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馬耳総論  作者: 馬耳東風
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イリスの正体

 ガメラ3でデビューし、そのビジュアル、設定、アクションで怪獣ファンの心をわしづかみにしたイリス。しかし、細かい設定も、劇中での説明も情報量がすくなく、今一何なのかわかりません。





問題その1:イリスが偶然の産物か、必然の産物か?



 イリスの設定は、ギャオス変異体であります。造形、デザインの段階でイリスに与えられた意匠は、ギャオス、鳥、人、女、貝などです。まさにキメラであり、合成生物です。しかし、ギャオス自体様々な遺伝子を完全無欠の染色体に持つ「超遺伝子獣」です。ギャオス自体に、様々な生物の因子がありますから、どれが発現してもおかしくありません。

 突然変異というには、条件が甘すぎますし、かといって山中で生まれたイリスがなぜ貝や軟体動物の特徴を発現させたのかもわかりません。

 ですが手がかりがあります。卵の形状です。ギャオスの卵は、鳥の様な白い殻で覆われるものでした。しかしイリスは、二枚の殻がパカッと開くという、どう見ても同じギャオスとは言えないものでした。しかも、イリスの卵は一個のみ。ギャオスは一つの巣に複数の卵をうみます。大量発生時も、イリスと同じものはいない。となると、イリスの卵は、「人為的に一つだけが運び込まれた」としか考えられません。

 人為的に持ち込まれ、卵の形状まで変化している。イリスは、人為的に遺伝子に手を加えられた後、南明日香村に運び込まれたと考えるのが妥当でしょう。つまり、イリス誕生は必然だったということです。





問題その2:イリス製作の目的



 なぜ、既存のギャオスの強化ではなく、全く異なる形質を与えたのか。これには、二つの理由が考えられます。

 まず、イリスはギャオスを統率するものの能力があります。イリスがガメラに敗れた際、世界中のギャオスが日本に集結します。これはなぜか。

 飽くまでギャオスは野獣です。生体兵器ではありません。なぜなら、人為的コントロールができないからです。細菌兵器を使用する場合、その最近を無効化するものを準備しなければ、敵より先に全滅しかねないのと一緒で、コントロールできない以上、兵器として成立はしません。そのギャオスが、それぞれの生息地から飛び立ち、一カ所に集まるという行動を見せたのは何故か?

 これは、イリスが関係しているはずです。イリスはガメラと戦っている際も、同族であるギャオスたちに指令を送り、断末魔の叫びの中でガメラの殺害を命じたのだと思います。でなければ、世界中から大群をなし、天敵ガメラを目指すという行為の説明が尽きません。

 また、イリスは人間と交感可能です。つまり、うまくいけば、イリスを中継してギャオスをコントロール下に置くことも可能になります。この役目を勤めるのが、朝倉美都の一族です。

 もう一つは、やはりガメラへのカウンターウエポンの役目です。元々設定画に「ガメラ最終処分用デバイス」という樋口監督の走り書きがみられました。甲殻を最初から持っていたのは、パワーに秀で、プラズマ火球を使うガメラへの対抗のためでしょう。実際、この甲殻で出来た槍で、イリスはガメラを戦闘不能に追い込みました。もう一つの武器は、精神、知能です。これはのちに語ります。





問題その3:守部家の役目



 南明日香村では、かなり古い家に当たる守部家。その役目柄、遠い昔から柳星張の祠を守ってきたのでしょう。しかし、神社の神体の祀り方を思い出してください。

 鳥居をくぐり、洞窟状の社に入ります。そして間もなく行くと神体と言われる石があります。しかし、この神社は柳星張を祀っているはずです。しにも関わらず、綾奈が動かした神体はどう見ても玄武です。

 柳星張は朱雀、つまり鳥なのに、何故玄武が神体なのか?ここから、核心です。玄武の神体を戻した時、綾奈と龍成はもう一つ祀られているものを見つけます。それが、真の神体、イリスです。つまり本来祀っている柳星張です。

 ここでこれらの位置を確認します。一番奥に柳星張、その手前に玄武、そのすぐそばに勾玉です。何故、真の神体である柳星張のそばに玄武と勾玉なのか…。

 玄武と勾玉、そう、これはガメラのことです。ではガメラは、なぜ外界と神体の間に立つのか?

