コナハト城にて
航太が衝撃の事実を聞き驚いている頃、コナハト国の首都スラハトにはクロウ・クルワッハの将が集まっていた。
ガイエン、バロール、スルト、そして総大将のクロウ・クルワッハである。
【魔眼のバロール】【黒き者スルト】
この2人はクロウ・クルワッハ軍最強の双璧と謳われている。
バロールはクロウ・クルワッハの父であり、4の目は【魔眼】もしくは【邪眼】と呼ばれ、視界に入った者の思考を読みとり、力なき者であれば命を奪う程の瞳力を持つ。
しかし、そのうちの1つは【凰の目】を持つ不死鳥の騎士と呼ばれた7国の騎士の1人【アスナ・オードストローム】と、アルパスターの先祖【ランティスト・ディノ】との戦いによって潰されている。
さらに、Sowd of Victoryと呼ばれる剣を2つに分離した時に、1つ魔眼を失い、現在は2つしか使えない。
それでも普通の人間であれば、その視界に入るだけで命を失う…………その力は脅威である。
もう1人のスルトは、独自の部隊【ムスペルの騎士】を持つ。
その騎士の全てが炎を操り、力はヨトゥンの武将と変わらない程だ。
また、スルト本人も強大な炎を操り、その炎は以前ランカスト隊の大半を焼き尽くした。
神剣【レーヴァテイン】の刀身を7国の騎士【ファルミア・ゼーク】より奪い、柄のみを新たに作った剣を使用している。
現在バロールが守るコナハト城と、コナハト城の城下街で首都のスラハトを、どのように守るか話し合っていた。
「ガイエン、傷はもういいのか??」
さほど心配している感じでもなく、社交事例的にスルトがガイエンに聞く。
「はい………もう大丈夫です。それより、ムスペルの騎士までお借りしたのに、ランカストを討ち取れず申し訳ありませんでした………」
ガイエンの剣の師匠はスルトとクロウ・クルワッハであり、その強大な力を持つ2人には頭が上がらない。
「まぁランカストや、スリヴァルディを殺った風のMyth Knightが相手では仕方ない。それに、ランカストはビューレイストが討ち取ったらしいしな…………」
クロウ・クルワッハはガイエンを非難せず、むしろロキ陣営にランカストが討ち取られた事が気に入らないような雰囲気を出す。
航太はともかく、ランカストはユトムンダスを倒した騎士として、ヨトゥン側にも認知されていた。
その騎士がロキ陣営のビューレイストに倒された………ロキの発言力がヨトゥン内で強くなる事を危惧していたのだ。
「しかし、このスラハトの目と鼻の先までアルパスター軍が近付いて来ておる。ランカストが死んだと言っても、風のMyth Knightの成長や、知将オルフェの参戦は脅威だな…………」
バロールが考え込みながら言うと、クロウ・クルワッハが豪快に笑う。
「フフっ!!親父も冗談が過ぎる。魔眼で見られて死なない人間などまずいない。アルパスターの部隊をコナハト城にわざわざ近づけたのも、攻城戦で集まった人間どもを魔眼で一掃する為だ。厄介なのはフレイだけだろ??」
「その通りだ。それに、フレイの次に強いアルパスターも、まだまだ7国の騎士だったランティストには遠く及ばない。バロール殿なら瞬殺できよう」
スルトも笑いながら、クロウ・クルワッハの意見に賛同する。
「ふむ…………しかし、一度現状のアルパスター軍の力を見ておきたいものだな………万が一があっては困る。コナハト城が落ちる事があれば、またロキが力をつけてしまうからな…………」
「ふふ…………親父は心配性だな。では親父とガイエンで、一度アルパスター軍を攻めてみればどうだ??ガイエンは、何度もアルパスター軍と戦っている。戦い方は分かってる筈だ」
様子見だけであれば、バロールとガイエンの部隊で充分であろう…………クロウ・クルワッハがガイエンに指示を出した瞬間、ヨトゥン軍の伝令が走り込んできた!!
「どうかしたのか??」
息をきらして城内を駆け抜けて来た伝令に、怪訝な顔をしてクロウ・クルワッハが聞く。
「はっ!!ベルヘイム軍の軍師…………ガヌロンと名乗る者が、投降したいと門前まで来ております!!クロウ・クルワッハ様に面会を求めています!!」
伝令を聞き、暫く黙っていたクロウ・クルワッハが口を開いた………




