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Fool
十二時を告げる鐘が鳴る。
愛している、と囁いた。
「……悪い冗談だね」
騙されないよ、と男が微笑う。
蒼い瞳がかすかに揺れた。
「四月馬鹿でしょ?」
春の日差しにくすぶる吐息。
冷めた紅茶に舌を打つと
男はますますにやりとした。
「らしくないね、こんなベタな嘘を ―――」
はたと口を閉じる。
「……嘘?」
男はまじまじと私を見た。
まさか、そんな、と低く呻く。
「ねぇ、嘘を吐いていいのって ―――」
私はゆっくりと口の端を吊り上げた。
「さぁ?」
ふと思い付いた。ただ、それだけ。
あぁ、けれど ―――
「冗談でしょ? ねぇ、ちょっと!」
慌てふためく男を後目に
私は苦い紅茶を飲み干した。
日本語題:嘘か真実か




