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いいなずけ無双~中身が小学生男子な学園一の美少女と始める同居生活が色々とおかしい~  作者: ひだまりのねこ


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第百八話 曲者でござる


「……これは一体どういう状況なんだ?」


 液体化した姫奈先輩と零先輩を連れて家に到着すると、信じられない光景が展開されていた。



「あ、主殿、お帰りなさいませ。こやつら全員周囲を嗅ぎまわっていた曲者にございます」


 杏が言っている曲者とは、ここに首だけを出して埋められている人たちのことだよね?


 え……なんか外国人も結構混じっているみたいだけど、国際問題大丈夫?


「安心しろ天津命。全員記憶を読んで確認してる。誰一人として口を割らないし、心を読まれないように暗示がかかっているが、天津家にとってはそんなもの何の意味もない」


 理子ちゃんがそういうなら大丈夫なんだろう。たしかにそんな暗示がかかっている時点で一般人なわけないしな。


「そ、そうか……留守中大変だったみたいだな。それよりもこれ……埋めるの大変だったんじゃないのか?」


 20人いるし、一人分の穴を掘るだけでも結構な重労働だ。どうせひだにゃんは寝ているだけだろうし、まあすたちが穴掘りを手伝うとは思えない。


 っていうか、そもそも埋める意味あるの? 知らずに夜見たら悲鳴を上げる自信があるんだが。



「ああ、暇だったので落とし穴を掘っていたのですが、使い道が出来て良かったです」


 杏……危ないから勝手に落とし穴掘らないで欲しいんだけど……



「ふーん、天津家ともなるとやはり敵も多いようですわね。ですが、優秀な人材がいるようで安心しましたわ」 

 

 さすがお嬢様。零先輩にとっては別段驚きには値しないんだな。違う世界を生きてきたんだとあらためて感じる。


「くっ……なんだか頭が並んでいると無性に蹴りたくなってくるんだが……」


 姫奈先輩……駄目ですよ、貴女が本気で蹴ったらホラーになってしまいますからね。気持ちはわからなくはないですけどね。



「ただいま~。あら? 侵入者ですか? 私で良ければ骨も残らず腐らせることができますので、遠慮なく言ってくださいね」


 仕事から帰ってきた菫さんが、手袋を外して落ちている木の枝に触れると、みるみるうちに枝は腐ってボロボロになってしまう。


 もちろん援護射撃の脅し文句なのだろうが、怖すぎる。


 そのまま家の中へ消えた菫さんを見送りながら、直樹の無事を祈らざるを得ない。心なしか埋まっている皆様の顔が青ざめているように見えるのは決して気のせいではないだろう。


 まあ菫さんに頼むのは論外として、ずっとこのままというわけにもいかないのは確かだし、どうしたものか……。



「ところで理子ちゃん、この連中は何者なんだ?」


「黒津家関連が数名、あとは各国のスパイ連中」


 黒津家は想定内だとしても、各国のスパイ!? え……俺の家にそんな国家機密なんて無いんだが……?


「主殿は自覚されていないようですが、天津家というのは存在自体が国家機密以上の重要事項なのですよ」


 ……そうなのか。ということは、ゆり姉や楓さんたちは、ずっとこんな連中から俺を守ってくれていたんだな。


 こうして実際に見せられると感謝の気持ちがあふれ出してくる。


「命、こやつらの扱いは死神に任せれば良いと思いますわ」


 それもそうだな。俺が考えても仕方がないことだし、楓さんが帰ってきたら相談してみよう。雅先生でもいいかもしれない。


 

「主殿? どうかされましたか?」


「いや、ずっと気になってたんだけど、なんで全員美女なのかな……って」


 殺し屋も黒衣衆もそうだったけど、今回も全員女性。偶然……なわけないよな。


「なんだそんなことでしたか。くノ一に女スパイ、ロマンの塊だからですよ」


 杏の言う通り、たしかにロマンの塊だが……まさかそんな理由で!?


「冗談でござる」


 ……杏さん?


「天津家に疑われずに近づくには許嫁狙いが一番だから。常識だ」


 理子ちゃんがため息交じりで教えてくれる。ああ、そういえば、理子ちゃんも最初はそうやってたっけ。


「主殿、いっそのこと全員許嫁にしてしまったらいかがでしょう? あの魔性のキスを食らわせれば全員イチコロです」 


 待て待て、いくらなんでもそれは……っていうか魔性のキスってなんだよ。


 そうは言いつつも、心当たりはある。杏もキスしたら洗脳が解けたみたいだし、先輩たちも液体化したしな……まあそれは猫だからかもしれないけれど。


「悪くはないアイデアだと思いますわ。複数言語を使いこなす鍛え上げられた優秀な人材ばかりですし。各国の情報機関に許嫁スパイを持っておくのも重要な戦略の一つですから」


 許嫁スパイ……もう許嫁付けば何でもありですね……零先輩。


 うーん、でもなあ……許嫁増やすのは使命のためでもあるし構わないんだけど、何でもかんでも一気に増やすのは……




「そういう時はね天津くん、良い方法があるのよ~!!」

「あら、これはまた大漁じゃないの命くん」


 グッドタイミング。雅先生と楓さんが帰ってきた。


「あ、雅先生、楓さん、お帰りなさい。良い方法ってなんですか?」

 

「それはね~。許嫁(仮)制度よ」


 なんだろう……字面からすでに嫌な予感しかしないんですけど?


「あはは、言い方は悪いけど、要するにとりあえずツバを付けておきますねっていう制度よ。本来は許嫁になりたいけれどなれなかった女性たちが、喧嘩にならないように空席が出ることを期待して優先的に予約を入れておくシステムなんだけどね。命くんの側からももちろん利用できるのよ」 


 なんだか凄まじいシステムですね……楓さん。なるほど、根本的な解決策ではなくてもとりあえず時間的な猶予は出来ると。


「補足しておくと、許嫁(仮)は本人の意志でいつでも解約出来るから、天津くんはそんなに重く考える必要はないのよ~。出来れば杏以外の黒衣衆も全員お願いしたいんだけど~」


 雅先生、ちょっと待って、黒衣衆19名とスパイ20名もいるんですが、全員許嫁(仮)にしろと……?

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― 新着の感想 ―
[一言] これまた凄まじい事になってきましたね(;'∀') 作中世界は天津家を中心として回っている事を考えると……作中世界における古史古伝の類に記された天地開闢からの……日本が世界の中心だったとかいう…
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