訓練の日々
「うりゃあああぁ!!」
航太は叫びながら、ゼークに突っ込む。
しかし、ゼークはいとも簡単に航太の剣を流す。
航太達がベルヘイム軍に参加する事を決めてから、一週間が過ぎていた。
行軍の合間を見ての模擬訓練……
昼はゼーク隊の通常訓練に参加。
夜は神剣を使って、アルパスターとの実戦訓練。
行軍と訓練で体中が筋肉痛であり、毎日8時間近く寝ているのに疲れがとれない状態であった。
普段なら簡単に根をあげるだろうが、ガイエンの話やオゼス村の惨劇を見て、それぞれ感じるものがあったのだろう。
3人とも、必死に訓練に食らいついていた。
「よし!休憩!!」
ゼークが、隊員全員に声をかける。
「ふー、ちかれた~~」
絵美が旅行用に持ってきていた、ハンドタオルで汗を拭う。
「一週間しか経ってないのに、みんな凄い上達したね☆」
ゼークは、笑顔で3人に声をかける。
アルパスターから軍全体に航太達の紹介があってから、今までの生活とは大きく変わるものになっていた。
Myth Knightとして紹介された航太達は、それだけで軍の中で英雄のような扱いを受けた。
神剣に選ばれて戦うという事は、この世界の人達の希望を背負って戦う事なんだと、航太は実感していた。
その分プレッシャーもあったが、それまでただの大学生だった航太は多少の優越感もあった。
「オレらが頑張って強くならねぇと!神剣を使いこなして、悲しい想いをする人を減らさないとな!!」
航太が力こぶを作って言う。
「航ちゃん、張り切りすぎると後が続かないよ!」
智美が航太の肩を叩いた。
「でもゼークは凄いよね~~。神剣持ってないのにメチャ強いもん♪」
絵美がゼークを羨望の眼差しで見る。
「ゼークの家系は代々ベルヘイムの近衛やってたんだろ?その剣術が染み込んでんだから強いよ!エリートみたいなもんだろ?」
航太はわざと嫌味っぽく言うが、ゼークの歳で今の強さを手に入れたのは、相当の努力をしたのは想像出来た。
「航ちゃんは、相変わらず嫌味みたいな話し方するんだから!!」
智美がさらに強く航太の肩を叩く。
クスっと、ゼークは笑ってから立ち上がった。
「私には7国の騎士【ファルミア・ゼーク】の血が流れてるんだから……強くなきゃいけないんだ」
ゼークは誰にも聞こえないような小声で、自分に言い聞かせる。
「伝令!!伝令!!」
ゼークの元に一人の兵士が走ってくる。
「ロキ軍の先鋒隊が、方向を変え我が軍に向けて進軍してきます!さらにガイエン軍も我が軍の後方より迫ってます!!」
伝令を聞き、ゼークの表情が少し曇る。
「フェルグスの隊か……私が戦うしかないかもしれない……」
複雑な表情で、ゼークは呟いた。




