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哲考所  作者: 歌川 詩季
13/43

第12考.先入観を偏見にしないために

 前回からの、続きです。

 まず、ここでの「偏見」とは。

 差別的なものをさすのではなく、もっと広義の。単なる「偏ったものの見方」くらいに、捉えてください。

 不当な差別を助長・擁護する意図は全くありません。



 さて、引き続き、先入観のお話です。


「先入観」と「予断」が、いかに有用な「事前予測」「経験則」となりうるとはいえ。それがすなわち「偏見」となる危険性を、否定するというわけではありません。

 前回で述べたように「決めつけ」をするのではなく。

 実際の状態・状況から公平に。、それを修正・訂正し、正確さを向上させる判断が必要となります。


 ここで、最も危険なもの。それは


「傾向」の「一般化」


です。


Aという集団には、aという傾向がある


としましょう。

 このとき、この命題は紛れもない事実を示しています。

 具体的な例で考えてみましょうか。


この町の人間は、リンゴが好きが多い


 これをきちんと「傾向」と捉え。アップルパイの店を開くとしたら、それは理にかなった考えに思えます。

 だからといって。町の人間、みんながみんな、リンゴ好きだと決めつけてはいけません。リンゴが、苦手なひとだっているでしょう。

 このとき


Aという集団は、みんなaである


この町の人間は、みんなリンゴが好きである


 これは、事実ではありません。


リンゴ好きが多いという「傾向」

→ あくまで「統計」として正しい

みんなリンゴが好きという「決めつけ」

→誤った「一般化」


なのです。


「傾向」は「統計」や。ひょっとすると数字によらない、肌で感じた「感覚」かもしれません。

 どちらにせよ、適切に使えば有用なものです。

 しかしながら。それをむやみに「一般化」してしまえば、それは「偏見」になってしまうことでしょう。


「一般化」してしまう危険性に注意をはらい、「統計」として武器にする。

「先入観」を「偏見」にしないためには、それが必要なのではないでしょうか。



 ちなみに


「むやみに」「一般化」しない


と述べてきましたが。

 この「むやみに」とは。


 仮想モデルとして、その「傾向」を盛り込んで「一般化」した人間像を設定するような場合。

「統計」に基づいて、その集団における「一般像」を、フィクションとわきまえてつくりあげ。

 それを対象に考察を行う場合。きちんとフィクションであることを、前提にできるのなら。そのような仮想的な「一般化」は、差別に繋がらない配慮は必要ではあるものの、立派な技術だと考えるためです。



 とはいえ。


 誤った「一般化」を避けて。「統計」による「傾向」に過ぎないと、分別をつけるのは難しいでしょうし。

 たあいない「先入観」を「統計」上もたれることを、差別と捉えられることもあるはずです。

 かといって「先入観」を排除した考えかたを徹底することは、ふつうの人間には困難ですよね。


 われわれにできるのは「一般化」の危険性を、忘れないよう心がけて。

 差別と捉えられないように、細心の配慮をもって。

「統計」としての「傾向」を、適切に運用するよう努力するしかないのでしょう。


 どうせ排除しきれない「先入観」なら。

 排除しきろうとする、無駄な努力より。

 ある程度以上は、諦めて。残りの労力は、有用かつ適切に使うための努力に費やすのが、得策ではないのでしょうか。

 適切にやるのが難しいから、問題になるんでしょうけど。

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