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いよいよ決戦?

 いつも読んで頂いてありがとうございます。

 言い訳がましいのですが。

 じつは、今まで書き溜めていたパソコンが壊れまして、修理もできず激しく落ち込んでいました。

 なので、書いていた内容を思い出しつつ、モチベーションを上げながら書き直しをしていました。


 今後も書き直しをしていくので、のんびり待っていただけると助かります。

 よろしくお願いいたします


 両親が到着した翌日。

 今夜はいよいよ晩餐会だ。

 

 到着当日は疲労感もあるということで翌日に設定されるらしく、そこは当然だろうと思う。場合によっては2日後、なんて話も珍しくないらしい。

 その予定はわかるし何も言う気はない。私にとっての問題は出席者の方。穏やかな気持ちで食事が出来るかはメンバーによると思う。そして今夜は心穏やかに食事をできるメンバーではないと思う。


 その出席者は。

 まずは両親、は主役なので当然。そして陛下と宰相も当然だろう。そして私も順当だ。

 次は隊長さん。隊長さんも招待枠らしい。私の護衛ではなく公爵家の人間として出席のようだ。隊長さんが出席してくれるのは心強い。私としては安心感満載で実に心強い。ぜひ近くに座って頂きたいと思う。そして隊長さんのパパも出席だそうだ。息子が出席で父親が出ないなんて事はないだろう。なのでパパも出席。パパとは初対面なので緊張してしまいそうだ。どんな方なのか気にもなる。隊長さんと似たような感じの人なのだろうか? ぜひ確認したいと思う。

 次はご令嬢。令嬢も出席だそうだ。私と仲良くしている、ということでお友達枠で出席らしい。こちらも親御さんと出席。

 ここまでは私が知っているメンツで。他はその場でわかるらしい。


 今回はこじんまりとしたものに設定されているので人数は少ないそうだ。この晩餐会が終わってから次回は大掛かりなダンスパーティーが予定されているとのこと。

 こちらはちゃんとして、というか本格的な、というか、とにかく大掛かりな歓迎会として開催されるもののようだ。

 本格的なお招きとは、こうなっているのかと庶民丸出しの私は驚くしかなかった。

 王族として生まれ記憶が戻ってからはや数年。記憶が戻ってすぐにこっちにきたし、そこからは隔離されてかかわる人数は制限されていた。学校に通ってから初めて本格的な教育というか姫様的な扱いが始まったけど、この扱いに慣れない感の方が大きい。

 まあ、離宮に移ってそんなに経っていないし慣れる方が難しいのかもしれない。

 私の教育環境はともかくとして、本格的な試練はここからだった。




 「筆頭。いつものようにお願いしたいのだけど?」

 「姫様。お気持ちはわかりますが、流石にそれは」

 「そうよね。わかっているわ。いつもと同じではないものね」

 「ご理解いただきまして」

 渋っている私を筆頭がなだめてくる。わかっている。私が言っている事がわがままで。筆頭が言っていることが正しいことも。

 それでも、気持ち的に逃げ出したいの思うのは許してほしい。


 私は今、晩餐会のための支度中だ。そして、眼の前にはキッラキラの装飾品、およびドレスが並べられている。

 忘れていた私が悪い。晩餐会なのだ。それに相応しい装いを整えるのは当たり前のことで、しかも私も一応、曲がりなりにも女性という括りに立っているはず。それなのに一ミリも興味を持ってないために装いのことを失念していた。場に相応しい装いをしなければならない、という事実に気がついておらず頭の片隅にもなかったのだ。それはそれでどうかと思うが興味がないので仕方がない。陛下が何を言い出すかとか、両親はどういった反応を見せるだろうかとか、その辺のことしか気にならなかったのだ。

 そんな私の気持ちをわかっているのだろう。筆頭は何を言わなくても支度をしてくれていたのだ。ありがたい。ありがたいのだが、できればもう少し、もう少しだけ地味な、いや、穏やかな装いにしてほしかった。そう思うのは私のわがままなのだろうか? そんな思いで周囲を見回すが目の前の筆頭と衣装係の侍女さんたちは笑顔を崩さない。

 これはあれだ、私が圧倒的に不利だ。何を言っても要求は通らないだろう。彼女たちの笑顔を前に私は自分の抵抗が無意味なことを悟った。諦めてすべてをお願いしよう。無知な私が何かを言うより可愛くしてくれるはずだ。きっと、たぶん。そう信じよう。

 諦観の念を持って支度に取り掛かることになった。



 「姫様。こちらはいかがでしょう?」

 なんでもいいと言いながら、聞かれると否定の言葉が飛び出そうになる。もう少し地味なのはないのか? そんな可愛らしいドレスが私に似合うと思ってんのか? ああん? とガラの悪そうな言葉が久しぶりに飛び出そうになる。筆頭の教育が行き届いているおかげが最近はおとなしぶりっ子が板についてきていたのに、根ががさつな私は気が付くと言葉遣いが悪くなりそうになる。なんとかその言葉をもぐもぐごっくんと飲み込むと愛想笑いを浮かべながらやんわりと否定する。

 「私にはどうかしら?」

 「では、こちらはではいかがでしょうか?」

 だから、どうしてそんな可愛い系? ピンクとかオレンジとか。他にはないのか?

