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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
恐怖の炎とムスペルの騎士
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破邪の光………赤きペンダント

ただ、ガイエンに対する恐怖と憎しみが、ティアの心を支配していく。


「オレの事など、思い出す必要も無い…………貴様は、ここで死ぬんだからな…………」


バシュっ!!


ヘルギを構えたガイエンに、恐怖から立ち直ったエリサの放った火弾が直撃した。


「ぐおぉっ!!」


吹っ飛んだガイエンは、しかし、その後の対応は早い。


地面に倒れた事を利用し、転がりながら身体に纏わり付く炎を消して、すぐに立ち上がると2撃目、3撃目の火弾をあっさり斬り裂いた。


「貴様…………毎回毎回、邪魔をしやがって!!許さんぞ!!」


ガイエンは【ヘルギ】に力を込めると、その刀身から溢れるように輝く赤い光が発生し、戦闘エリアの全てを覆っていく。


「もはや躊躇はしない!!全力をもって、貴様等を殺してやる!!」


その赤い光の空間の中で航太達は全員恐怖に苛まれ、手足も震えて、とても戦闘を継続出来る状態では無くなってしまった。


その空間で自由に動けるガイエンとムスペルの騎士だけが、各々目の前にいる敵…………航太達の首を取るために動き出す。


(いよいよダメか…………)


【ヘルギ】の放つ光に触れると、どうしても心の奥底から生まれる恐怖を払拭できない。


航太は膝をつき俯き、絵美も座り込んで身体をブルブルと振るわせている。


辛うじて立っているランカストも、先程まで激しい戦闘を繰り広げていたのが嘘のように後退りし始めた。


「ティア…………貴女だけでも逃げて…………ここでガイエンに殺されたら………そんなの、悲しすぎるから…………」


恐怖で声を振るわせながら…………それでもエリサは必死にティアを逃がそうとしていた。


主人も姉も…………そして赤ん坊だった子供も、目の前で殺されている…………その殺した張本人に、一矢も報えず殺される…………


そんな悲しい事はない…………エリサは恐怖の中でそう思った。


「【ヘルギ】の影響下で、それだけ言えれば大したものだ。悲しいと思うなら、あの女の前に貴様を殺してやる。そうすれば、悲しまなくて済むからな」


ガイエンがエリサに向かって歩きだそうとした…………正にその時、震える両足に力を込めて…………身体全体に力を込めて、ティアは立ち上がった。


その胸元には赤く輝く光が…………【ヘルギ】の放つ赤より、もっと深い赤の輝きが、辺りに広がっていく。


まるで【ヘルギ】の発した恐怖を優しく包み込むように…………暖かさすら感じられる赤い光は、恐怖の光を覆い尽くす。


その光の源…………姉のエストから託された物と、惨劇の日に教会で拾った2つの赤いペンダントが、ガイエンを諭すかのように輝きを増していく。


「あなたは……………あなたは、私の主人と子供を殺した殺人鬼よ!!」


ティアが叫ぶと同時に、恐怖の影響を逃れたランカストが、優しい赤の光の影響で逆に動きが鈍くなったムスペルの騎士を一刀両断で倒す。


「ガイエン!!貴様は許してはおけん!!」


自らの部隊を全滅に追いやり、人でありながら人の心を踏みにじるようなガイエンのやり方に、ランカストは心の底からの怒りを【デュランダル】に乗せる。


「うおっ!!なんて圧力だっ!!」


鬼気迫る【デュランダル】の一撃に…………更に優しい赤の光の影響で動きの鈍っているガイエンは、身に纏っていた紅の鎧を豆腐のように切り裂かれ、右胸から血液が吹き出した。


咄嗟に後ろに飛び致命傷は避けたが、どんな物でも斬り裂く【デュランダル】で斬られたために、鎧は何の意味も成さなかった。


「ぐはっ!!」


右胸から大量の出血をしているガイエンは、辛うじて意識を保っているものの、立ってるのがやっとだった。


(今なら殺れる!!ここで…………ここで止めないと!!)


殺すのは航太の流儀に反したが、今日の出来事やティアを見て、生かしておいてはいけない男だと、航太の心が叫ぶ。


航太は風の刃を発生させるため【エアの剣】を横に払った。


……………が、いつになっても風の刃は発生しない。


剣を素振りしているかのような姿に、一同は目を丸くする。


「???」


航太は【エアの剣】を調べるが刃こぼれ一つ無く、新品と間違えるくらいに刀身は輝いている。


「???」


頭の上に「?」マークを大量発生させてる航太の近くから……………


「きゃあ!!」


危機感のある絵美の悲鳴が聞こえた。


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