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第四十一話 まどろみ

「ミュァ……ミュァ……」


 薄っすらと光が差し、夜が明けようとしている。

 甘えた声で小さな毛玉が、眠っている俺の懐に潜り込む。

 新しい世界でやっと出会えた、愛しい我が子・ヤエカ。


「ミュァァ……」


 寝ぼけているだけなのか、優しくなでるとヤエカは体を丸める。

 そのまま大人しく、夢の中に戻ったようだ。


「ュ……ュ……」


 それにしても、色んな事があったな。

 事故で異世界に転生したと思ったら、俺はスライムになってて。

 でもすぐに、妻のスズネと出会えた。猫みたいな魔物になってたけど。

 俺たちは魔物を倒したり魔素を吸収して、どんどん進化していった。


「……スュッ……ュ……」


 運よく親切な人にも出会えた。魔物使いのプラムさん、今ごろどうしてるかな。

 野生の俺たちの話を聞いてくれて、色々手助けもしてくれた恩人。

 無事に子どもが生まれたよって、伝えたい。

 いつかまた、会えるといいな。


「…………」


 プラムさんと別れてからは、育みの森でしばらく過ごした。

 森は色んな魔物たちが暮らし、魔素が豊富な魔物の楽園みたいな場所。

 そこで大きな魔素だまりを見つけて、ヤエカを授かることに。


「……キ……きて……」


 悪い魔物使いに襲われて、危険な目にもあった。

 飛竜のヴォルフラムさんに助けてもらえなかったら、今ごろどうなっていたか。

 考えただけで、身震いしてしまう。


「……ロア……起き……」


 今はヴォルフラムさんに勧められた、魔人の国に向かう旅の途中だ。

 魔人というのは、俺みたいなスライムや物質系の魔物から進化した亜人のことらしい。

 そこで家族みんなで、幸せに暮らせたらいいな――


「起きてって言ってるでしょう!! ヒロアキ!!」

「はっ! はい!!」


 すごい剣幕で叩き起こしてきた、愛妻・スズネ。

 何かあったのだろうか?


「お腹! お腹!!」

「え? お腹がどうしたって……」


 言われるがままに、俺は自分のスライム腹に目を落とす。

 スライムから進化した亜人の俺の体は、部分的に透明なスライム状になっている。

 腹部は大きくスライム状になっているのだが、その中にヤエカが浮かんでいた。


≪精獣 ヤエカ を 捕獲しました≫

≪消化しますか?≫


「だめぇぇぇぇぇぇぇ!!」


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