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見習い女神、ただ今職場体験実施中  作者: 鈴木 澪人


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今回短めです。

そして、不定期更新になります。

 ローザを見送ったエメリアは同席していた皆にとりあえず場所を移動しましょうと声をかけた。そのまま教会関係者に挨拶をして馬車に乗り込んだ。

馬車の中は行きとは違い静まり返っていた。

理由は簡単だった。一番元気だったエメリアが考え込んでしまっていたからだ。


先ほどの治療が理解できない。

エメリアの中での治療と言うのは、領民に対して行っていた行為だ。

具合の悪い相手と会話し治療する。

しかし、高貴な老人の治療は違った。


「あれじゃまるでローザ姉さまを...。」


エメリアは口元を押さえながらギュッと目を瞑った。

テオバルトもエメリアになんと声を掛けて良いのか分からなかった。

心配そうにそっと背中を支える。


「これは、教会を調べる必要があると思う」


気を取り直したエメリアは握りこぶしを作って決意表明をする。


「私はまだ子どもだからできることは限られているけど、もし両親がこのことを知らないのだったら知らせる必要はあると思うわ」


では、私は教会の周辺を軽く調べてみますね。

ライラはニコリと微笑みながら答えた。


「うん、ありがと。でもあまり無理をしないでね」


エメリアもニコリと微笑んだ。


馬車はそのままエメリアの邸に着いた。

テオバルト達は、少しお茶を飲んで休息を取った後自分の領に戻っていった。


夕食後エメリアの両親はいつものように別室でお茶を飲みなおそうとした時に


「お父様、お母様少しお話しがあるのですが」


いつもならエメリアは自分の部屋に戻る段取りだったが珍しく両親に声をかけた。


「まあ、どうしたの?そういえば今日はテオバルト君と一緒に教会に見学に行ったのよね」


「その時に何かあったのかい?」


「はい、少しお話ししたいことがあるんです」


両親はお互いを見た後


「じゃあ、付いておいで」と父親に促され普段は入らない部屋に通された。


その部屋は大人の娯楽室のような扱いだったらしく、ボードゲームや台の上で球を突くような大型な遊具もあった。

いつものエメリアなら飛びついて質問攻めになるところだったが今日はすぐに指定されたソファーに腰をかけた。


三人分の飲み物を用意したアグネスがエメリアの母アマリアの背後に待機し、エメリアの背後にはライラが待機した。


「じゃあ、エメリアが今日見てきたことを教えてもらおうかな?」


父親の優しい問いかけにエメリアが頷いた後、ローザが老貴族に対応した内容を説明した。


「ということなんです。私は、ローザお姉さまのお仕事をあまり詳しくは分かりませんが少し違和感を感じました」


始めは優しい表情でエメリアの話を聞いていた両親がローザの話を聞き終えた後は複雑な表情に変化していた。普段は貴族として表情を変えることはしないが家族間では別だった。


父親は考え込むように片手で顎を乗せた。母親はライラに向かって「そうなの?」と確認する。


ライラは「エメリアお嬢様のおっしゃる通りでございます」と答えた。


「とりあえず、内密に教会を調べてみることにするよ。エメリアはこの件に関してはもう関わってはいけないよ。ここからは大人の仕事だ。」


そういった後父親は席をたちエメリアの近くに行くと目線を合わせるために腰を落とし


「でも、ローザの事を話してくれてありがとう。解決したら話せる範囲で教えるから今日はもう自分のお部屋に戻りなさい」


父親はそういうとライラにエメリアを部屋に連れていくように伝えた。


 エメリア達が部屋を出た後、父親のルードルフは家令を呼び先ほどの話の信憑性を確かめた。家令は厳しい表情をしながら


「確かに、何件か告発や相談という形でローザ様のお話が上がったことがあります。」


家令の言葉にルードルフは眉をひそめた


「どうして私の所に報告が入っていなかったんだ?」


「はい、ローザ様のご両親がご当主に報告するまでもないと言われまして」


「イザークが口止めをしたのか?」


ルードルフは驚きながら家令に確認すると


「それが…イザーク様ではなくイーリス様が…」


「…そうか。この話の続きはまた明日することにしよう。夜遅くまで付き合わせて悪かったね。さあ、アマリア夜も遅い寝室に行こうか」


「はい。分かりました」


アマリアも微笑むことしかできずルードルフの言葉に従った。




 翌朝、エメリアが朝食を取る為に食堂に向かうと両親はすでに揃っていた。

昨日の事は無かった様にいつもの優雅な朝食を頂いた。


エメリアとライラは自室に戻った。今日は珍しく何も予定が入っていない。

昨日の領都訪問で疲れたと思い予め休みを入れてくれたようだった。


エメリアはソファーに座り、ライラはお茶の準備をしていた。

そのお茶を飲んだ後


「ねぇ、ライラ」


「はい、エメリアお嬢様」


「私っていくつになったら自由に外に出ることができると思う?」


エメリアの質問にライラは困りながら


「急ですね。どうかされましたか?」


エメリアは言葉を選びながら


「せっかくこちらに来ているのに私何もできないな~って思って」


落ち込んでいるエメリアを見たライラはソファーの前に跪きながら、エメリアの手をそっと握り


「…。確かに昨日のローザ様の件は、今のエメリアお嬢様ご自身では解決することはできません。だって、まだエメリアお嬢様は7歳なのですから。人族の7歳というものはもっといっぱい遊んでいっぱいご両親に甘える時期なのですよ。」


「そうね。ライラの言う通りだわ。私は女神としての知識はもっているけれどまだそれを実践するには幼すぎるということね」


「こうして甘えるという経験もエメリアお嬢様にとっては大切な経験だとライラは思います」といいながら、ライラがそっとエメリアを抱きしめた。


エメリアも甘えるように抱きしめ返した。

ライラがあまりにもエメリアをギュッと抱きしめてくるので可笑しくなってクスクスと笑い出した。


「エメリアお嬢様?」


ライラは不思議に思いエメリアからそっと離れると


「だって、ライラが思いっ切り抱きしめるんだもなんだか可笑しく思えて」


「そうですか?特に可笑しいところはなかったと思いますが?」


エメリアの言っていることが理解できるずっと頭を傾けたままだった。


「うん。私はライラに大切にされているなって実感しただけ。ライラありがと」


「これからもエメリアお嬢様のお傍にライラはずっと一緒にいますから!」


と言いながらライラはお茶セットを片づける為に部屋を出ていった。

イザーク・シュテイラー(エメリアの叔父 ローザの父)

イーリス・シュテイラー(エメリアの叔母 ローザの母) 


最後までお読みいただきありがとうございました。

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