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見習い女神、ただ今職場体験実施中  作者: 鈴木 澪人


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 カタゴトカタゴト、馬車に揺られてエメリアと両親は教会へ向かった。

5歳の誕生日を迎えたので魔力鑑定をすることになった。


「お母様、魔力鑑定って痛い?」

エメリアは魔力鑑定の方法を知らなかったので母親に尋ねた。


「いいえ、球体に手を乗せるだけだから痛みはないわよ」


エメリアがソワソワしながら聞いてくる姿が可愛くてアマリアは思わず微笑んでしまった。


「ライラも魔力鑑定したの?」

エメリアの専属侍女のライラにも確認をする。

いつもは、使用人用の馬車か御者の隣に乗っているけど今日は、少しでもエメリアの不安を取り除くために同じ馬車の隣に乗ってもらった。


「はい、私も一応貴族なので教会にて鑑定をいたしました」


「そっか~。じゃあ大丈夫かな?」


いつも姉の様に慕っているライラが大丈夫と言うのだから大丈夫なのかもとエメリアは思うことにした。


そんな現金な態度のエメリアをみながら父親は小さく息をつきながら


「エメリアはいつもライラの言葉は素直に聞くんだね~。不思議だよ」


と苦笑いをしながら声をかける。

エメリアは父親の方を見ながら


「だって、ライラの言葉はいつもここで『正解だよ』って聞こえてくるような気がするの」

と言いながらエメリアは胸のあたりを両手で添える。


「エメリアお嬢様...。」


ライラは涙ぐみながらエメリアの方を見た。


「ライラもエメリアにはメロメロですものね」

アメリアも少し呆れながらまるで姉妹のような二人をみて微笑ましく思った。


「私はこれからもエメリアお嬢様のお傍にずっといますからね。なんでもおっしゃってくださいね」


「うん!手をつなご!」


「はい!」


2人は馬車の中で手をつなぎながら教会の事について話し合った。


 教会に着くと神父達が出迎えてくれた。


「ようこそシュテイラー教会へお越しくださいました」

優しそうなおじいちゃんはシュテイラー教会の神父長だった。


「ああ、忙しいのに出迎えてもらってすまない」


「こんにちは!神父長様」


エメリアもきちんと挨拶をした。

神父長は目を細めながらエメリアの頭をそっと撫でると


「エメリア様もお元気そうで何よりです。きっと、女神様のご加護のおかげですね」


「はい!女神様のおかげです!」


「さあ、魔力鑑定の前にお祈りをさせてもらうよ。」


ルードルフは神父長に伝えた後、祈祷室に案内してもらった。

普段は集会などが行われる場所でお祈りをしているが、領主の家族は個室でお祈りをすることになる。領民を代表してお祈りをする儀式も時折あるのでその度に入場制限をかけるのはルードルフ的にも領民に申し訳ないと考えているからだった。


