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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
ロンスヴォの戦い
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包囲網、突破!!

 

「バルデルス、テューネがランカスト隊に付いて行っちゃったニャ………」


 喋る猫のヌイグルミに、何故かバルデルスと呼ばれた男……………一真は、頭を抱えていた。


「嫌な予感がするって言ったのに…………やっぱり、キミの子孫だけの事はあるねー」


「にゃんですって!!猫は、お転婆じゃニャイですー。ネコネコぱーんち!!」


 ヌイグルミの柔らかい前足で、一真の頭をパコパコ殴りはじめる綺麗な蒼色の猫…………の、ヌイグルミ。


「ちょっと…………アクア、お転婆なんて言ってないし………やめてよ。ふざけてる場合じゃないだろ!!」


 頬を膨らませる猫のヌイグルミ…………アクアは、納得いかない表情だが、とりあえず動きを止める。


「ハニャー、ロキが相手なのに、危険が無い訳ニャイにゃ。バルデルス、どーするニャ??」


「とりあえず、アルパスター将軍に相談してみるしかないよね??ただ、智美も無事に帰って来てもらわないといけないから、大軍で救出に行くのも…………」


 考え込む一真の顔面に、必殺ネコネコぱーんち!!が炸裂する!!


「むぐっ!!アクア、なんだよ!!」


「考えてても仕方ニャイにゃ!!アルパスターのトコに行って、とりあえず相談するにゃ!!」


 アクアに促されて、一真はテントの外に出た。



 オルフェの部隊は、ヨトゥン兵が壁のように折り重なるように形成される包囲網を突破出来ずにいた。


「くそっ!!こうしている間にも、ランカストがっ!!なんとか突破しなくてはっ!!」


 オルフェの握る神剣オートクレールは、次々とヨトゥン兵達の血を吸っていく。


 それでもヨトゥン兵の数は減っている気がしない。


 テューネもまた他の兵達と共に、ヨトゥン兵と必死に戦っていた。


 しかし実戦経験の乏しいテューネは、必死に剣を振るうが致命的な傷を与える事が出来ない。


(これまでなのか…………ランカストも、テューネも守れず…………オレはこんな所で…………)


 全身をヨトゥン兵の血で染めたオルフェは、確実に減らされていく自軍の兵達を見て絶望感が湧いてきていた。  


(駄目だ!!ランカストだって、同じ状況で…………いや、もっと孤独な状況で戦っているんだ!!オレが諦めてたまるか!!テューネを守り、ランカストも救いに行くんだ!!)


 再び力を込めた視線で、戦場を見つめた視線の先…………ヨトゥンの壁のような包囲網が崩されていく。


「ベルヘイムの勇気ある兵達を、こんな場所で散らせるな!!一気に駆け抜けるぞっ!!」


 白き閃光…………


 少数の兵ではあるが、白き鎧を纏ったゼークが戦場に飛び込んで来た。


「オルフェ将軍!!無事だな!!私達が割って入った混乱に乗じて、包囲網の外に出る!!テューネも…………付いて来て!!」


 そう言うとゼークは馬を振り向かせて、迫って来たヨトゥン兵に一閃!!


 神剣ではない剣で、ヨトゥン兵を切り裂く!!


(ゼーク様…………ヤッパリ凄い…………7国の騎士の末裔は、皆強いのに…………私は、何をやってるの…………)


 テューネは唇を噛み締めながら、ゼークの後を追う。


「ゼーク、助かった!!全員、ゼーク隊に合流し、一気に包囲網を突破する!!」


 勢いを失っていたオルフェの部隊は、ゼーク隊の援護に息を吹き返し、なだれ込む様に包囲網の突破にかかる。


 数分後にはゼークの作った包囲網の綻びを突いて、ゼーク、オルフェ、テューネは無事に包囲網を突破した。


 しかし…………被害は甚大であり、オルフェ隊、ゼーク隊共に残った兵は100名に満たない。


「ゼーク…………よく助けに来てくれた…………おかげで、テューネを守れた…………だが、何故………」


「アルパスター将軍が、突然ランカスト隊の援護に走ってくれって………私も、よく分からなかったんですけど…………出来るだけ急いで来てみたら、戦闘状態になってるし…………」


 ゼークは高台から戦場の状況を把握した時に、包囲網を突破しようとしているオルフェ隊を見つけた。 


 そこで、オルフェ隊の突破しようとする場所に挟撃を仕掛け、一点突破を図ったのだ。


「でも…………ランカスト将軍は??まさか…………」


「ランカスト様は、やられてない!!まだ…………まだ戦場で戦ってる!!オルフェ様、早く救出隊を!!」


 ゼークの言葉に、テューネが反応した。


 そう…………ランカストを助けに行かなければいけない。


 だが…………死線を乗り越えて、ようやく助かった兵達に、再び死ねと命令するのか…………


 オルフェは首を振ると、テューネを見て…………それから疲れ果てた兵達を見る。


「そんな…………ランカスト様を見殺しにするんですか…………」


 だが、テューネも強くは言えない。


 多くの犠牲者を出して………死に物狂いで戦って、ようやく助かったのに、また地獄の様な場所に戻れ…………そんな事が言える訳がない…………テューネにも、そんな事は分かっていた。


「すまん、テューネ………直ぐには行けない。だが…………まだ動けるか??今度は人探しだ…………ほぼ無傷で生き残っているガヌロンの部隊…………それを使うぞ!!」


 その場にいた兵達も、オルフェの言葉に頷く。


 戦場に戻る程の気力は無い…………だが、人探し程度なら…………動かない体を無理矢理動かし、ベルヘイム兵達は走り始める。


 ランカスト将軍を救いたい…………ただ、その一心で………………

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