗な部屋で向かい合わせに座っているという謎シチュエーション。


 直視すると魂ごと持って行かれそうになるので、視線を下げるが、そこにははちきれんばかりの立派なものが鎮座していて、もうどこを見ればいいのかわからない。


『ふふっ、好きなところを好きなだけ見ていいのよ~』


 魅力的過ぎるというのは、凶器になるんですね。


「あ、あの、色々女神さまに聞きたいことが……」


 そうだ、動揺している場合じゃない。


『わかっているわよ。今夜どうやって寝るかよね?』


 いや違いますけど……でもそうか、言われてみれば一番差し迫った問題ではあるのかもしれない。


『そこで許嫁ボーナスあげちゃいます!!』


 ボーナスって……そんな昔からあるの!?


『焼いたナスを棒に刺して神に捧げたのが起源だといわれているわ』


 そ、そうだったんだ。


『冗談よ』


 ……反応に困る。


『まあ冗談はさておき、命くんには加護を授けたから安心してね。あと命くんの力が増したおかげで、少しだけ出来ることが増えたの。あ……時間切れ!? 楽しみにしていてね~……』


 光が満ちて女神さまと部屋の輪郭が消えてゆく。


 ……時間が無いなら冗談言っている場合じゃなかったのでは?


 結局何も聞けなかった……。


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― 新着の感想 ―
[一言] >焼いたナスを棒に刺して神に捧げたのが起源だといわれているわ ついでに言えば漏斗代わりに、中身がスカスカの棒に酢を流し込んだ事も起源とされている(棒な酢(大嘘 結局みこちん、どんな能力手に…
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