背後より上がる悲鳴
アルパスターがフレイを援護する、少し前…………
フレイとバロールの戦う戦場を後にした航太は、アルパスターの隊と合流するために、林の道を走っていた。
足場は悪い道だが、前方から聞こえてくる戦いの音が航太の隊の歩みを加速させていく。
「隊長!!ヨトゥン軍のケツが見えたぜ!!」
航太の横を並走していた兵の1人が叫ぶ。
ヨトゥン軍の後方はアルパスターの隊に接触できてないのか、戦闘は始まっていない。
両サイドを林に囲まれ、唯一の道をバロール軍の前衛の部隊である3000の兵が犇めいているため、ヨトゥン軍はどうしても縦長の陣形になってしまう。
先程までバロールと戦ってた場所より道幅は狭くなっており、ヨトゥン軍は渋滞しているかのように前に進めず、数の優位を活かしきれていない。
「皆はヨトゥン軍に見つからないように、両サイドの林に入って前進。オレが鎌鼬で先制攻撃をするから、それを合図に側面から攻撃して下さい」
自分より年齢の高い人が多い為、航太はつい微妙に敬語が混じった命令をしてしまう。
数人の兵が笑っていたが、今は気にしている余裕は無い。
部隊が配置に付いたのを見計らって、航太はヨトゥン軍に向けて鎌鼬を放つ!!
「ぐわぁぁぁ!!」
何人かのヨトゥン兵が、鎌鼬によって切り裂かれる。
まさか、後方から攻撃されると思ってなかったヨトゥン兵達は混乱した。
その攻撃を合図に、混乱したヨトゥン兵の側面から航太の隊が飛び込む!!
「何だっ!!」
前に行けず苛々していたヨトゥン兵達は、航太の隊が側面の林から出てきた事で余計に混乱する。
(よし!!いける!!)
航太もダッシュで、混乱しているヨトゥン軍の中に突っ込む!!
航太はエアの剣を振るい、ガムシャラにヨトゥン兵を倒していった。
部隊の先頭に立ってヨトゥン兵と戦っていたアルパスターは、後方の異変に一早く気付く。
(援軍か??王子が中軍と戦ってた誰かを寄こしたな!!)
アルパスターは、ブリューナクで光の槍を3本放つ。
周りにいたヨトゥン兵達が、光の槍に突き刺さり倒れていく。
「援軍が来たぞ!!皆、もうひと踏ん張りだ!!」
「おおーっ!!」
わざと細長い道に連れ込み、ヨトゥン兵達が1度に襲い掛かれないように戦っていたアルパスター隊の兵達は、しかし永遠と襲い掛かって来るヨトゥン兵達に疲弊していた。
そこに飛び込んだ援軍の報に、兵達の士気が上がる。
前後を挟まれ兵力も同数となり、更にMyth Knight2人相手では、1人で人間の兵10人を相手に出来るとも言われるヨトゥン兵達も次々と倒されていく。
それ程時間もかからず、バロール軍の前衛の部隊は、各々林の中へ逃げていった。
「将軍!!無事だったか!!」
アルパスターと合流した航太は、その姿を確認してホッとした。
頼れる人が近くにいる事は、もの凄く力強く、心から安心出来ると航太は感じる。
短い時間ではあったが、1人で兵を指揮していた時は不安で心細かったが、今は再び力が湧いてきている。
「ああ、大丈夫、航太も無事でなによりだ。助かったよ」
アルパスターは言うと、航太の走ってきた方向に視線を向けた。
「しっかし、王子ってメチャ強いんだな。ビックリしたよ」
航太の言葉に、アルパスターが不安の表情を覗かせる。
「だが、バロールの魔眼は伊達じゃない……………王子でも勝てないかもしれん…………航太、連戦になるが王子のフォローに行くぞ!!我々の武器なら、バロールの視界に入らず攻撃出来る!!」
アルパスターの言葉に航太が頷いた、その時…………
「きゃあああぁぁぁ!!!!」
アルパスター隊の後方より、悲鳴が上がる!!
そして悲鳴の上がった方角から、土煙が少しずつ航太達の方へ近付いて来た。




