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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
第四章「妖精神の傘の下」
65/111

65 おじいちゃんとおばあちゃん


 そんなこんなで、いかにも社長室なテーブル越しににらみ合うのをやめたところで。

 俺たち一行は、これまた社長室って感じに向かい合うソファの片側に集結しつつ、オリエンタルなテーブル越しに祖父母方と向かい合っていた。

 距離が近くなっただけで、さっきと何も変わっていない気がするが、細かいことは気にしないほうがいいんだろう。

 それに、こっちの方がラフな気分でいられるしな。

 俺としても楽なほうがいい。


「いやあ、悪かったね、怖がらせて」

「まあ、ある意味怖かったですけど」


 ああいかんいかん、初対面だというのに子供らしい口調が崩れてしまった。

 今の俺はぴちぴちの金髪美幼女なのだから、ちゃんとそれらしく振舞わないと。

 身につけたフリフリフリルに恥じない立ち振る舞いをしないとね。


「初めまして! おじいちゃん!」


 フリルスカートを指先でつまみ、首を傾げてスマイル一つ。

 どうだ? 流石にわざとらしすぎるか?

 先ほどいろいろとブレイクしていたとはいえ、流石にこんな見え見えの罠には引っかからないか?


「おばあちゃんは!? おばあちゃんはないの!?」

「うええ!?」


 誰だコイツ!?

 いや、誰も何もおじいちゃんの隣にいたおばあちゃんだけどさ。

 そんなバリバリキャリアウーマンみたいな服装しておいて、そんな言葉が出てくると思わないじゃないか。


「おばあちゃんも、初めまして……?」

「っ……ありがとう……!」


 えっーと、別に今のはそこまで気合を入れたわけじゃないっていうか。

 そんな噛み締めるように感謝されても困るんだが……どうしよ。

 まあ喜んでくれてるならいっか!


「はいはい。うちのレーダは十分堪能できたでしょ?」

「ああ……そんなご無体な」

「そうよ! 初めて見る孫なのよ!?」

「これからいくらでも見れるでしょうに」


 まあ、そりゃ俺とアーネスはこれからこの街で暮らすわけだしな。

 見た感じ、かなり大きな商会みたいだし、お世話になることも多いだろう。


 あ、そういえば、アーネスは大丈夫かな。

 置いてけぼりを食らい過ぎて口から魂が出ていたりするかもしれない。

 彼の様子もちゃんと見て……て、あれ?


「アーネスは?」


 俺たちの隣に、アーネスの姿がない。

 おかしいな。この部屋に入るまではちゃんといたはずなんだけど。

 俺は部屋の中を一通り見回してみるけれど、やはり姿は見つからない。

 どこいったんだ?


「お、俺はここだ……」

「あ……え? なんでそんなところに」


 見ると、アーネスは部屋の入り口……というか外で、借りてきた猫みたいになっていた。

 つまりは、扉の影のところに身を隠して、半身だけ乗り出してこちらを見ている。

 何を怖がっているんだろう、別に様子のおかしなところは……たくさんあるけど、怖がるようなことはないはずだけど。


「いや、なんでもない……」


 本当になにが原因だ?


***



 結局、アーネスの恐慌の理由はわからないまま。

 俺たちは先ほど、例の社長室を後にした。


 眼前には馬車から降りた際の光景そのまま(馬車抜き)が広がっている。

 相変わらず活気があって騒がしいね。


 ともあれ。どうやら、おじいちゃんおばあちゃんも顔合わせがしたかっただけらしい。

 俺たちが来ると聞いて、無理やり時間を作ってくれたのだとか。


 ちなみに、例のミナお母さま大盤振る舞いについては、笑って許してくれていた。

 つられて笑うミナの側頭部に脂汗が浮かんでいたのは多分気のせいだと思う。

 おじいちゃんおばあちゃん方も、目だけが笑ってないとかはなかったからな。

 なんたって糸目にしわで何も見えなかったんだから!


「おっと、そろそろ入学式の時間だね。急がないと」


 商会を後にしたところで、ダイアーがふと呟いた。

 べつに腕時計をしているとかはないのだけれど、直感でわかるのだろうか。

 なんて思って目線の先を負ってみたら、全然時計塔があった。

 いつか見たカラフルレンガで彩られた、おしゃれな時計塔だ。


「なあ、レーダ」

「うん? どうかした?」


 時計塔を見上げていたら、アーネスから声をかけられた。

 随分弱弱しい声だ。

 社長室の一件もあるけれど、本当にどうかしたのだろうか?


「俺、やっぱり一緒にいないほうがいいんじゃ」

「はあ?」


 おっと、典型的な幼馴染キャラみたいな威圧が出てしまった。

 まあいい、どうせやろうとしてるのは似たようなもんだ。

 流石に馬鹿とは言わないが、強い言葉を使ってやろう。


「俺だって、アーネスのこと頼りにしてるんだから、今更怖気づかないでよね」

「……ふっ」


 ふっ、って。何が可笑しいんだか。

 口元に笑みを浮かべてくれたのはいいが、俺は当たり前のことを言ったまでだぞ?


「久しぶりに、自分のこと、俺って言ったな」

「……あ」

「入学式までに直しとけよ」


 むう……なんだこいつめ。

 細かいところを正してやるのは、俺の仕事なんだからな。

 まあいいか、どうせこれからも長い付き合いになるのだ。

 これくらいの方が、バランスがとれていていい。




 あ、長い付き合いっていっても付き合ってやるつもりとかはないぞ!

 そういうのはまだ早い。


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