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世捨て人龍の配信生活~迷宮の底で人型龍になったけれど生活を充実させたいので配信者します~  作者: 嘉神かろ
第6章 人と悪魔の物語

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第168話 ファウロスの実力を見てみましょうの会!

168

 予想通りというべきか、悲しいことにというべきか、二階層にも深い森が広がっていた。人の生活圏が近くにある設定なのか、道らしきものがあるのは救いだ。ちょーっと方向音痴の私的にも、歩きなれてなさそうなファウロス的にも。


「ん、狼三体。このまま真っすぐ行けば出会えるね」

「わ、分かりました」


 ちゃんと心の準備をしてくれているみたいね。相変らず緊張しっぱなしではあるけど、胡乱気な視線はなくなったから良し。


 お、狼の方もこっちに気が付いたね。雰囲気、強さは一階層とほぼ変わらない感じ。良きかな良きかな。


「来るよ」


 一体残すのは問題ないにしても、私ばかり警戒されるのは都合が悪い。今回は二体をこっそり片付けよう。

 気配と匂いは魔法で消して、樹上へ跳ぶ。ファウロスには一言先に行くと伝えはしたけど、取り乱してないかな? 配信画面を見る余裕もないだろうし。

 まあなんとかなるか。進んではいるみたいだし。


 あ、いた。茂みの中に臥せってるのは、待ち伏せのつもりかな?

 少し離れた位置に陣取ってるし、ちょっと小細工するだけで気付かせずに一体だけ残せそうだね。

 というわけでサクッと二体の首を落として、血の匂いだけを魂力に情報として完全に取り込ませる。本当に便利。


 ファウロスの方は……もうすぐだね。魂力の支配域には入ってるし、意思だけ伝えることもできそうだ。けど言語化はしておかないと色々齟齬がおきそうだね。音として届けようか。観戦は、木の上からで。


「やぁ」


 挨拶大事。

 うん、そんな驚いてキョロキョロしてたら危ないよ?


「近くにはいないよ。声だけ届けてる。あと二十メートルも歩いたら右側の茂みから狼が跳び出してくるから、準備して。あ、そんな凝視したら警戒されるよ?」


 本当に戦闘は門外漢なんだね。


「あと十メートル。正面のアカンサスの花、分かる? その辺りにいるから」


 あー、うん、一応凝視はしないようにしてるみたいだけど、分かりやすくチラチラしてるね。その辺の人間なら騙せる程度ではある。でも、相手は狼の魔物なんだよね。ばっちり警戒されてるや。


「少し通り過ぎた辺りで飛び出してくると思う。そのまま五歩進んだら右に思いっきり跳びな」


 正面から来てくれるので試したら良かったかな。まあいいか。一応すぐ横やり入れられるだけの準備はしておこう。


 ん、来る。


「くっ……!」


 がさって音と同時に成人男性と同じくらいの背がある灰色の影が飛び出した。タイミングは予想通り。ファウロスは、ちゃんと避けたね。短剣を抜いて構えてる。

 思ったよりは堂に入っているか。若干腰が引けてるけど、想定よりずっと良い。


 呼吸は、少し浅くて荒い。瞳孔も開き気味。汗にも酸っぱい匂いが混ざってる。緊張してる証拠だ。でも、狼の動きはよく見てる。

 狼の方も短剣を警戒してるから、にらみ合いがもう少し続きそうだね。


 しかしあの鈍色の短剣、ファウロスが元々持っていたにしては随分切れ味が良さそうだ。私の鱗だって人間の男が思いっきり力を籠めたら貫けそうだよ。最初会った時に持ってたっていうナイフはその辺で買えそうなものだったんだけども。

 まあでもたぶん、そういうことなんだろうなぁ……。


 あ、動くね。


「うぉぉおおおっ!」


 先に走り出したのはファウロスだ。身体の外側に向け、短剣を振り抜く。やや大振り。まあ躱されるよね。反撃は、爪の一撃。


『お、上手くいなしたな』

『ファウロスさん思ったよりやるな』

『親近感。がんばれー!』


 コメント欄で応援されてたのは後で教えてあげようか。

 それにしても、ハラハラしてる人の方が多そうだね。割り切って見てる人は普段から迷宮配信とか見てる人なんだろう。けど案外少ない。

 あれかな、私に死ぬイメージが無いから来てるってだけの人が多い。あり得そうだ。


 あら、避け損ねたか。皮の胸当てに爪痕がくっきり。なんならお腹の方までいっちゃってる。血は、出て無さそう。鎖帷子に助けられたね。


『あっぶな。ハロさんなんでそんな落ち着いて見てられるんだ?』

『だいたいどんな結果になるか見えてるんだろ、たぶん』


 正解。あれくらいなら当然予測ができる範囲内だ。

 お?


『よしっ、片目とった!』

『これはデカい!』


 鮮血が舞って低木の葉に赤い斑点ができる。ほとんどまぐれ当たりではあったけど、勝敗を分け得る一撃だ。

 このまま畳み掛けたいんだろう。ファウロスはさらに踏み込んで、短剣を振り下ろす。でも上体を捻って躱された。


 ん、良い切り返し。今度は避けられない。狼は、牙で止める気か。

 しかし残念、それは失策だ。私の鱗だって切り裂けるのに、あんな狼の牙で防げるわけない。

 鈍色の短剣がその牙を砕き、口元を引き裂く。そのまま、トドメ、とはいかない。ファウロスもここまで切れるとは思っていなかったんだろう。剣に振り回されて体勢を崩した。

 幸い低木に引っかかって止まったけれど、そうしてできた隙は、情けなく鳴いていた狼が反撃に転じるに十分。人を覆いつくすほどの影がファウロスへ落ちる。


『やば!』

『ああああああああ』

『ちょまtってうあば!』


 狼はファウロスに覆いかぶさったまま動かない。コメントの流れが一瞬止まる。まさかまさか、といった感じだろうか。

 そろそろ近づいてあげようか。配信画面だと分かりづらいだろうから。


 狼とファウロスのすぐ横に着地すると、灰色の身体が揺らめいて、ゆっくりと倒れる。その首元から少しだけ、毛に埋もれるような形で鈍色の剣先が飛び出していた。


「お疲れさま」

「はぁ、はぁ、ハロ、さん……」


 ようやく配信画面に現れたファウロスは、血に(まみ)れた状態で土の上にへたり込んでいた。両手は短剣を握ったまま。ぷるぷる震えているし、離せないのだろう。


「よく血に染まるね」

「……誰のせいですか」


 手を差し伸べてやり、引き上げて立たせる。膝も笑っちゃってら。本当に限界だったみたいね。


『まじでびびった』

『人タヒには心臓悪いて』

『味方がシぬのには慣れてないんだぞこっちは』


「あはは、ごめんごめん。でも大丈夫だったでしょ?」


 あ、そういう問題じゃないと。まあそうよね。


「とりあえず、ファウロスの実力はよく分かったよ。協力ありがとう」

「……今は素直に受け取っておきます。手伝ってもらってる身ですし」


 うむ、そうしてくれたまえ。その代わり、ちゃんと望みは叶えるからさ。

 なんにせよ、これで方針が立てやすくなった。このままサクサク進もうか。


「あの、そっちは来た方向です」


 このままサクサク進もうか!

 ……何かあるならハッキリ書いてくれていいのよリスナー諸君。



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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 今明かされる衝撃の(?)事実!ハロさん案外方向音痴だったww まぁそこが逆にリスナー一同に刺さるかも? それでは今日はこの辺りで失礼致します。
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