表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で俺はスライム、嫁はネコ ~転生しても妊活します~  作者: 明桜ちけ
第一部 転生して初めての子を産む話
24/42

第二十四話 森の肉食材

 スライムウォーカーに進化して、見える世界が広がった。純粋に背が伸びて、視線が高くなったというのもあるが……。

 横で眠るスズネが、とても小さい。こんな体で、今まで旅をしてきたんだな。

 今でこそ俺たちは進化して、高校生ぐらいの体格に成長している。でも生まれたての頃は、ここの子ミュアたちと同じくらい……手のひらに乗るほどの大きさだったのだろう。


「ん……おはよう…………どうしたの?」

⦅いや、ぼーっとしてただけ⦆

「そう……」


 寝起きでぼんやりしているスズネが、体を丸める。ウトウトしていて、二度寝してしまいそうだ。

 その様子がとても愛おしくて、頭を撫でてしまう。これからは俺が……スズネを守っていくんだ。


「フミィヤアァァァッ!!」

「ミュアァァアァァァッ!!」


 穏やかな時間は突如、引き裂かれる。子ミュアたちが異常な鳴き声と共に、俺たちの巣穴に飛び込んできた。

 三匹ほど駆け込んできた子ミュアが、巣穴の奥で固まって震えている。


⦅どうしたんだ!?⦆

「フッ! フッ!」

「ミァー」

「ミィ〜」


 今度は母ミューアが、子ミュアを二匹咥えて現れた。そして巣穴の奥に子ミュアを、乱雑に放り投る。ミュアっと短く一声あげると、再び外へ飛び出す。


「大きな魔物が現れたみたい!」

⦅ええっ!? 子どもたち、まだ半分くらいしかいないぞ!?⦆

「助けにいかないと!!」


 急いで外に飛び出すと、巣穴の外には赤い塊がのっそりと動いているのが見えた。足元には、子ミュアを咥えた母ミューアが後ずさっている。


⦅あれは……ザリガニ? 人の大きさぐらいあるぞ!⦆


 ザリガニの魔物は、巨大なハサミを振り下ろす。岩のような大きさのハサミは、地面を深くえぐった。

 動きは遅いが、とんでもない威力だ……あれじゃまるで、魔獣じゃないか……。


「はぁっ!!」


 スズネは高く飛び上がり、ザリガニの背に飛び乗る。そして関節に関節を突き刺し、バキリと頭部をもぎ取った。

 頭と胴体を切りさなされたザリガニは、ただ手足がうごめくのみ。やがてそれも止まった。


「強そうだけど、急所を突けば一撃だね」

⦅そこの関節が……わかった⦆

「ミュアッ!」


 咥えていた子ミュアを巣穴に放り込んだ母ミューアが、再び走り出す。ついて行くと、巣穴から少し離れた崖の上にたどり着いた。

 崖には何匹ものザリガニの魔物が、張り付いている。ゆっくりだが、登ってきているようだ。


「ミューッミューッ」

「ミュッミュッ」


 崖の下では、子ミュア達がウロウロしながら鳴いている。崖を登れない、小さな子たちが取り残されているのか。


「ここで遊んでるときにザリガニの魔物と遭遇して、驚いて落ちちゃったみたい」

⦅なるほどな。早く助けてやらないと……⦆


 崖の下にも、ザリガニの魔物がたくさんいる。なんだってこんな急に、大量発生したんだ……。

 まずは、子ミュアたちの安全の確保だな。


⦅シャドウバインド⦆


 子ミュアたちの近くのザリガニの影から、俺の分裂擬態の網を巻き上げる。そのまま影に縛り付けた。

 その間に俺は崖を飛び降り、地表の木の影に飛び込む。そこから子ミュアたちを、回収していく。


⦅はいはい、暴れないでね⦆


 影の中に引き込んだ子ミュアは、必死で俺にしがみついている。可愛い。

 全員回収すると崖の日影になっている部分を辿って、崖上に戻った。


⦅さぁ、お母さんのところへ行きなさい⦆

「ミューッ」


 俺にしがみついていた子ミュアたちは、飛び降りて母ミューアに駆けていく。母ミューアは子ミュアを確認すると、巣穴に戻って行った。


⦅さて、と。このザリガニは捌いちゃっていいかな?⦆

「うん。襲ってきた魔物は食べてよし!」


 辺り一帯にうごめくザリガニの魔物を、夫婦二人で倒していく。全てを捌き終わるころには、すっかり日が暮れていた。