 これは、柳星張は守部家にとって、「祟るカミ」、「呪うカミ」だったのでしょう。つまり、守部家の先祖は卵がギャオス(イリス)のものだと知った上で、呪い封じを行う役目を持った一族だったのでしょう。

 古代人としては、ギャオスの卵はなくしてしまいたいが、下手に関わると魔物が誕生しかねない。しかも、この魔物を信奉する危険な輩もいる。そこで、柳星張を祀るふりをして、自分達の信奉する玄武、ガメラを祀ったのでしょう。さらに、念には念を入れ、玄武の神体にマナを注ぎ勾玉まで備え、柳星張が外に出られないようにしたと言うのが、自分の説です。

 刀自が語った、力自慢が何人集まっても神体を動かせなかった逸話、これは神体にマナが注ぎこまれ、ある程度の意思を持っていたのでしょう。勾玉を添えたのは、マナに自分たちの願いを伝えるために備えたと思われます。刀自に受け継がれる剣は、武器というより、封印ための神器でしょう。そして、綾奈が玄武の神体を軽々と動かせたのは、レギオンとの戦いで、ウルティメイトプラズマ使用によりマナが抜き取られたからだと思われます。





問題その4:イリスの戦略

 気候や環境の変化だけなら、G1時のギャオスと同じ時期にイリスも孵化環境が揃ったはずです。しかし、、そこで孵化できなかったのは、呪い封じのためでしょう。

 しかし、ウルティメイトプラズマ使用後、他のギャオスハイパーが世界中で大量発生しても、まだ孵化しません。しかし、これはイリスの戦略と思われます。

 イリスは、精神感応が可能なタイプのギャオスです。これは、ギャオス派に伝わる伝説的な存在で、朝倉美都がイリスとシンクロを試みたのは、その伝承があったからだと思います。

 まず、イリスは他のギャオス達がガメラに倒される際の怨念を感知します。さらにこれに似た感情を持つ生き物、人間に目をつけ、もっともガメラを倒すにふさわしい人間の感情を探し、それに引っかかったのが綾奈の脳波でした。

 正直言って、現場にいたにしても、綾奈の記憶からくる憎しみは異常です。東京に避難勧告が出たのは、ギャオスが出たからです。いくら、当時小学生の綾奈でも、テレビでギャオスが東京に来たことは知っていたはずです。しかし、綾奈の記憶、悪夢からはギャオスの姿がありません。ガメラだけでなく、ギャオスも関わった事故であるにも関わらずです。

 渋谷の惨状を見ても、ギャオスに対する感情が全くありません。まるでその姿が見えていないかのように……。

 南明日香村に来た時点で繰り返される悪夢をみても、綾奈は既にイリスの精神操作を受けていたようです。いくら現場にいなかったとはいえ、弟がしっかり前をむいて生き始めているのに、まるで中二病の様で、自己中心的な態度も隠そうとしません。郷に入らば郷に従えではありませんが、数年もたってもあの苛められぶりは異常です。これも、実はイリスのせいで村全体が綾奈を孤立させるように仕向けていたのではないかと思います。

 守部家の人間や、大学で外にいる時間が長い日野原茂樹以外、異様なまでに冷たいあの態度は、いくらなんでも行き過ぎです。田舎といえど、横溝正史の時代じゃありません。

 そう思った決定的出来事は、綾奈の神体持ち出し事件です。普通、女子中学生が、いじめだからといって神社の神体を持ち出せなんて考えつきません。普通ビビります。速攻でばれますし、ただじゃすみません。やはり、ここにもイリスの影がちらつきます。遂に自分の所に辿り着いた綾奈に、後は自分の邪念で歪ませた勾玉を持たせれば、準備完了です。

 動物たちの遺伝子を吸い取り、自分の体を進化させ、綾奈とも精神融合を果たし、さらに肉体融合を果たすことで、人と関わりを断ちきったガメラを超える進化を狙います。

 最後に、自分が殺した者たちのビジョンを見せ、朽ち果てたガメラの姿と一緒にギャオスの姿がある真の夢の再現を見せることで、悪夢を含むすべての種明かしをするのは、もはや、比良坂綾奈という人格は必要なく、ただ、人間の神経系統というパーツが必要なだけです。悪夢のからくり、殺害した人物の断末魔の表情、すべてがイリスに弄ばれていたことを知り、自我を崩壊させながらイリスに吸収されそうになった綾奈を救ったのは、死んだと思われたガメラ。自分の強化を優先してしまったイリスの致命的なミスです。


 割に合わない行為をしたガメラ。それは、自分が殺した人間の怨念から逃げず、それでも地球とともに生きていく姿を見せることで、綾奈に償いのための人生を与えたのではないかと思います。


「ガメラは一人じゃない」


 それは、ガメラを憎む者や信じる者と一緒に、ガメラとともに罪を背負い悔い改めながら生きる者もいる。そんな風に聞こえました。最後の言葉を、浅黄ではなく、綾奈に言わせた意味は小さくありません。




http://www5.hp-ez.com/hp/namomihagi/page15/11

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こちらの自己サイトにも掲載しております


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