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第二十三話 買い物-リベンジ-

 朝起きてからはいつも決まっている。

 早朝トレーニングを受け、シャワーを浴び、そして朝食をとる。

 なんとも健康的でほのぼのとした日々を俺は送っていた。

「本当に平和だねー」

 爛さんは道場で素振り、阿冶さんは台所で家事、クロは廊下で日向ぼっこ。

 三者三様いつも通りの過ごし方をしている。

 これだけみたら、皆が異種人なんて信じられない程だ。

 本当に平和だ

 阿冶さんの暴走もあれから起こっていない。それどころか、あれから吸血すらしていない。

 最初は、阿冶さんが遠慮しているのかと思って俺から声を掛けていたのだが、そう言うわけではないらしい。どうやら俺が思っているほどの頻度で吸う必要はないみたいだ。これなら、永遠が言っていた心配事も取り越し苦労になりそうだ。

 それでも変わった事もある。まず、吸血鬼の特性が強くなった事によって、日差しに少し弱くなってしまった。長時間の日差しを浴びると貧血のようにフラフラするようで、外出は日傘を使わないといけなくなった。また、夜になるとたまに永遠が現れるようにもなった。

 因みに、爛さんとクロも永遠には会ったらしく、最初に会った時の誤解は解けているらしい。

「……夏樹」

 クロが、ゴロンと転がって居間にいる俺に話しかけてきた。

「あはは。クロ、顔に床の跡がついているよ」

 クロは、俺に指摘されて自分の顔についた跡を袖で拭った。

 そんなんじゃとれないよ

 微笑ましい光景を頬杖をついて眺める。

「暇なの?」

「そうだな。暇なんだよな」

「それならお出かけでもしませんか?」

 阿冶さんが家事を終えて話に入ってくる。

 買い物か……

 前回は、あんまりうまくいかなかったんだよな。目的もなく、皆の好みも分からず、その上で爛さんとトラブルを抱えて

 腰を上げるには少々重かった。

「なんだ? 出かけるのか」

 濡れた髪をタオルで拭きながら爛さんが居間にやってきた。

「えーっと」

 三人を見るも、皆一様に俺の様子をうかがっているようだった。

 俺に委ねるってことね

 つってもなー

「………!」

 あっ、いい事思いついた。

 三人の顔を見ていて俺は思いついた。

「行こっか。買い物」

 そういうわけで、俺たちは買い物に出かけることにした。



「まったく、学習しない人だな」

 俺が悪態をつくのは、爛さんにだ。

「だってよー」

「だってじゃないですよ。また、あんな格好で出かけようとして」

 案の定、前回同様爛さんはいつものはだけた和服で出かけようとした。もちろん、前回同様出かける間際に阿冶さんに連れていかれて無理やり着替えさせられた。

 俺と阿冶さんに責められて爛さんは、唇を突き出して不満そうな顔をする。

「……夏樹。今日は何を買うの?」

「そうだなー。まだ秘密かな」

「何にも考えてないんじゃねえの」

 さっきのお返しとばかりに爛さんは俺の顔を覗き込んで言ってくる。

「フッフッフッ、それはどうかな」

 実は、今回はしっかりと目的があってきている。

 というのも、三人を見ていて思いついたのだが、まぁ行先は着いてからのお楽しみというやつだ。

「なんだよ、教えろよー」

 爛さんは、俺の腕にしがみついてくる。

 む、胸が

 その豊満な胸を大胆に押し付けてくる。

「ちょっと、爛さん公衆の面前でベタベタくっつかないでくださいよ」

「いいじゃんか。お前とあたしの仲だろ」

 勘弁してくれよ

 唯でさえ美少女三人連れているだけでもそれなりに注目を浴びているのに、これじゃあ一層視線が辛い。特に嫉妬や憎悪のようなそんな視線を周囲の男性陣からビシビシと感じる。

