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異世界で俺はスライム、嫁はネコ ~転生しても妊活します~  作者: 明桜ちけ
第一部 転生して初めての子を産む話
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第二十一話 二人の旅立ち

 宿に泊まった翌朝、俺たちは日の出と共に町を出た。

 青白い空を、あの大きな飛竜が飛んで行く。こんな朝早くから活動しているなんて、いつどこで寝ているのだろう?


「それでは、私はこの辺で」


 町からだいぶ離れた場所まで、プラムさんは見送りについて来てくれたのだ。

 俺はマントの擬態からスライムの姿に戻って、地面に降りる。ちゃんと、お別れの挨拶をしないとな。


「こんな遠くまで、お見送りありがとう。お世話になりました」

⦅本当に、何から何まで世話になったよ。おみやげまで貰っちゃて……⦆

「いえ、好きでやったことですから」


 気にしないでくださいと、プラムさんが手を振る。

 おみやげというのは、彼女お手製のお守りだ。本来は魔物使いが、他の魔物使いに魔物を奪われないようにする物らしい。

 それを念の為にと、俺たちに持たせてくれた。


「本当は私が近くにいないと、効果が薄れてしまうのですが……それでも、いきなり隷属させられることは防げると思います。なのでもし、人間に捕まることがあったら……」

⦅その隙に逃げろってことだな⦆

「はい」


 プラムさんは本当に、先の先まで考えて動く子だな。俺が若い頃は……いや、今だってこんなに気が回らないだろう。

 若くして魔獣狩りとまで言われる実力とは、こういうことか。恐れ入るなぁ。


「この先にある育みの森は、あまり人が立ち入らない場所です。人里から遠い割に、実入りの良い魔物や素材がないので」

「そうなんだ」

「でも魔物にとっては、比較的安全な場所だと思います。広大で住む場所も多く、食料や魔素だまりも多い」

⦅それはいいな⦆


 少し間を空けて、プラムさんがこちらを見る。倣うように、ソル君たちも。

 これが本当の、最後のお別れなんだな。


「またいつか……お会いしたいです。お二方がどんな姿になっていて、どんなお子さんが産まれているのか……気になります」

「うん、私もまたプラムさんに会いたい! 子どもにも会ってもらいたい! ね、あなた?」

⦅ああ、もちろんだよ!⦆


 プラムさん達はこの世界で最初の友人で、恩人だ。彼女たちが居なかったら、俺たちは生まれた洞窟から出ることも出来なかった。

 ここまで来れたのも、この先に行けるのも……彼女達と出会えたから。


「ではヒロアキさん、スズネさん、お元気で! お二方の未来に、幸多いことを」

⦅プラムさんもお元気で! またいつか会おう!⦆

「プラムさん、いままでありがとう! ソル君も、キヨさんも、ケルシーも、元気でね!」

「バフゥ!」


 俺たちはそれぞれの道を、歩き出した。

 今度プラムさん達に会うのは、俺たちは亜人になってからか。子どもも産まれてるといいな。


「……行っちゃった、ね……」

⦅あぁ……本当に、良い子だったな⦆

「うん。また会いたいね」

⦅そうだな⦆


 魔物と人間が、この広い世界で再開する。

 それってもしかして、すごく大変なことなんじゃないか? ネットもスマホも無い世界だし……。

 でもなんだか、彼女とはまた会える気がする。なんとなくだけど。



■■■


 プラムさんたちと別れてから、二週間ほど。

 道中は谷や山が多く、道はとても狭い。強い魔物とは遭遇しなかったが、人が立ち入るのは難しそうだ。

 そして俺は再びマントに擬態して、スズネに着てもらっている。スライムの体だと、歩みが遅くて……。

 

「なんか、寄生されてるっぽい」

⦅変な言い方しないで!?⦆


 最初はすぐ戦えるようにって、剣に擬態して移動してたんだ。でも剣での移動は瞬発力はあるんだけど、長距離移動するのは苦手なようで……スタミナが切れて地面に落ちてしまった。

 なので、影に入るかマントに擬態して移動することに。どちらにせよ、スズネに運んでもらっている。


⦅お! あそこの崖の上の木、赤い実がたくさん実ってるぞ⦆

「本当だ!」

⦅旨いのかな……スズネ、登れるか?⦆

「まかせて!」


 そういうと、スズネは崖を登り始める。ちょっとした横突起をつたって、スイスイ登っていく。このミューアの身体能力、羨ましい!


「とうちゃく!」


 あっという間に崖を登り、木の上にあがった。そして赤い実をもぎ取る。


「うわぁ……」

⦅おおっ……⦆


 木の実を取った先――登ってきた崖の反対側には、広大な森が広がっていた。


「あそこが……育みの森?」

⦅たぶん、な⦆


 一目見ただけで、豊かで穏やかな森だと感じる。うまく説明出来ないけど、生まれた洞窟の外の森とは違う。

 体を吹き抜けていく風が、とても柔らかい。

 同じことを感じているのか、スズネもどこかリラックスした感じだな。


⦅やっと、落ち着いた生活ができそうだな⦆

「うん。そういえば、ずっと旅暮らしだったもんね」


 スズネは良い景色を眺めながら、大きく深呼吸をした。そして気合いを入れる。


「ここで進化して、安心して暮らせるぐらい強くなるぞー!」

⦅お……おーっ! 俺もーっ!!⦆

「子どもも産むぞー!」

⦅おーっ! ……おおっ!?⦆


 つられて一緒に、恥ずかしいこと叫んでしまった。恥ずかしい!! 念話だけど!!

 当のスズネは嬉しそうに、はにかんでいる。まったく、俺の嫁さんは……大好き!


「これからも、頑張ろうね」

⦅ああ、よろしくな⦆


 俺たちは木の実を食べて一休みすると、育みの森へ降りていった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


■■■■


ヒロアキ

⦅キヨさんとケルシーは、全然鳴かないんだな⦆


プラム

「人前ではあまり鳴かないように言ってますからね。でも念話はたくさんしているので、結構にぎやかなんですよ」


ヒロアキ

⦅そうなんだ! ソル君は念話を使わないの?⦆


プラム

「ソルは念話がなくても、私たちのことをよくわかっていますから」


ソル

「バフゥ!」



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