デュランダルと共に……3
デュランダルとダーインスレイヴ
2振りの神剣が、最高レベルの騎士に握られて対峙する。
周りのヨトゥン兵達が、息をするのも忘れるぐらいの緊迫感が漂う。
「行くぞ!!我が力となれ!!デュランダル!!」
先に動いたのは、ランカストだ。
自分の身の丈程あるデュランダルの長い攻撃範囲を活かし、ビューレイストの頭を目掛けて振り下ろす!!
ガキィィィィィン!!
とんでもない程大きい金属音が鳴り響き、辺りに木霊する。
攻撃を受けた側……………ビューレイストの持つダーインスレイヴは、デュランダルと同じバスタード・ソードだが、ランカストの持つそれと比べると、短く細い。
それでも、遠心力も味方につけて振り下ろされたデュランダルを、片手で持ったダーインスレイヴで軽々と受け止めた。
「なかなかの一撃だ。流石はベルヘイム12騎士の1人………と言うべきか…………」
受けたデュランダルを振り払うと、ビューレイストは再びダーインスレイヴを構え直す。
神剣ダーインスレイヴ
魔剣とも言われるダーインスレイヴに斬られると、その傷からは血が止まらず、どんな方法でも血を止める事が出来ない。
つまり1カ所でも斬られたら、死が待ってる事になる。
その特性から「相手の生き血を全て吸うまで鞘に戻らない」と噂されるようになったのだ。
その魔剣を持つビューレイストの構えはまるで隙がなく、自らの強さを浮き出させている。
そんな男を目の当たりにして、ランカストは覚悟を決めた。
(この男…………強いな…………勝てたとしても、逃げる余力は無いだろう………だが、ヨトゥンに協力して生き長らえる訳にはいかない。コイツを道連れにしてでも、死を選ぶ)
ランカストは右手でデュランダルを握り直し、ビューレイストを睨む。
「左腕に傷を負っていたな…………フェアとは言えないが、これも戦だ…………だが、他の兵には手出しはさせん。正々堂々と勝負だ」
ビューレイストはそう言うと、他のヨトゥン兵を更に下がらせる。
「余裕だな………だが、利き腕である右腕が使える。油断していると、怪我をするぞ!!」
そう言ったランカストは、一足飛びでビューレイストとの距離を詰めた。
止まってると、忘れていた疲労や痛みが沸き上がってきて、戦う気持ちが萎えていく。
ランカストは自分の気持ちを奮い立たせる為にも、早く戦いたかった。
「いくぞ………」
ビューレイストもまたダーインスレイヴを構え、ランカストに向けて足を踏み出す。
「…………………っ!!」
ビューレイストの打ち込みは、とんでもなく早い。
ランカストは辛うじて、その剣撃を抑えた。
利き腕で持っていると言っても片手で剣を支えている為、ビューレイストの剣撃を受けた後の動作に多少のロスが生まれる。
1回なら大した差では無いが、それが複数回重なると達人同士の2人の間では致命的な差になっていく。
剣撃を受けたランカストは片手でデュランダルを扱っている為、しっかり固定できずに直ぐ反撃に転じる事が出来ない。
ビューレイストの剣速は、デュランダルを立て直している間に2撃目が来る程速い。
ランカストは、徐々に押され始めていた。
いや、実際には反撃出来ないランカストには、勝ち目など無いのかもしれない。
(やはり………ベルヘイム12騎士が扱っても、第2形態では無理か…………これでは、龍の巫女に登場願うしかなさそうだ…………しかし、ロキ様の先読みの力には驚かされるな…………)
考え事をしながらでも、ビューレイストの剣はランカストを圧倒する。
そして……………デュランダルの脇をすり抜けたダーインスレイヴが、ランカストの左の太股を貫いた。
「ぐおおおおおっ!!」
ランカストは叫び、その場に倒れ込んだ…………
(くそっ!!これでは、立ち上がる事すら出来ない…………)
ランカストの額からは大量の汗が出て、苦痛に歪む表情からは、痛みの強さを窺い知る事が出来る。
そしてダーインスレイヴで貫かれた左の太股からは、止血の為に手で必死に押さえても、その隙間から止まる事のない血が流れ続ける。
出血量は、それ程多くない。
しかし止まらない血は、少しずつ地面に流れ落ちていく。
「ランカスト殿…………片腕でよく戦った。ダーインスレイヴで受けた傷からの出血は止まらない。そのまま動かないで下さい。好敵手が苦しむ姿は、あまり見たくない」
そう言うと、ビューレイストはダーインスレイヴを振り上げた。
(くそっ!!こんな場所で死んだら、デュランダルも奪われる!!王から賜ったデュランダルを…………ソフィーアから託された想いを…………オレは繋げなければいけないんだ!!)
ランカストはデュランダルを支えにして、右足1本で立ち上がる。
先程までは絶望を感じて動く事さえままならないランカストであったが、新たな目標を見つけ、その瞳に光が戻る。
そして先程とは逆に、ビューレイストとの距離をとり始めた。
??
ビューレイストは首を捻りながら、ランカストの最後の足掻きに呆れていた。
「ランカスト殿…………この状況で逃げるとは…………情けない。それでも英雄と呼ばれる騎士ですか??」
ビューレイストは少しずつ、ランカストとの距離を詰める。
ランカストは片足で後ろに飛びながら、周りを見回していた。
(何か、硬い物…………何かないか??)
ビューレイストに何を言われても、ランカストは何も感じなかった。
たとえ死んでも、自分の想いを…………自分に託して死んでいった者の願いを…………また次に繋げなければいけない。
その為には、たとえ自分の行動が相手に滑稽な姿を晒しても気にならない…………そんなランカストの瞳に、大理石の岩が映る。
(あれだ!!)
ランカストは必死に大理石に近づき、デュランダルを叩きつけた。
ガギィィィィン!!
石と金属がぶつかり合って、もの凄い音が周りに響き渡る。
???????
怪訝な顔をして、ビューレイストが首を捻る。
しかし、その音でランカストの正確の位置を把握した者がいた。
オルフェだ。
「あの音の元に、ランカストがいる!!急ぐぞ!!」
弱い攻撃しか仕掛けて来ないヨトゥン兵に疑問を感じながらも、オルフェは音の鳴る方へ歩速を早めていった…………




