第13考.なにが好き？ どれが好き？

「なにが好き？」「どれが好き？」

　会話の中で、相手の好みについて尋ねるのはよくあることでしょう。

　ただ、この質問。

　素朴に、好きなものを尋ねられた場合と。より趣味や嗜好的な、好みを尋ねられた場合とで。答える側の姿勢が変わってくることが、あるように思うのです。

　つまりですね、

① 素朴に、好きなものを尋ねられた場合

　単純に好きなもの、第１位を答えればいいでしょう。

② 趣味や嗜好的な、好みを尋ねられた場合

　単純に好きなもの、第１位を答えるよりも。

　他者のつけた順位と比較して。自分のつけた順位が、より上位に位置しているであろうものを、答えることがありそうです。

　第２位や３位。あるいは５位以下でも。他の人間なら、もっと下の順位をつけていそうなとき。

　自分も含めて、多くの人間が第１位にしているものよりも。そちらを答えたほうが、回答として相応しいこともあるでしょうね。

　また、公約数的な「好き」ではなく。独自のポイントや採点基準で「好き」なもの。

　第２位以下でも、それを答えることは自らの嗜好を表示するのには、適当な回答です。

　逆に、第１位であっても。さらには、大多数の人間が、第１位とするものであっても。

　自分が第１位とした理由が、公約数的なものではなく。嗜好や、こだわりによるものだとしたら。

　ありきたりの回答に思われようとも、その第１位を答えればいいのです。

　公約数的な「好き」を答えても。「好き」か「好きでもない」「嫌い」くらいの、情報にしかならないこともあるでしょう。

　そんなとき、順位は下がろうとも。自分の嗜好の指向を示す回答を選ぶのは、相手の質問の意図にも適うものではないでしょうか。

…「嗜好」の「指向」って。

　この次は、同音異義語についてにしましょうか。