変化の兆し 2
宰相からの報告を受けて今後を決めかねている。確かに城下の流行が城からのものでなかったことは、問題だが犯罪か、と言われればそうではない。罰するわけにはいかないだろう。
しかし放っておくと心配の種になる。原因を確認しておく事に越したことはない
「さて、宰相。どうしたものか…」
「困りましたね。取り締まるわけにはいきませんし。しかし、放っておくとちょっと…」
考えるのは同じ事のようだ。
「取り敢えず城で商人と接触のある者から話を聞いてみるか?何か知っているやもしれん」
「畏まりました。接触の多い者を確認します」
「頼むぞ」
「そなたが管理番か」
「はい、王宮の仕入れを担当しております」
私の前に線の細い男が跪いている。
会うのは初めてだが仕入れの管理をしているものだそうだ。取り引きの確認や相談の関係で商人と仲が良いらしい。
「城下の商人と仲が良いとか」
「はい、王宮でよく会うので、それ以来親しくしております」
不安そうな管理番が顔を上げないまま答えている。
声が少し震えているようだ。あまり会うことのない人間から、しかも上司(?)から呼び出されれば不安にもなるだろう。
『悪かったな、しかし確認は外せないし』
「そのように緊張せずとも良い。少し確認したいのだ」
宰相から声をかけられるのだが、下を向いたままだ。
この様子で話ができるか?
私は宰相を見る。宰相も同じなのか困った様子だ。
緊張するなと言っても無理だろう。
このまま進めるしかないようだ。
「そなた、商人とはいつからの付き合いだ?」
「5年ほど前からになります。私がこちらにお世話になってからなので」
「と言うことは、そなたは5年前からここに勤めているのだな?」
「はい」
管理番は床を眺めたまま返事をしていく。
「そうか…」
私が一言呟くと管理番は肩を揺らす。
宰相から咎めるような視線が来た。『怖がらせるな』と言いたいらしい。
怖がらせるつもりはなかったのだが…
「恐れながら、商人が何かしたのでしょうか?問題でも起こしたのでしょうか?」
震える声で管理番が問いかけてくる。ここには管理番、宰相、私の3人しかいない。
咎めるつもりがないので、正式な場にはしなかったのだ。管理番もそこは理解しているのだろう、でなければ許可を取らずに声を上げる事はないはずだ。
管理番が感じている事を証明するために話しかけられた事は咎めない。そのまま宰相が返事をする。
「何もしていませんよ。最近城下で流行っているものがありましてね。その発信源が商人の店らしいのでどういったものか知りたかったのです」
「城下で流行っているもの?」
「あなたも知っていますか?」
宰相は怯えさせないためか注意深く話しかける。
「もしかして、調味料の事でしょうか? 味噌や醤油などの?」
「知っているのですね?離れの姫様と商人が広めているとか?」
宰相が断定的に話す。そうすることで管理番の反応を見たいようだ。





