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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
レンヴァル村の戦い
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スリヴァルディに迫る剣

 

「フェルグスさん!!ヨトゥン軍でも最強と言われるロキ軍にあって、将軍級の貴方が人間如きに苦戦ですか。情けないですね…………それとも、貴方の父親の圧制から救って、この村に連れて来た人達が殺されるのは、やはり気が引けますか?」


 嫌らしい笑い顔をするスリヴァルディの、いちいち気に障る言葉をフェルグスは無視しようと決めた。


 フェルグスが圧制者である父の元を離れるきっかけになった、アデストリアの乱に参加した町の住人を集めた村………………それが、レンヴァル村の正体である。


 ランカストがヨトゥンの将軍、ユトムンダスを倒した時に失われた村人の数を、フェルグスが連れて来た人間で補充したような形だ。


 スリヴァルディは、その事を知っているのだろう……………母を助けられたとしても、共に反乱を起こした同志達を助けられなくなる……………


 だがフェルグスは、母も村人達も助けると先程決めた。


 目の前の小柄な男…………フードを被った男の提案に乗ると決めた以上、フェルグスに迷いはない。


 今まではカラドボルグを伸ばして戦っていたが、フェルグスの足は大地を蹴り、フードを被った男に自ら飛び込んで行く。


 上段に構えたカラドボルグを、フードを被った男目掛けて振り下ろす。


 フードを被った男はいとも簡単に、カラドボルグの一撃をエアの剣で受け止める。


「受け止められるのは、想定内だ!!これで………………どうだ!!」


 エアの剣と重なっているカラドボルグの剣先が、フードの被った男の喉元と一直線になった瞬間を狙って、カラドボルグを伸ばす。


 光の速さで伸びると錯覚する程の勢いで伸びるカラドボルグ……………普通ならば、至近距離から伸びるカラドボルグは、確実にその喉を貫いている筈である。


 それでも……………その確実に当たる筈の攻撃でさえ、フードの被った男は後ろに飛びながらカラドボルグの伸びる勢いに風の力を追加して……………グングン伸びるカラドボルグを力を利用して、フェルグスとの間合いを広げていく。


 だがカラドボルグの向かう先は、スリヴァルディの立つ高台の壁に向かっている。


 高速で伸びるカラドボルグの先端に張り付いているような格好のフードの被った男は、その壁に激突する筈であった。


 スリヴァルディもフェルグスの勝利を確信し、次にフェルグスを殺す策を頭の中で考え始める。


 その為、カラドボルグの先端で逃れられないように見えるフードの被った男の瞳が赤く輝いたのを、スリヴァルディは見逃していた。


 赤く……………紅く輝いたその瞳には、カラドボルグの閃光のような動きがスローモーションのように見えているのか……………


 何事も無かったかのように、カラドボルグの先端から消える。


 エアの剣の起こす風が、フードの被った男をスリヴァルディのいる高台に運んだのは一瞬だった。


 その間に鎌鼬を放ったのか……………フェルグスの母の喉元に突きつけていた剣を、スリヴァルディの右腕もろとも吹き飛ばす。


「なっ……………………なんだって……………!!」


 体勢を整えようとするスリヴァルディの身体を、突風が襲いかかる。


「ぐわぁ!!これが狙いでしたか!!あなた達、もう容赦しなくていいですよ!!眠っている村人達を全員殺しなさい!!」


 2・3回転がったスリヴァルディは、大声を上げた。


 しかし、その声を掻き消すかのような轟音…………………雷が至近距離に落ちたような音が、周囲に響き渡る。


「フェルグス!!あなた、ヨトゥンを裏切るつもりですか??」


 明らかに、カラドボルグの発する雷の音………………それを確認しようと、フェルグスの方に向かおうと動き出すスリヴァルディの前に立ち塞がったのは、フードを被った男だった。


「もう、勝ち目はありませんよ?まだ、戦いますか?」


 その言葉に、スリヴァルディは怒りを覚える。


「たかが人間が……………フェルグス如きと互角に戦ったぐらいで、私に勝ったつもりですか?笑わせるな!!」


 どこから取り出したのか……………スリヴァルディは、いつの間にか元通りになった右手にバスタード・ソードを握り、フードを被った男に襲い掛かる。


 その剣を、エアの剣で受け止められた………………その時、フードを被った男の瞳が赤く輝いたのを、今度は見逃さなかった。


「なんだと……………凰の目……………なのか……………」


 驚くスリヴァルディの身体に、エアの剣の剣先が迫っていく…………

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