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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
血に染まる白冠
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バロールとの戦い3

 バロールは航太達を氷の球体に閉じ込めた後、ヨトゥン軍の分断を図って戦っているゼークの部隊に狙いを定める。


 ゼーク隊は、航太達がバロールを狙い撃ちにしている間に、ヨトゥン兵を減らす予定であった。


 しかし、予想を超えるヨトゥン兵の数に苦戦を強いられている。


 神剣を持つ者が部隊の中でテューネしかいない上に、ヨトゥン兵と1対1で戦えるのがゼークだけでは、どうにもならない。


 更にバロールの魔眼が、ゼーク隊を捉える。


「ゼーク様っ!!引いて下さい!!航太さん達が失敗したみたい。魔眼がコッチを狙ってる!!」


 何も無いところで兵が倒れていくのを見て、テューネの瞳が青く染まっていく。


 バロールは魔眼の性質上、もっと後方から……………より安全な場所から魔眼で狙ってくるだろうという予測を、尽く裏切った。


 バロールが出て来る前に中軍をMyth Knightである航太達の力で圧倒、バロールが出てきたら遠距離攻撃で足止めし、真ん中から切り崩していく作戦であった……………しかし航太の部隊は足止め、ゼーク隊は手も足も出ない状態で魔眼に晒される。


 魔眼とヨトゥン兵の攻撃で、ゼーク隊は壊滅状態だった。


「テューネ!!あなたの皇の目は、使い過ぎたら身体が動かなくなるのよ!!前に出ないで隠れて!!」


「ゼーク様は、兵を後退させて!!今、バロールと戦えるのは私だけなんだ!!ソフィーア様とランカスト様から受け継いだ力でっ!!」


 青く輝く瞳を従えて、テューネはデュランダルを地面に叩きつける。


 大地に亀裂が走り、そしてパックリと口を開けた。


 ヨトゥン兵を飲み込みながら、大地の切れ目はバロールに迫っていく。


「ふん……………奴がノア家の隠し子か…………話にならんな」


 凄まじい勢いで大地を割って走る亀裂を、バロールが見る……………ただ、見ただけだ。


 それだけで、その部分の大地が隆起し、デュランダルの放った大地の亀裂の進行を止める。


「そんな……………くぅぅっ!!」


 バロールの魔眼は、そのままテューネを視界に入れた。


 皇の目を持ってしても、魔眼の影響は受ける。


 死なないにしても、その威力は絶大だ。


 更に、皇の目を解除すれば死んでしまう為、体力が奪われようがテューネは堪えるしかない。


「魔導師隊、魔法でテューネを林の中に引っ張って!!無理矢理でいい!!」


 基本は攻撃魔法だが、この際構っていられない状況だ。


 片膝をつくテューネを、無理矢理林の中に引きずり込む。


 木にぶつかって多少のダメージを受けたが、止むを得えない。


「ゼーク様…………すいません………お役に立てなくて………」


「何を言ってるの。テューネが時間を作ってくれたおかげで、私達は身を隠せた。ありがとう。それより身体は??」


 テューネは身体を動かしてみるが、木にぶつかって打撲している箇所以外に問題は無さそうだ。


「大丈夫…………動けます」


「なら、移動するわよ。まだヨトゥン兵に囲まれている状況は変わらない…………って言ってるそばから!!」


 木の隙間から斬りかかってきたヨトゥン兵の剣撃をゼークはヒラリと避け、回り込んで斬りつける。


 ゼーク隊の兵達は林の陰に身を隠し、魔眼の視界から隠れて戦う。


 孤軍奮闘するゼークだったが、数の多いヨトゥン兵に押され始めていた。


 そんな時だった…………


 ドゴオォォォン!!


 辺りに爆音が響き渡り、ゼークの髪が風で揺れたと同時に、目の前で大木とヨトゥン兵の体が斬り裂かれている。


 そして次の瞬間…………


 ガガガギィィィィン!!


 バロールのいた方向から、凄まじい程の金属が擦れ合う音が聞こえた。


 そんな中、次々と目の前のヨトゥン兵達が斬り裂かれていく。


「よっと…………ゼーク、おまっとおさん。ここらの敵は、オレ達が引き受けるぜ!!ゼーク隊は、傷の手当を!!」


 突然現れた航太の剣から鎌鼬が発生し、ヨトゥン兵を凪ぎ倒す。


 ポヨン


 ポヨヨン


 格好を付ける航太の横で、気の抜けた音がした。


「航ちゃん!!風の力で飛んでくなら、着地の事も考えてよね!!」


「そんなの、この馬鹿に求めるのが無理なのよ!!今だって、格好良く登場したオレの見せ場を気の抜けた音で台無しにしたーって頭の悪そうな事考えてんのよ!!そもそも、何したってカッコよく無いってーの!!」


 エアの剣で飛ばされて来た智美と絵美は、とんでもないスピードで地面が近づいて来た瞬間、着地の事を考えて無い事に気付き、水の玉を造り出しクッションにする。


 それが、あの音だ。


「もう…………真面目に戦ってる、コッチがアホらしくなるわ…………でも、バロールの魔眼は??ふざけてる場合じゃないでしょ!!」


「そっちは大丈夫!!フレ……………不死身のユングヴィ王子が、バロールと戦ってくれてるからな!!」


 絵美に見透かされた航太は、ばつが悪い表情をしながらバロールの方を見る。


 その方角からは、複数の金属音が聞こえ始めていた…………


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