智美とロキ3
「よし…………君の世界の話は分かった…………と言うより、実際に見ないと理解出来ない事が分かった。是非とも、この目で見てみたいものだな………」
ロキは微笑むと、少し真顔になり智美を覗き込む。
「ところで、君の神剣………2振りの剣で間違いなさそうだが…………私の知る限り、この世界で2つの神器に1人の主というのは【ガ・ジャルグ】と【ガ・ホー】という神槍しか知らない。私は神器に詳しい方なんだが………」
「そうなんですね………ゴメンなさい。私の使ってる神剣は、実家の神社………コッチで言うところの教会みたいな所に奉ってあったモノなので、私も詳しくは知らないんです……………天叢雲剣と草薙剣 って言うんですけど…………」
ロキは首を横に振ると、再び優しい表情に戻った。
「いや、戦争の無かった国から来ているのだから、武器の事情を知らないのは無理もない。君と一緒に世界を飛び越えて来た仲間は、何人いるんだい?伝承通りなら、最近のベルヘイム軍の成長頭、風のMyth Knightも君の仲間かい?」
「へー!!航ちゃん、有名人なんだ!!って、スイマセン!!幼なじみの男の子がエアの剣を使ってます。あと、双子の妹が天沼矛って言う、私の神剣と同じ水の力を宿した矛を使います。それと…………Myth Knightじゃないんですけど、医療班に1人幼なじみがいて、全部で4人で来ました」
(水の力を持つ2振りの剣と1本の矛…………やはり、異世界に移動した衝撃か何かで、トライデントが分離したのか??それと、エアの剣を持つMyth Knightが1人…………もう1人がMyth Knightでは無いとすれば…………凰の目とSword of Victoryは、こちらの世界に来ていない………と言う事か………)
和やかな表情で智美の話を聞くロキだったが、その頭の中はフル回転している。
「ありがとう、色々な話を聞けて楽しかったよ。出来るだけ早めにベルヘイム軍に戻れるように手配するが…………戦争中なので、少しの間は我慢していてくれ。不自由が無いよう、気をつけるが………何かあったら、侍女を通して教えてくれればいい……………では」
ロキは智美に一礼すると、部屋から出て行く。
ドアを出て少し歩くと、ビューレイストがロキが出てくるのを待っていた。
「どうでしたか??何か、良い話が聞けましたか??」
「ああ…………やはり、彼女は異世界から来たようだ。その話に虚偽が混じっている感じでも無かったし、人を騙すのが長けているようにも見えん。どうやら、こちらの世界に紛れ込んだMyth Knightは3人………風のMyth Knightに彼女の双子の妹………水の矛を使うそうだ」
ビューレイストはロキの少し後ろを歩きながら、顎に手を当てて考え込む。
「7国の騎士だったアスナとミルティが、異世界に逃げたのは間違いなさそうですね…………アスナの使っていたSword of Victoryはバロールの魔眼でエアの剣とグラムに分離した。その後、アスナはグラムを好んで使っていた事を考えると…………異世界ではアスナとミルティは離れ離れになっていた…………」
ビューレイストの言葉に、ロキは頷く。
「そして、トライデントを使っていたミルティと同系の力を持つ神剣と神槍を使う者が現れた………アスナの持っていたエアの剣を、異世界でミルティが見つけたのであれば、説明はつくが…………」
「まだ、油断は出来ませんね………嘘を言っていなくても、彼女が知らない事実があるかもしれない。凰の目…………直接、ロキ様の脅威になるとは思えませんが、ファブニールはフォルセティの精霊契約の外の存在………何が起きるか…………」
ビューレイストの言葉を聞いていたロキは、その歩みを止める。
「とりあえず、ベルヘイム軍で1番信頼の厚い男を消す。そうすれば、何か動きがあるかもしれん………」
そう言うと、ロキはベルヘイム軍へ早馬を送る指示を出す。
ガヌロンへ届ける為に綴られた書状を持った早馬が、ロキの陣営を離れて行った………




