第32考.先生や上司に「死ね」と言われたら死ぬのか?
小学生か!
※noteにも転載しております。
小学生のころ、先生や親の言うことをかたくなに守る子へ。「先生や親が死ねって言ったら死ぬのかよ」なんて、なじることばを聞いたことがあるかもしれません。
大人になっても、職務の上司の指示だからと、それにひたすら従う人間を「上司が死ねと言ったら死ぬのか」と、非難することばもあると思います。
結論から言いましょう。
☆死にません!!
……あたりまえ?
でも、ここではその「あたりまえ」を、あえてきちんと考察してみたいと思います。
【設問】
上司が「死ね」と言えば死なねばならないのか?
【事例】
上司からの「死ね」という指示に従わなかったため、職場を解雇された人間が、不当解雇による無効の訴えを起こした
このときのポイントはふたつ
①「死ぬ」ことが、職務の範囲にあるかどうか?
②「死ぬ」ことを職務の範囲に規定することが、できるかどうか?
① 「死ぬ」ことが、職務の範囲にあるかどうか?
そもそも、職務の範囲内にあるものしか、指示に従う必要はありません。
職務遂行時の服装や職務外での禁止事項など、「職務に関連する」ものごとに拘束力がある場合もありますが、そこもそれの延長です。雇用契約の締結や更新時に確認・同意することによって、従う必要がうまれます。
で、こうして雇用契約のもとに職務を果たしたり、ふだんの生活をしているなかで。
上司からの、「死ね」と言う指示に従わなければならないという根拠になる規定は、通常ありません。ていうか、ないはず。
完全に権限をこえた指示です(だから、あたりまえだってば)。
じゃあ、そんな指示は守らなくてもいいよね!
②「死ぬ」ことを職務の範囲に規定することが、できるかどうか?
じゃあ、「上司の指示は、死ねというものであっても守らなければならない」と規定されていたら、死なねばならないのか?
この場合、そういった規定じたいが無効となります。
基本的人権の尊重や公序良俗(公の秩序と善良な風俗)という、より上位の規範に反するためです。
たとえば、刑法で罰せられるような行為を自由に行えるように規定した、世紀末な学園や職場があったとしても、それは許されないでしょう?
そういったものが許されるのは、フィクションのなかだけなのです。
【判決】
①②より
不当解雇により無効となります
【結論】
上司が「死ね」と言っても、死ななくてもよい
おわかりですね?
先生や親、兄姉とか先輩などのばあいでも同様です。
え?
こんなあたりまえのことをたしかめて、なんの意味があるのかって???
たしかに「あたりまえ」ではあります。
けれども「死ね」という指示ではなくても。
法令や公の規則に反した上司の指示に従って、より上位であるはずの規範を破ってしまい、問題になることが世間にはあって。新聞の一面を、しばしばにぎわせているのはご存知かと。
「死ね」と言われても死ぬ必要がないように。
より上位の規範に反する指示には、従わなくていいどころか、従ってはいけないのです。
そして、上司の側も、そんな指示に従わせてはなりませんし、そういった指示を出してもいけません。
コンプライアンス(なに、それ? どんな天ぷら?)に厳しいと昨今だからこそ。
きちんと、それを肝に銘じておきたいですね。
小学生には難しそう(笑)