「すごい大漁だったね〜」

⦅本当にな。保存してる食料も減ってきてたし、良いタイミングだったよ⦆


 焚き火でザリガニの身を焼きながら、夕食の支度をする。空には満天の星が輝いていた。

 俺たちの傍らには、子ミュアたちが食事を待ちわびている。野生の魔物なのに、ちっとも火を怖がったりしないなぁ。


「熱いから、気をつけて食べるのよ」

「ミュー!」


 平らな台に焼けた身を置くと、子ミュアたちが一斉に食事を始める。食べる姿も、だいぶ様になってきて可愛い。一緒に暮らし始めて数週間だけど、すっかり大きくなっちゃって。


「本当に、子供が好きね」


 子ミュアたちを眺めていると、スズネがしみじみと言った。俺、そんなに変な顔で見てたかな……?


⦅だって可愛いじゃないか⦆

「そうね……」


 食事を終えた子ミュアたちが、俺たちの膝の上に集まってくる。これは、このまま寝ちゃうぞ。

 そうと分かっているのに、頭や背を撫でてしまう。この愛くるしさには、抗えない。


「もうすぐ、私たちの子ども産むのよね……」

⦅あ……ああ! 俺も準亜人になったしな⦆


 あとは良い場所に魔素だまりを見つけたら、魔素交配をしても良いんだな。いよいよ、自分たちの子供か……。


「ヒロアキは、どうして子供が欲しいって思ったの?」

⦅どうしてって……⦆


 膝の上の子ミュアたちが、ウミャウミャと寝言を言う。この子たちが、自分の本当の子供だったなら……そんな気持ちが湧き上がる。


⦅そう聞かれると、うまく言えないけど……ただすごく、欲しいと思うんだ⦆

「そう……ヒロアキは面倒見も良くて、優しいから」


 きっと理由がどうこうじゃなくて、欲しいという欲求が強いんだろうな。これが俺の、子どもに対する性分なのかもしれない。


⦅そういうスズネは、どうなんだ?⦆

「私? 私は……」


 穏やかな表情で子ミュアを撫でながら、スズネはゆっくりと話す。膝の上では、子ミュアたちが小さく寝息を立てている。


「ヒロアキと出会って、あなたと一緒の人生は悪くないと思えた。だから子どもにも、この世界を見て欲しいと思ったの」


 スズネはそんなことを思っていたのか。というか、真顔で言われるとすごく恥ずかしいな。

 俺ももうちょっと、気の利いたこと言えば良かった! いや、全然思いつかないけど!!


「それに自分の子どもが見る世界を、見てみたい。きっと自分には、想像もつかない世界だと思うから」

⦅それは……そうだな。なんてったって、異世界で魔物の子どもなんだから⦆

「あはは。それもそうだね!」


 大きな声で笑ってしまっからか、子ミュアたちが起きてしまった。みんな寝ぼけてよろよろしながら、巣穴に向かっていく。

 火の始末をして、俺たちも巣穴に戻る。

 自分の子どもが見る世界、か。一体どんなものに、なるんだろうな。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


■■■■


ヒロアキ

⦅お隣さんの子ミュアたち、大きくなってきたなぁ⦆


スズネ

「本当にねぇ」


子ミュア

⦅しゅきっ!すずね、しゅきっ!⦆


ヒロアキ

⦅うおっ!?念話で話してる子がいるぞ?それにそんな言葉、どうやって覚えたんだ……?⦆


スズネ

「あなたが念話で飛ばしてる寝言だ!」


ヒロアキ

⦅うわぁぁぁぁ!!⦆




■■■ブックマークと評価について■■■


● ブックマーク

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

続きの気になる方は、ぜひブックマーク登録をお願いいたします。


● 評価について

「面白かった!」「続きが気になる!」という方は、ぜひ応援をお願いいたします!

広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて評価応援いただけますと、幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