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17 赤毛のお客様

 コンラッドさんを伴って家に帰ると、父さんが出迎えてくれた。


「お帰り、フェル。お客さんかい?」


 見慣れないコンラッドさんに少し警戒したように尋ねられた。


「ただいま、父さん。この人はコンラッドさんだよ。今浜辺でクラーケンに襲われてたんだ」


 安心させるつもりが、クラーケンと聞いて逆に心配させたみたいだ。失敗、失敗。


「クラーケンだって!? 大丈夫だったのか?」


 どこか怪我でもしてないかと全身を見回される。過保護かよ。


「父さん、フェルが追っ払ったよ。残念ながら仕留められなかったけどね」


「はじめまして、コンラッドと言います。この度は息子さん達のおかげで命拾いしました」


 どうやら悪い人ではないと警戒を解いた父さんはコンラッドさんを家の中へと案内する。


 皆でテーブルを囲んでコンラッドさんの話を聞く事にした。


 コンラッドさんはゴダール国で冒険者をしているそうだ。


 今回、チェルニー国との貿易を正式に進めるためにクラーケンの効率的な討伐方法を探るために出航したという。

 

 いやまぁ、言ってる事はわかるけど、それで船に乗って来るって、どれだけ命知らずなんだよ。


 今日みたいに船から落とされたら、逃げようがないじゃん。


 って、ツッコミたいのは僕だけじゃないと思う。


 他の船から落ちた人はどうなったかわからないけど、船が無事だったら明日には漁港に入港して来るかもしれないという。


 今日は町の宿に泊まるというコンラッドさんを説得して家に泊まってもらう事にする。


 コンラッドさんと父さんは意気投合して、酒盛りを始めた。


 こんなに楽しそうな父さんは久しぶりだ。


 僕のせいで気の抜けない生活が続いているからね。


 本当に申し訳ないと思ってるけど、謝ったら父さんに怒られるな。


 最近、カインは王都の町で何かやらかしているらしい。


 父さんと兄さんがヒソヒソと話していた。


 僕には聞かせられない事らしい。


 そんな風にグレイとカインが国民に対して非道な政治を行うならば、このまま黙っている訳にはいかない。


 何より父上と母上の仇を取りたい。


 翌朝、起きるとコンラッドさんは既に起きていた。皆で朝食を食べる。


「そう言えば、ゴダール国の人は皆赤い髪なんですか?」


 僕はふと疑問に思ってた事を聞いてみた。


「あぁ、この髪の色が珍しいんですね。赤い髪は王族だけです。私は祖先が王族だったので、偶に先祖がえりで赤い髪の子供が生まれるんですよ。そのかわりちょっとくすんだ赤ですが」


 えっ?


 という事はゼフェルさんは王族なのか?


「僕、以前、ゼフェルさんという人に、会ったんですけど、あの人も王族ですか?」


 僕の言葉にコンラッドさんがびっくりしてる。


「ゼフェル・グラナドス様ですか?」


 僕がそうだと頷くと、ゼフェルさんの父親が前国王の弟だと教えてくれた。


 今は亡くなった父親の跡を継いで公爵領を治めているらしい。


 そんなに偉い人だったんだ。


 確かにはっきりと冒険者とは言わなかったな。


 朝食を終えると父さんとコンラッドさんは漁港へと向かった。


 無事に船が着いているといいな。


 ついでに何か魚を買って帰ると、父さんは張り切っていた。



 ******


 漁港に来て、ジェイクと二人きりになったコンラッドは正面に向き直った。


 コンラッドの顔に何かを感じとったジェイクも表情を引き締める。


「フェル君は、前国王の息子のフェリクス王子ですね」


「ご存知でしたか?」


「ゼフェル様から聞きました。髪と右手に魔法で変えられた痕跡を感じたと。国王が代替わりした話も聞いていましたからね」


「それで? ゴダール国としては何をするつもりですか?」

 

 コンラッドの真意を計りかねて、ジェイクは問うた。


「今の国王の評判も聞いていますからね。国交を結ぶのなら長く付き合えるような人物がいいと、国王は仰ってます。その点、フェリクス様なら国王の眼鏡に適うと思います。私はその調査も任されているんです」


「フェリクス様は合格ですか?」 


 コンラッドはコクリと頷いた。


「そうですね。フェリクス様が望むなら、奪還の際はゴダール国が支援をしますよ。最もちゃんと見返りはいただきますがね」


 その言葉に、どれだけ要求されるのか、と顔を引き攣らせたジェイクだった。


 そんなジェイクの顔を見て、コンラッドは大笑いする。


 やがて漁港にゴダール国の船が到着した。



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