「では、私たちは神父長のお部屋で待っているからエメリアはきちんとお祈りしてくるんだよ」


「はい!でも、ライラも一緒に行くのはダメ?」


エメリアは少し怖くなったので父親に尋ねた。

ルードルフは神父長に確認すると


「そうですね。エメリア様がお一人になられるのも防犯上よくないので侍女の付き添いを許可しますよ」


「ありがとうございます。神父長様!」

エメリアは嬉しさのあまり満面の笑みで神父長にお礼を言った。

神父長は、うんうんと頷いた後、エメリア達を祈祷室に連れていくように部下に指示を出した。


「エメリア様、こちらでございます」


部下の神父の後をエメリアとライラがついていった。

シンプルなドアの前に案内されると


「私はここでお待ちしております」とお辞儀をしながら言われたので、エメリアはライラと一緒に部屋に入った。


教会の祈祷室は自分の邸にあるものとほぼ似たような造りになっていた。

いつもは母親と一緒にお祈りをしていたが、今日は一人で(ライラが付き添いでいるが)お祈りするので少し緊張した。


小さい体で一生懸命お祈りをしようとするエメリアの背中を見て一つ頷いたライラが


「わがしゅごしゃであり、めがみであるエレニさま...。」


エメリアが両親から教わったお祈りの言葉を聞いていたが。


 今日が、『エレニ様に戻ってもらう日』と決めたライラがそっとエメリアの傍に行くと


「エメリアお嬢様、少しお祈りの言葉を変えましょうか?」


と声をかけてきた。


「えっ、いつもこのお祈りをお母様と一緒に言ってるよ?」


「はい、そうですね。ライラもエメリア様がいつもお祈りをしているお姿を見ていますので知っていますよ。」


ライラの言いたいことが理解できずエメリアは首をかしげている。


「エメリアお嬢様、ライラをご覧ください」


ライラの言葉にエメリアは素直にうなずきライラを見つめる。

ライラは目をつぶり小さく何かを呟くと、内側から光があふれだした


「ライラ、眩しいよ」

少し怖くなったエメリアはライラに抱き着いた。ライラもすぐに目を開けてからエメリアを抱きしめ返した。


『エメリアお嬢様、もう目を開けても大丈夫ですよ』

ライラの言葉は聞いたことがなかったが、言葉の意味は理解できた。


そして、エメリアは目をそっと開けると目の前には天使(ライラ)が自分を抱きしめていた。


「天使様?」


ライラはニコリと笑いながら頷いた。


『はい、あなたの天使()()()ですよ』


『ライラ...。』

エメリアは無意識に神語でライラの名を呼んだ。


その時、今まで眠っていた昔の記憶(神の世界)が流れるように頭に入ってきた。

あまりの情報量にエメリアは眩暈を起こしそうになった。


『大丈夫ですか?()()()()


ライラが心配そうに名を呼ぶと


『えっ木から落ちたんじゃなかったの?』

少しパニックになっていたのでライラは背中をそっと撫でた後


主神様(お父様)にお尋ねになられる方がよろしいかと』

と言った後、膝をついて頭を下げた。


『ちょっと、待っててね』とエレニはライラを楽な姿勢に戻した後、改めて祈りの言葉を言い始めた。


『我が神であり、父である主神よ。我が声を聞き入れてください。』

エレニが最後の言葉を言い終える前に...。


『エレニ~。5年ぶり!!元気だった?もぅ、父様心配で心配で...。ライラも全然エレニの記憶を呼び出そうとしないし、リゴリ(母様)は心配しすぎて私に少し八つ当たりするし...。』


『主神様、少し落ち着いてください』


ライラが呆れながら主神をなだめると


『ライラ、遅い!遅いよ!』

主神がプリプリりながらライラにクレームを出した。


『しかし、あまりに幼い内に記憶を呼び戻しますと混乱してしまう恐れがあると判断しました。このタイミングにしたのは魔力測定もありますし、エメリアお嬢様としても落ち着かれたからです。』


ライラの説明に主神は渋々納得した。


『そうですね。確かに今でもまだ早かったかもと私も思いました。木から落ちた時は人族としては10歳前後の精神状態だと思います。しかしどうして、私は人族の世界にいるのですか?』


エレニは主神に尋ねると


『ああ、それは、お前があまりにも人族の生活に興味を持つのから少し早めに人族の世界を体験させるようにしたのさ。本来ならもう少しこちらで女神教育をしなければいけなかったからその分エレニや兄のソルに教えてもらうんだよ』


『お兄様ですか?』


『ああ、隣の領で学んでいるよ(生活)。エレニの婚約者のお兄さんだよ』


『え~、アル兄様が本当の兄様だったなんて!』


『主神様そろそろお時間が』


ライラはお祈りの時間の終了を告げる。


『そうだね。あまりに長いと(神父)が来てしまうね。とりあえず、今日の魔力測定では少しだけ聖魔法ができるようにしておくから、それ以上の力は使ってはいけないよ。エレニの地域は母様が管理しているからね。怒られるのはエレニと()だからね!』


『はい、分かりました。人族と共にこの領で生活し実際にどのように生きているのか見守っていきたいです。』


エレニの決意を聞いて主神は安心したのか『うん、がんばるんだよ』とつぶやいた後祈祷室から消えた。

残された、エレニとライラは再び目を合わせた。ライラは再び、天使から侍女に戻った。


「さきほどまでは、神語を話していましたが、ここからは人族の言葉でお話ししますね。エメリアお嬢様は今は5歳です。少し大人びた原因は魔力測定が原因としましょう。」


「うん、わかったわ」

「お話ししなければいけない内容はたくさんありますが、とりあえずこのまま魔力測定に行きます。何も考えずに水晶に手を触れるだけで主神様が上手くやってくれると思います」