 それに、俺自身も限界が

 顔が次第に上気してくる。

 そんな俺を察してか、

「……爛、夏樹にくっつきすぎ」

 反対サイドを歩いていたクロが俺と爛さんの間に割って入ってくる。

 ナイス! クロ

「何すんだよ、クロ」

「くっつくと夏樹が困る」

「へー、その割にはクロも十分くっついているみたいだけどな」

 気づくとクロは俺の手をギュっと握っていた。

 いつの間に

「……知らない」

 クロは、可愛らしく爛さんから顔をそむける。

「まぁまぁ、クロは――」

「同い年!」

 そうでした

 つい、見た目で錯覚してしまうがクロは俺や阿冶さんと同い年だ。

 爛さんだけでなくクロからの視線もさらに受け、耐えきれず逆方向を向く。

 すると、

「夏樹さんはくっつかれると困るんですか?」

 今度は、阿冶さんが心配そうに覗き込んでくる。

 本当に純粋というか。真に受けているというか。

 とにかく、近いです。近いですよ。阿冶さん

 一歩間違えれば唇が触れてしまいそうだ。

「いや、過度じゃなければそうでもないですよ」

「夏樹。今の阿冶は過度に含まれないのか?」

 茶化すように爛さんが言うと、阿冶さんは自分の体勢に気づいたのか顔を赤くして離れた。

「爛さん!」

「良かったな夏樹」

 この人は

「それより夏樹――」

「今度は、なんですか」

 俺が少々ふてくされて聞き返すと、爛さんはクロの頭上から俺の耳元に顔を近づけて囁いた。

「公衆の面前でってことは、二人きりだったら抱き着いてもいいのか?」

「なっ! 爛さん!」

「冗談だよ。冗談」

 その割には、いやに声が色気を帯びていたような気がするけど



 ともあれ、俺たちはショッピングモールに辿り着いた。

 そして、最初に向かったのは洋服店だ。

「本当にちゃんと考えてたんだな」

「だから、言っているじゃないですか」

「爛さん爛さん、こっちに来てください。せっかく来たんですから外出用の服を選んであげますよ」

「えー、めんどくせー」

「いいから! クロちゃんもどうですか?」

「……見たい」

「夏樹さんは――」

「俺は、目的があるんでいいですよ。皆で楽しんできてください」

「そうですか? 分かりました」

 三人は、一緒に服を選びに行った。

 ほんと仲が良いな

「っと、俺も探さないと」

 俺は、洋服店をぐるっと見て回って目的のものを探す。

「おっ、あった」

 ……これがいいな

 俺は、多く並ぶ商品の中から一つの商品を手に取ってレジへと向かった。

「阿冶さん。そっちは終わりました?」

「すいません。爛さんに合うサイズがなかなか無くて……」

「胸がつっかえるんだよ」

 アハハ……なるほど

「ちょっと爛さん! 折角濁したのに」

「いいじゃん。夏樹だし」

「どういう意味ですか!」

 結局俺も交えて爛さんの服選びをした。



 それから、小物屋、スポーツショップと周り、お昼休憩に前回同様にフードコートに行って昼食を食べた。

 俺は、三人を席に待たせてデザートを取りに行っている。

 確か、あの時はコレとコレとコレだっけか

 ショーケースに並ぶケーキを曖昧な記憶で選んでいく。

 席に戻ると三人は楽しそうに談笑していた。

「お待たせ」

「おー、悪いな夏樹一人で行かせて」

「いえいえ、俺が一人で行くって言ったんですから」

「これ、前にクロが選んだのと一緒……」

 そう、俺が選んだデザートは、チョコ、イチゴショート、ベリーチーズ、フルーツの四種類。前回クロがトレーに乗せて来たものと同じだ。

「この間食べた時おいしかったからさ」

 っていうのは建前で、本当は前回爛さんが食べられなかったからである。

 今回俺が買い物に来ようと思ったのは、皆を楽しませるためっていうのもある。前回楽しませられなかったから。特に爛さんには楽しんでほしかった。

 前回同様、クロがベリーチーズ、阿冶さんがチョコ、俺がイチゴショート、そして爛さんはフルーツと取り分けた。

 爛さんは一口食べる。

「はむっ……これは、うまいな!」

 そして、立て続けに二口三口と食べいき一番に完食した。

 よかった

 阿冶さんやクロも楽しそうに食べている。

 今日の計画は成功だな

 俺は、しばらく三人を眺めてからデザートを食べ始めた。

こんにちは五月憂です。

今回は、夏樹たちが二度目の買い物へ。

前回とは違ってそれなりに三人の事が分かり始めた夏樹。

どうにか、皆を楽しませられているようですね。

次回は、この続きです。

最後になりますが「突如始まる異種人同居」を読んでいただきありがとうございました。

今後とも「突如始まる異種人同居」をよろしくお願いします。

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