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いいなずけ無双~中身が小学生男子な学園一の美少女と始める同居生活が色々とおかしい~  作者: ひだまりのねこ


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第四十六話 稀人の力


「あの……ちっとも話が見えないんだけど?」


 傷が治ったことと、俺の稀人としての力との関連がわからない。少なくとも俺は何もしていないんだよな。



「なんだ、みこちんは聞いていないのか? 稀人の力とは、深い関係になった異性の神力を引き出し高めることだって。だからこそ、稀人となった当主は一人でも多くの異性と関係を持つことが使命なのだと聞いたぞ」


 なんだってええええ!? それ初耳なんですけどっ!?


「ふ、深い関係……きゅう……」


 あらぬ妄想をして目を回している葵。早まるな、そんなことはしていない。



「ふふふ、青いな葵。お前も早くみこちんと深い関係になるのだ」


「あわわわ……が、頑張ります!!」



 ……なにやらどや顔をしているのが可愛いが、上手いこと言ったと思っているならそうでもないと思うんだ。それより深い関係って……?



「ところで奥さま、どうすれば深い関係に?」


「一緒にご飯を食べて、一緒に風呂に入り、一緒に寝る、簡単なことだろう?」


「はうう……私に出来るでしょうか?」


 うっ……葵が救いを求めるようにこちらを見ている。


 答えに困るんだが。


「だ、大丈夫、すぐに慣れるさ」


 ま、まあ、何とかなるだろう……いやまて、食事やお風呂はともかく、いや、お風呂もあれだけど、もしかして葵も一緒に寝るつもりなのか? 俺を寝かさないつもりなのか?



◇◇◇



「ではお先に失礼します天津さま」


「じゃあな、みこちん、気を付けろよ」


 葵が早めに屋敷の様子を確認したいというので、撫子さんと先に帰ることになったらしい。


 そういや葵は家政婦……いや、メイドとして来たんだよな。


 弁当もめちゃくちゃ美味しかったし、今夜の晩御飯も腕によりをかけて作ると張り切っているから楽しみだ。



「天津さまは何かお好きなメニューはございますか? 私は和洋中、ほとんどのメニューを作れますので」


 なんだってっ!? ハイスペック過ぎるだろう……しかも超絶美少女とか。この子を嫁に出来る奴が羨ましい……って、俺か!! 


「そうだな……一番好きなのは、ナスの肉詰めかな」


 葵が知っているかはわからないけど、とりあえず一番好きな食べ物をリクエストする。


「ナスの肉詰め? 何だそれは? 美味いのか?」


 瞳を輝かせる撫子さん。美味いに決まっている。


「美味いよ。にんにく醤油としょうが醤油で食べると最高なんだ」


「ナスの肉詰め……ですね!! 大丈夫です。揚げるタイプですか?」


「ああ、油で揚げるタイプだ」


「奥さま、帰りに食材を買っていきたいのですが?」


「うむ、だったら斉藤商店だな」


 ……たしかに生鮮も豊富に取りそろえてあるからな。一体何屋なんだあの店は?


「あら……正樹おじさまのお店ですね。荷物も預かってもらってますから、丁度良いです」


 そういえば葵と正樹おじさんってどういう関係なんだろう?

 

 全然似ていないけど親戚だったりして。




「二人とも大丈夫だとは思うけど気を付けて」


 まあ何かあるとすれば狙いは俺だろうけど、万が一ということもある。それでもこの二人なら心配いらない気もするけど……。それに、今日は正樹おじさんが荷物ごと軽トラで運んでくれるって言ってたから安心できる。


 



「……思ったより遅くなってしまったな」


 集中して絵を描いていたら、あたりはいつの間にかすっかり日も暮れて、気付けば俺以外の部員はすでに帰っていた。


 戸締りと消灯を確認してから、薄暗い校内を独り歩いてゆかねばならない。



 ぎしぎし……


 美術室がある旧校舎は、今では文化財にも指定されている木造建築だ。雰囲気は素晴らしいんだけど、夜は一転して不気味なんだよな……。


 学校の七不思議じゃないけど、歴史があるだけに噂話には事欠かない。


 お化けや幽霊なんて信じていなかったけど、桜花さんの話だと結構普通に存在しているとか。


 参ったな……そんな話を聞くんじゃなかった。


 まあ、実際に悪影響とか悪さをしてくることは稀らしいけど。


 ……でも、稀にはあるってことだよな?



 怖いことを考えながら歩いていると、全てがそれっぽく見えてくる。


 悪いことに、美術室は旧校舎の一番奥。


 ミステリースポットならぬ、旧音楽室や化学実験室の前も通らなくてはならない。


 

 キャアアアアア……


 風の悪戯か遠くで悲鳴のようなものが聞こえる気がする。


 バタバタバタ……


 誰も居ないはずの廊下を走り回るような異様な物音……気のせい、気のせい。


 ガシャーン……


 どこかでガラスが割れたような音が聞こえたような気がする……いや、聞こえた。


 あかん……なんか……居る。


 あまりの怖さにエセ関西弁を発動。少しだけ雰囲気が和らいだ気がしないでもない。


 トイレに寄って行くつもりだったけど、もはやそんな勇気は残っていない。



 俺……生きてここから出られたら、学食棟の最新式トイレに行くんだ……。


 

 大丈夫だ……俺はこう見えて伝説の稀人だぜ? 幽霊だろうがお化けだろうが蹴散らして……


 あかん……稀人の力は異性の力をアップさせるだけだった……俺自身が強くなるわけじゃないんだよおおおおおお。


 せめて女幽霊ならワンチャン……って駄目じゃん、幽霊強化してどないするっちゅーねん!!



 ゴゴゴゴゴ……


 やばい……廊下の曲がり角の向こうから強烈なプレッシャーを感じる。


 まさか……これが邪気もしくは妖気……なのか?


 だがここを通らなければ帰れない。


 行くも地獄、戻っても地獄なら行くしかないじゃないか。


 鬼が出るか蛇が出るか。待ってろよナスの肉詰め!!

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― 新着の感想 ―
[一言] >一体何屋なんだあの店は? よろず屋でいいんじゃない?(;'∀') でもって……学校の怪異が騒いでる!? さすがは稀人が存在するような不思議な土地(;'∀')
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