「フフフ、父様らしいわね」


ライラは再び膝をついた後


「私はエメリアお嬢様の乳姉妹としてずっとお傍におります。なんなりとお申し付けください」


ライラの言葉はすごくうれしかったエメリアだったが


「ちなみに、ライラって人族では幾つなの?」


ライラは微笑みながら


「はい、12歳でございます」


「そっか~、今までずっとそばにいてくれてありがとうね。そしてこれからもよろしくね。あと、申し付けないから!」


やんわりと拒否されたライラは背中を落とした。


「そうでございますよね...。」


「うん、いつも通りでおねがいね」


「はい!」

そういうとライラは立ち上がり


「それでは、魔力鑑定へ行かれますか?」

と言いながら手を差し出してきたのでエメリアは手をつなぎながら


「うん!」と言って祈祷室を出た。


そのまま神父長の部屋に戻ると皆に長いお祈りでしたね。と感心された。

主神(父親)と話していただけですとは言えなかった。


「それでは、エメリア様この水晶にお手を触れてもらえますか?」


神父長の言葉にうなずきながらそっとエメリアは水晶に触った。


すると綺麗な白い光がほのかに輝いた。

神父や両親から感嘆の声が漏れる。


「おめでとうございます。エメリア様は聖魔法の素養があります」


「せいまほう?」


エメリアは知らないふりをして神父長に聞き直した。


「はい、聖魔法を使えるということは女神様の覚えがめでたいという事ですね」


エメリアはライラをチラリとみると、パチンとウインクをしてくれた。


 本当に聖魔法が使えるようになったんだ~。

とエメリアが感心していると。


「神父長様エメリアは教会預かりになるのでしょうか?」

母親が心配そうに確認した。


「いいえ、エメリア様はシュテイラーのご領主になるお方です。それに基本的には強制はできません。まあ()()()()()をすることはありますけどね」


ホッホッホ。と笑いながら答えてくれた。


確かに、領主が教会に行って領民たちの生活に影響が出たとなると問題が出てくるのだろうとエメリアは考えた。


「でも、神父長様、私はなるべくがんばって教会に通いたいと思います。」


エメリアは神父長に宣言すると神父長も喜んで


「はい、いつでもお待ちしております」


と伝えた。


 それから、エメリアと両親とライラは家路についた。


エレニが本格的にシュテイラーで自分たちの領民(女神の子)と共にする生活が始まった。



 その日の夜はライラと二人で一緒に眠りたいと両親と乳母にお願いをした。

魔力鑑定をがんばりもしかすると夜にその魔力で体調に異変が生じる可能性もあるので、大人たちは快諾した。


ベッドの上にエメリアとライラがちょこんと座った。


「エレニ様と同じベッドに眠るなんて...。ライラは嬉しいです!」


ライラの感情が高ぶり思わず体が光だし天使に戻ろうとしだした。


「ライラ!駄目だよ!お父様にも言われているでしょ」


エメリアはライラを落ち着かせるために背中をポンポンと叩いた。

ライラは胸に手を置いてから深呼吸を何回かした後、光を収めることができた。


「それとね、私の事はたとえ二人でも『エメリア』って呼んで欲しいの。だって、もし誰かに聞かれたら二人とも怒られると思うのよ」


「そうですね。ついつい、真名で呼んでしまいます...。」


ライラの気持ちが嬉しくてフフフっとエメリアは微笑んだ。


「うん、その気持ちだけもらっておくね。だけど、私は、今エメリア・シュテイラーよ。」


「はい、エメリアお嬢様」


ライラの返事にうんうんと頷いた。


「さて、明日から領民の生活を見に行かなくちゃいけないし。今日は早く眠りましょ」


「えっ、エメリアお嬢様...。それは」


ライラは話しかけようとしたがエメリアは既に眠りについていた。


 次の日エメリアは早速母親に領地を()()見に行けるか聞きにいった。


「お母様、領地を見にお外に行ってもいいですか?」


朝食の後のお茶を飲んでいた母親はニコリと微笑みながら


「エメリアには少し早いと思うわよ。」


とすぐに却下されたのだった。


「では、お父様にも...。」


「エメリア...。私もお母様の意見と同じだよ?」


と隣で同じくお茶を飲んでいた父親にも却下されたのだった。


「でも、ライラも一緒に付いていってくれるし少しだけでもだめ?」


エメリアの言葉を聞いたライラは小さく会釈をしたが


「ライラもまだ小さいでしょ。二人で出かけたら迷子になっちゃうわよ?」


「そうだね。エメリアがもう少しお姉さんになったら考えることにしよう」


両親の二度目の却下に落ち込みながら自分の部屋に戻ったエメリアだった。


「ライラ、どうして領地を見に行けないのかしら?」

エメリアの少し後ろを歩いていたライラがエメリアにだけ聞こえる声で


「お嬢様、実は私も昨日無理なのでは...。とお伝えする予定でした。」


「えっそうだったの?」


「そうですね...。ご主人様の許可がでるまで、色々学んでからでも遅くないとおもいますよ?」


「そっか、ライラがそういうのなら先に座学を片付けようかな」


「はい、さすがエメリア様です!」


と二人で会話をしながら部屋に戻っていった。



ライラはエレニ様と呼びたかったのですが、ややこしくなるのでエメリアと呼ぶように言われました。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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