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第百五話 甲州征伐事前準備始まる

という訳で、時系列を飛ばして舞台は美濃です。

 1562年 美濃 岐阜城 



 甲州征伐。

 史実における天正十年――つまりは1582年に織田・徳川同盟と北条が”長篠の戦い”以降勢力が衰えた武田勝頼の領地である信濃・甲斐・上野・駿河に侵攻し、甲斐武田氏を攻め滅ぼした合戦である。


 その時の当主武田勝頼は、一部の臣を寵愛し、武田を滅亡させた将として、父武田信玄とは正反対の評価がなされている。

 信玄亡き後、その跡を継いだ勝頼であったが、武田信玄には、武田義信という息子がいた。

 勝頼の異母兄であり、武田家の後継者だった人物だ。

 義信存命の頃の勝頼は母が信濃諏訪の出だったことから、諏訪庶流である高遠諏訪家を相続し、高遠城城主だったが、その義信が謀反の疑いにより幽閉されたのだ。


 後世で”義信事件”とも呼ばれたそれは、義信の傅役で、先の戦で死んだ山県昌景の実兄である飯富(おぶ)虎昌(とらまさ)、側近の長坂昌国、曽根周防守等が信玄暗殺の密談をしていたのを、直前になって山県昌景による密告により信玄の知るところとなり、三将は首謀者として処刑、その配下八十騎が追放処分とされ、義信自身も奥方と強制的に離縁され、後継者としての地位を失い、甲府の東光寺に幽閉された、という事件である。

 更に、次兄の竜宝は生まれつき盲目であった事から出家しており、三兄の信之は夭逝していた。


 その為、勝頼が後継となったのだが、”長篠の戦い”でその権威は失墜する……と言われていたり、その後の”小館の乱”や”高天神崩れ”の方が直接的な原因であるとも言われていたりする。





 さて、そんな訳で武田攻めである。


「さて……じゃ、始めますかね」


 俺と半兵衛・官兵衛の三人は、織田本隊に先んじて美濃に入り、岐阜城の”軍監衆”に割り当てられた部屋で、織田・武田・徳川・今川・北条・上杉の領地までが書かれた広大な地図を広げ、それを中心に軍議前の協議を行っていた。

 提案するのは俺達”軍監衆”の役目なので、事前に色々と話しておくのだ。


「重要なのは武田の勢力の縮小と権威の失墜だ。領地問題自体は、信濃の一部・甲斐・上野の三国だけで、駿河は今川の所領。それに北条とも敵対関係にある今、武田は針の筵だ。後の問題は――」


「権威。……”日ノ本一の武田軍団”という名声の失墜、ですか」


「ふむ。……先の戦で十分失墜していると思われますが?」


 半兵衛の言う事は正しい。

 だが、それだけじゃ足りない。

 だからと言って、史実の”高天神崩れ”みたいな残虐な事をすれば、非難されて敵が増えるだろうし、天下を取る事を考えれば、余り織田に対する悪評が出回るのも問題だ。


「一先ずは武田を”朝敵”とするのが早い……のか?」


 織田が史実でもやった武田を朝敵とする事。

 確か”多聞院日記”……だったか?

 それには現天皇である正親町天皇に逆らう”東夷”であると喧伝した、と書かれているらしい。


 史実では、”長篠”の敗戦に”高天神崩れ”での救援の遅れ、朝敵とされた事、そして北条等の同盟を破棄した事。

 様々な要因が絡まり、武田は滅ぶ事になった。

 その状況を作らなければならない。


「なれば、殿に進言し、朝廷へは細川殿か近衛殿に使者として向かって頂きましょうか」


「そうですな。……徳川・今川へも協力の要請しなければなりませぬな」


「やれやれ……総力戦になりそうだな。……俺は一度信長に伝えてくる」


 俺は立ち上がり、信長に事を伝える為に部屋を出る。

 俺が信長に書状の件や今川・徳川への要請の件を伝え、その許諾を得て戻ってくると、三人であーでもないこーでもないと言いながら書状に書くべき内容や報告書を作っていく。


 ”軍監”達の戦は、既に始まっていた。




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