38/46
Donut
作り過ぎた、と言うそれは
あまりに拙い菓子だった。
「悪いねェ……」
うんざりと男が笑う。
「なかなか減らなくて……」
何を企んでいるのだろう。
冷ややかな視線を送ると
男はますます眉尻を下げた。
「味は悪くないんだけど……」
不格好な揚げ菓子。
私は小さく息を吐くと
拉げたそれを口に運んだ。
「……どう?」
ふんわりと甘い口溶け。
やわらかな小麦の香り。
なるほど、たしかに悪くはない。悪くはないが ―――
「……物足りない」
正直な感想を洩らすと
男は大仰に肩を落とした。
「いい小麦粉を使ったんだけどなァ……」
聞こえよがしに呟く。
「何が足りないんだろ? 卵? 砂糖? それとも ―――」
ぶつぶつとうるさい男に
私はまたひとつ息を吐いた。
投げやりに口を開く。
「クリームでも詰めたらどうだ?」
「……クリーム?」
「あぁ、重めのものが合うだろう」
ジャムでもいいが、と続けると
男はまじまじと私を見つめた。
唇の端が奇妙に歪む。
「クリームを詰めるねェ……」
何を企んでいるのか。
にまにまとほくそ笑む男を尻目に
私はまたひと口菓子を頬張った。
日本語題:クリームでいっぱい