 もう少しあるだろう。声を大にして言いたい。侍女さんたちは(筆頭を含む)わかっていても私の希望する選択肢は出してはくれないようだ。

 これをすり合わせるのはハードルの高い難関だろう。


 諦めた(2回目)私はその中から比較的おとなし目のものを選ぶことにする。私にとっては、どうしてこんなキラッキラの中から選ばないといけないのか? 激しい愚痴が胸の中に渦巻いている。

 ピンクの総レースの飾りがあったり、オレンジで縁はレースとリボンが垂れ下がっていたり。オレンジ・モーブが重ねてあったり、ジョンブリアンのプリンセスドレスとか、濃い青にモスグリーンの差し色が入っていたり夢の国ならおかしくもないけど、私が理解できるはずもないし似合わない。いや、客観的にみて以前の日本時代の私よりは可愛らしいけど、それでも理性というものが残っているからには高い壁だ。

 できたらデビューの時みたいなのがいいんだけど、遠回しに訴えてみたけど、微笑と共に却下された。

 ま、ですよね。そうなりますよね。往生際が悪いといわれても恥はかきたくないものだ。諦めがつかないとも言う。

 そんな事を考えながらもう一度並んでいるドレスを眺める。比較的おとなしめなドレスを、目を皿のようにして探してみる。

 ドレスは基本的にAラインのプリンセスドレス。スカート部分がふわっと広がっている。可愛らしい感じだ。

 色はどれでもござれと並んでいるが、暖色系を外していく。今までピンクとかオレンジとか着たことがない。基本的にはベージュとか紺とか黒とかがいいのだけど、まずその色が置いていない。それを置いたら私が選ぶと分かっているからだろう。選択肢から外すために置かないようだ。

 やりおるな。と思いながら。とにかくピンクはなし。次は赤は嫌いじゃないけどできるならワインレッドのような深めの色がいいなと思う。

 そう言えば余談だが、色が多い国は文化が発展していると聞いたことがある。色に違いを求めるだけの余裕があるからだ。という話だけど。たしかに気持ちに余裕がないと色に気を使う余裕はないな、なんて思ってしまう。まあ、その余波が今なのだけど。


 そう思いながら私が選んだのは薄いピンクとシルバーを混ぜたような鈍い感じの色だった。ウエストに大きなリボンがついているけど同色なのでそこまで目立たないはずだ。スカートは2段構造になっていて重なっている部分は波のように揺れる感じになっている。

 ピンクは外したつもりだったけどこれはピンク色が薄いのでそこまで気にならない。妥協に妥協を重ねた感じになった。でも、他よりはまだいい気がする。

 「これにするわ」

 私は隣りにいる筆頭を見上げながら選んだものを見せると筆頭は目をパチパチさせていた。これを選ぶとは思っていなかったのかな? 

 「姫様。こちらではいかかでしょうか?」

 隣のドレスで似たような感じのドレスを見せられた。決定的に違うのは華やかな色あいだろう。ローズピンクって。言葉にならない。眺めるなら良いけど。着るのは却下。

 

 私と筆頭の無言の攻防が始まるが着用するのは私だ。私が妥協するのだ。みんなも妥協してほしい。数ある選択肢の中から選んだのだ。文句は言ってほしくない、と思う。

 その考えが表情に出ていたのだろう。

 筆頭は支度を侍女さんたちに言いつけていた。

 その他の装飾品の用意を言いつけている。そうだ装飾品も必要なんだと他人事のように考えていた。 



 私は今、お嬢様になっている。決してお姫様ではない、私はもともと庶民なのだ。お上品なたちではない。なんの因果かお姫様なんて職業になっているが誤解しないでもらいたいと思う。

 出来上がった私は普段の私とは別人のようで、侍女さんたちの努力の賜物だと思う。決して素材が良いからではない。そこは強調したいと思う。


 私がこうしてあれこれ言い訳しているのは決戦が近いからだ。

 別なことを考えて気を紛らわせているからに他ならない。


 陛下は今日の時点で婚約の打診に対し結果を求めることはないと思う。曲がりなりにも私の肩書は【姫】というものがついている。一人で決断が許されるものではないし可能な限り好条件を求められる。

 私の結婚は国にとって有益でなければならない。そのために王族は存在しているからだ。国にとって有益な存在であるために労役が免除され勉学が優先され磨かれていくのだ。

 全ては国益のために。

 言葉は悪いが、言うなれば売り物だ。国の威信をかけた売り物なのだ。

 安売りできない。

 だからこそ、今日の今日で返事はできないだろう。そして陛下からも返事は求められないだろう。陛下も国を預かる方だ。こちらの事情も承知しているだろうし。

 だからこそ陛下達は今夜は好印象になるように徹すると思う。その努力に騙されるような両親ではないと思いたい。


 つまり、今夜の晩餐会はきつねとタヌキの化かし合い。

 ああ、胃が痛い。許されるなら、お腹が痛いと休みたい気がする。

 許されないだろうけど。





 

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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
姫様は、王族の役割、王女の存在意義と役割を 十二分にご理解してるので、逃げる選択だけはしないだろうな。 我儘は、言うけど。
[一言] 追記です。 「閑話 侯爵令嬢の思い出 ②」を読み返してみると、令嬢が、姫様の家庭事情、特に母親について知りたがっていますね。 「どのような経験をされれば、あのような落ち着いた対応や心使いがで…
[気になる点] 女性のドレスなんて主催者の意図、参加者と色形が被らない等の情報収集して自分の身分・立場を鑑みてその上で個性を出す工夫をするものなのに、相変わらず好き嫌いの基準しか持たないオバサンはきつ…
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