糾弾再開
会議に戻ると、未だにガヌロンがランカストを糾弾している。
どうしてもランカストを罪に問いたいのか、軍が全滅した事についての罰則をツラツラと述べていた。
「部隊の全滅ですからね……………私は死罪でも良いと思いますが、これまでの実績を考えて将軍称を剥奪して、一般兵に落とすのが妥当なところですか…………」
ガヌロンが、アルパスターの方を向いて言う。
流石の航太も、これには異を唱えずにはいられない。
「おい!!無茶言うなよ!!状況も見てもないクセに、適当な事言うな!!あの状況じゃ何も出来なかったに決まってるだろ!!だいたい、ガイエンは将軍じゃなきゃ止めれなかった。あの状況になるのは仕方ないだろ!!」
航太は思わず席を立って…………絵美に落ち着けと言っていた自分を忘れて発言していた。
「素人は黙りなさい!!一軍を率いる将は、兵の命を預かる責任があるのです!!起きうる事を予測して、回避する必要があった。ランカスト将軍はその過程を怠ったのです!」
「んなもん、予測出来る訳ねーだろ!」
ガヌロンの言葉に反論する航太だったが、もはやガヌロンに聞く耳はなかった。
「ランカストを後ろ手に縛り連れて行け!!」
ガヌロンが周りの兵に命令し、司法を強引に行使しようとしたが、アルパスターが手を挙げて兵の動きを制した。
「ガヌロン、貴公の言い分も一理ある。ガイエンと戦い、周りを見れてなかった事は落ち度だったと言わざるを得ない。しかし、ランカスト将軍はベルヘイムの将軍だ。ここで刑に処せば士気に影響する。それに、ガイエンの追撃を抑えた功績があるだろう。ガイエンとムスペルの騎士が手薄な本陣に攻めてくれば、ガヌロン、そなたの命も危なかったぞ!」
「しかし、それでは軍紀が乱れます!」
アルパスターの言葉に、ガヌロンが驚いた声で反論した。
「そうかな?この外では、ランカスト将軍の無事を待つ部下達が大勢詰めかけている事だろう。ここで将軍を処すれば、私も貴公も殺されかねんぞ……………それに、さっきも言ったが、私やユングヴィ王子が不在の本陣にガイエンとムスペルの騎士が攻めてくれば、全滅の危険もあった。それを抑えた功は認めねばなるまい。航太達の功も無い事にして、全てをランカストの功績にすれば、全て丸く収まるだろう」
アルパスターは航太を見て微笑み、それに頷いて応えた。
「アルパスター将軍!!航太や他の皆の功績は、私の功績ではない。それは受け取れません!!」
ランカストは真面目な顔で…………罪に処されるのも辞さない覚悟に見える表情で、アルパスターに詰め寄る。
「ランカスト将軍、大丈夫だよ。俺達の力なら、これぐらいの功績スグに挽回出来るし、次の将軍の功績を頂くから。てか、今度飯でも奢ってね!!」
航太や絵美の、この世界には無い不思議な感性に、アルパスターとランカストに自然と笑みが零れる。
その様子を、ガヌロンは面白く無いといった面持ちで眺めていた。
何故ガヌロンがランカストをそこまで追求するか…………同じ軍にいても、分からない事が多過ぎる。
航太は、自分と義弟の一真との気持ちのすれ違いと、今回の一件を重ねていた…………




