口止め
いつま読んでくださってありがとうございます
今回、始めの方で投稿した分を編集しています。
2つを1つにした形です。
内容の変更は行っていません。
少しでも読みやすくなればと思っています。
これからもよろしくお願いいたします
3人の動きが止まった。 私と管理番は言葉も出てこない。騎士さんはどう思っているかわからない
そう思っていたのは私だけだった。
「姫様、先程と違いすぎて驚きました。私としてはこちらの方が、親しみが持てる気がいたします」
「そ、そう?ありがとう…」
穏やかな騎士さんの声。無表情ではあるが、馬鹿にしたり、蔑んたりしている様子はなさそうだ。
管理番は視線が彷徨っている。私に対してあの話し方だ。本来なら不敬罪レベル。
『人前でなければ』という約束だったので、騎士さんに見られたのは、どう考えても問題だろう。
この話し方『ざっくばらん』を、持ちかけたのは私の方だ。
なんとか騎士さんに口止めをしなければ・・・
「騎士さん、そう言えば騎士さんのことは、何も教えてもらってないわね? さっき、私の部屋の前にいた人達は、部下って言ってたけど、そうなの?」
「ひっ、姫様」
管理番が私を慌てて止めている(遅かったけど)その様子から、この騎士さんは偉い人なのかな?
「それは失礼しました。そう言えば、ご挨拶をしたことは、なかったかと思います」
「そうよね?今日初めて会うと思うわ」
「はい」
話をしている横で、管理番が手で顔を覆っている。
何となく絶望感が漂っている気がするのは、気のせいだろうか??
「私は近衛騎士団の分隊長を勤めております」
「隊長さん?ってこと?」
「はい、よろしくお願いします」
「お願いします?」
挨拶の常套句ではおかしくない言葉だが、今の何となく違う気がする。
「はい、私は今日付けで姫様の護衛となります。これから顔を合わせる、機会も多いかと思いますので」
「隊長さんが私の専属になるの?」
「陛下と宰相閣下からの命令ですので」
「それならおかしくないわね。よろしくね。隊長さん。それより騎士さんの方が良い?」
「他の者もいますので、隊長の方が有りがたいかと・・・」
私と隊長さんが話していると、管理番は顔を覆っていた手を、今度は口に持って行き口を覆っていた。
顔だったり、口だったり忙しい手だ。
何をそんなにうろたえているのだろう?
「隊長さん。管理番が慌てているみたいだけど。隊長さんは、何か他の役職を持っているのかしら?」
「いいえ、役職は有りませんが、私が貴族にしては高位の家に、属しているからでしょう」
「高位?」
「はい」
その返事を聞きながら、管理番を見る。何度も首を縦に振っていた。
かなりのお家のようだ。
なるほど察するに、陛下と親戚とか?そんな感じかな?
管理番にしたら、そんな人に私との気楽な会話を聞かれたので、慌ててしまうのは仕方がないだろう。
さて、どうやって口止めをしようかな?
隊長さんを見上げると、隊長さんは私を見て、親しみのある笑顔を見せてくれた。
私は年齢にしては小柄なので、見上げる形になるのだろうが、地味に首が痛い・・・
この笑顔とさっきの言葉から(こちらの方が親しみが持てると言っていた)隊長さんも、堅苦しいのは嫌いなのかもしれない。そこに賭けてみよう。
「隊長さん、これからよく会うのよね?」
「はい。そうなるかと・・・」
私は業といつもの話し方を心掛ける
「あのね、私は堅苦しいのは嫌いなの、だから管理番や商人には気楽に話すように、『私が命じたの』だから隊長さんにもそうして欲しいのだけど、どうかな?そうしてもらえると助かるのだけど?」
「そうなんですね。私としても気楽に話す方が助かります。堅苦しいのはどうも苦手で」
「ありがとう」
「姫様。『命じた』のに『ありがとう』は、ちょっと… 姫様とは少ししか、お会いしていませんが、あまり『命令』する方ではないと思っていますが…」
あら?やっぱりバレてる。話してから気がついたのよね。命令とお願いが同居していることに。
そこは知らないふりをしてほしかった…
私は知らないふりをするけど
「そうかな?でも、管理番は『命じた』りしないとこんな話し方はしないでしょう?命令には逆らえないもの」
「そうですね。では私も逆らえなかった。という事で。よろしくお願いいたします」
「ええ、よろしくね。それと、人前だとこんな話し方、怒られちゃうでしょう?だから、私達の時だけね。私と商人と、管理番だけ。他の人には内緒ね」
重ねて念を押しておく。
「ええ、承知しました」
口止めには成功したようだ。
私は満面の笑みを浮かべる。





