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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
ロンスヴォの戦い
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青き瞳のテューネ

 ランカストは、力の限りデュランダルを大理石に叩き続ける。


 ランカストの力か、デュランダルの力か……………その凄まじい力で、固い強度を持つ大理石ですらヒビが入り始めた。


 それでも、ランカストは叩くのを止めない。


(そろそろ頃合いか…………オルフェ、気付いてくれよ!!)


 ランカストは叩くのを止めると、オルフェが敵の囲みを突破した方角に向けて、力の限りデュランダルを投げようとする。


「ぐはぁぁぁぁ!!」


 ランカストの企みは、ビューレイストとダーインスレイヴによって阻止された。


 デュランダルの投げようとした腕の肩……………右の肩に、ダーインスレイヴが深々と突き刺さっている。


「スマンな……………しかし、投げられては困る。次にデュランダルを使う人間は決まっているのだから、な…………」


 ビューレイストの言葉に、ランカストは悔しさを堪えきれなかった。


 やはり…………と言うべきだろうか…………


 ロキの狙いは、自分とデュランダルに何かをさせる訳では無かった。


 自分から別の者に、デュランダルの所有権を移すのが目的か………


「ガヌロンと…………結託していたのか…………」


 肩を貫かれてもデュランダルは手放さず、しかし弱々しくなった言葉がランカストの口から漏れる。


「死に行く前に、真実を話しておこうか。私は…………いや、ロキ様も本来は英雄を殺したくはない。ランカスト殿、ガヌロンのような下賤の男を使い、貴殿程の男を嵌めてしまった。この場で詫びよう…………そして、今から話をする事が、我々からの礼だ…………」


 ビューレイストは、ロキの考えを…………目的を話し始めた。



「あそこだ!!ランカストがいるぞ!!」


 真っ先にランカストを見つけたオルフェが、オートクレールでヨトゥン兵を切り裂いて前に出る。


「ランカスト様…………そんな…………」


 テューネもランカストを視界に捉える…………そして、その姿に絶句した。


 剣が…………剣が突き刺さっている……………


「大丈夫!!剣が刺さっているのは肩だわ!!致命傷じゃない!!」


 ゼークも必死に剣を振るって、ランカストまでの道を確保していく。


「ランカスト様!!」


 いち早く、ランカストの元に辿り着いたのはテューネだった。


 膝を付いた身体の下…………地面が吸い切れない程の出血量に、テューネの顔が青ざめる。


「そんな………ランカスト様…………そんな……………」


 跪いたその姿勢で顔を上げた先…………その瞳がビューレイストを捉えた。


「貴様が…………貴様がランカスト様を!!」


 テューネは一瞬ビューレイストを睨み…………そして、立ち上がりながら思い切り剣を振る。


「ぐはぁ!!」


 その剣を避ける為、ランカストから思い切りよくダーインスレイヴを引き抜いたビューレイストは、軽く後ろに飛びテューネの剣の切っ先から逃れる。


 ダーインスレイヴを引き抜かれたランカストの肩から、大量の血が噴き出した。


「そんな…………ランカスト様!!貴様、何をした!!」


「テューネ!!それが恐らくダーインスレイヴの力だ!!敵の生き血を全て吸うまで鞘に戻らない…………そういう事かっ!!」


 叫んだオルフェの横から、ヨトゥン兵が飛び込んで来る。


 突然、勢いを増して押し寄せて来るヨトゥン兵に、オルフェもゼークも足止めをさせられてしまい、ランカストとテューネに近寄れない。


「ここまでして…………こんなにランカスト様を痛め付けて………許さない…………私は…………あなたを許さない!!」


 テューネの瞳が、少しずつ…………薄く淡く…………黒から青に変わっていく。


「テュー…………ネ…………駄目…………だ…………ノア家の…………その力を…………使わせる…………事…………が…………やつらの…………」


 ランカストが力無く話始めた瞬間、ビューレイストが動く。


 閃光の如き剣撃がテューネの剣を吹き飛ばし、その勢いのままダーインスレイヴがランカストの胸に突き刺さった。


「がはぁぁぁ!!」


 目の前で…………幼き頃から憧れであり、命の恩人である騎士の断末魔を聞いてしまった…………ランカストの胸から抜かれる剣…………そして噴き出す血………


「うわぁぁぁぁ!!」


 叫ぶテューネの瞳は、完全に青に変化していた。


 そして、ランカストの手に握られていたデュランダルを無意識に掴み、ビューレイストに斬りかかる!!


 ガアアアァァァァン!!


 テューネの全身全霊の一撃を避けたビューレイストの足元………その大地にヒビが入る。


「流石…………皇の目の力………だが、まだ駄目か…………」


「許さない…………絶対、許さない…………」


 今だ余裕の表情のビューレイストを、テューネは睨む。


 テューネの小さな身体を隠す程の大剣を構えると、そのデュランダルの中心にルーン文字が現れる。


「皇の目か、他のアイテムか…………何にせよ、デュランダルの形態変化が起きる。そのまま力を見せてみろ!!」


 叫ぶビューレイストに、閃光の如き剣速でデュランダルの一撃を叩き込むテューネ。


 それまでのテューネの動きとは、まるで別人のようだ。


 しかし、その一撃ですらビューレイストには届かない。


「止めろテューネ!!コイツは………オレが倒す!!」


 ダーインスレイヴとデュランダルが激突して距離の開いたビューレイストとテューネの間に、近くにいたヨトゥン兵を一掃したオルフェが割って入った…………


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