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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
恐怖の炎とムスペルの騎士
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軍法会議

「では、これより軍法会議を開始する!!」


 航太達が席につくと、ガヌロンが声高だかに会議の開始を宣言する。


「今、軍法会議って言ったか?今回、誰も負けてねーだろ!!」


 思わず声が大きくなった航太の横で、絵美が「シーッ」と人差し指を口の前に持ってくる。


 案の定ガヌロンが睨んでくるが、絵美が笑いながら話を促すと、怖い顔のまま航太から視線を外した。


「ちょっと、何で声だすのよ!!終わる時間遅くなるじゃん!!馬鹿じゃないの!!」


 航太にしか聞こえない声であるが、明らかに絵美の声は怒っている。


 さっさと終わらせて休みたいんだろうが、軍法会議と聞いて航太は黙っていられなかった。


「軍法会議って言ったら、司法寄りの会議だぞ。敗戦の責任が誰にあったか調べて、その罪を追及したりするんだ。ドラマとかで見た事ないか?」


「は?何それ?皆、頑張って戦ってンじゃん!!誰かのせいとか、そんなのないよ!!」


 今度は絵美が声を上げ、ガヌロンの視線が2人に突き刺さる。


「貴様ら!!さっきから何の騒ぎだ!!邪魔したいのか?」


「さーせん!!コイツ、おバカさんなんで、軍法会議について説明してましたー」


 絵美に足を踏まれながらガヌロンに謝罪した航太は、そのままの勢いで絵美を睨む。


「誰がおバカさんだって?バカって言う人がバカなんだから!!バカバカバカばかバカお馬鹿バカ…………」


(バカって言う人がバカ?そんなにバカを連発したら、大バカになっちまうぞ……………………ってか、おバカって……………どうして、こういう時まで笑いとりにくるかなー?)


 謎の反論にあった航太は、絵美を睨んだ事を後悔しながら踏まれていた足を引き抜いた。


「落ち着いたかな?では、ランカスト将軍の報告から」


 アルパスターは真剣な表情でランカストに声をかけたので、航太達も自然と口をつぐむ。


「はい……………………」


 ランカスト将軍は神妙な面持ちで席から立つと、一部始終を話し始めた。


 話しが終わると、軍師・ガヌロンが口を開いた。


「つまり、ガイエンの術中に嵌まり、何も出来ないままスルトの火球を全軍の上に落とされて、大切な兵を大勢失った…………………という事でいいですね??」


「よくない!!」


 ガヌロンの問いに、絵美が声を荒げた。


「今の言い方……………いったい何様!!ランカスト将軍や航ちゃんは必死に戦ってきたし、たった1人だったけど、その生存者を守る為にガイエンとか、なんとかの騎士っていう追っ手とだって戦った。頑張ってきた人に、そんな言い方ないでしょ!!」


 完全にキレてる絵美の隣で、航太は頭を抱える。


(おいおい………………この会議は、そういう会議なんだってー。学校じゃ、ねーんだぞー。しかも、相手は軍師だから、上司みたいなモンだぞー)


 この会議は簡単に終わらない……………疲労が残る体だが、早く終わらせるのは諦めよう…………航太は天を仰いだ。


「ランカスト将軍、随分と部下を手懐けましたね。しかし、部下に慕われているからといって罪が軽くなる訳ではない。そもそも、貴方を慕っていた部下を何人も殺されたのです。部隊の初期配置、もしくは、戦闘する場所が悪かったとは考えられませんか?将軍という肩書なのに、部下を危険に晒す…………これが罪でなくて何なのです?」


 ガヌロンの言い方に、軽く無視された絵美の顔がみるみる赤くなっていくのが横目にも分かる。


「なら、アナタなら、誰一人殺されずに帰って来れた訳ね!!じゃあ言わせてもらうケド、この作戦考えたのアナタでしょ!!最初の作戦が悪かったって考えられないんですかー?」


 ガヌロンに対して「あっかんべー」を繰り出す絵美を見ながら、航太は頭をグチャグチャに掻き回す。


「スイマセン軍師さん!!このアホ、疲れてて状況理解出来てないみたいなんで、外に捨てて来ていいですか?」 


 ガヌロンは話すのも嫌なのか、出て行けと手で合図をすると、軍法会議を再開する。


 大騒ぎする絵美の腕を掴んで立ち上がると、航太はそのまま外に出た。


「航ちゃん、あんなヤツの肩持つなんて…………信じらんない!!」


「オレだって、ガヌロンに斬りかかりたいぐらいイライラしてるよ。でも、あれ以上言うと、ランカスト将軍の立場が悪くなってっちまう。ここは、耐えるしかない。今の俺達に出来る事は、将軍の罪を軽くする……………その為に行動する事だけだ」


 外のヒンヤリする空気に触れても怒りの落ち着かない絵美に、航太は力強く……………そして、極力優しく言った。


「ん……………何となく分かった。ゴメンね航ちゃん。私、色々ありすぎて、情緒不安定になってたかも…………」


 そう言う絵美の頭を撫でながら、航太は頷く。


「仕方ないさ…………今まで平和に生活してたのに、コッチの世界来て戦争やってんだから…………心がおかしくなって当たり前だよ。絵美はもう休みな。オレは最後まで会議に参加して、少しでもランカスト将軍に有利な情報を流すようにするからな…………」


「うん……………お願いね…………私、ちょっとゼークの容態でも見てくるかな…………」


 そう言うと、2人は別れた。


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