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姪っ子ちゃんと初ランチ 

 私は久しぶりに姪っ子ちゃんに会う。

 本当は私自身の環境が落ち着いてから招待するつもりだったのに、こんな形になってしまって申し訳ない気分と、久しぶりに会って嬉しい気分とが混ざっている。

 そんな事を思っていたら、姪っ子ちゃんは緊張していた。久しぶりに会うけど、なんでこんなに緊張しているのだろう?

 令嬢も緊張している姪っ子ちゃんに不思議そうだ。

 「どうなさったの?」

 「なにかあった?」

 私と令嬢は口々に姪っ子ちゃんに話しかけていた。姪っ子ちゃんは話しかけられて安心したのか、恐る恐る声を発する。

 「あの、わたし、こんな立派な部屋にいてもよいのでしょうか?」

 「立派な部屋?」

 「なるほど。そういうことね」

 私と令嬢の納得する方向性は違っていた。


 私は姪っ子ちゃんの気持ちがよく分かる。

 令嬢は環境のせいかピンと来てないようだ。

 姪っ子ちゃんは学校内にあるのにも関わらず、この豪華な部屋に驚いている、というよりはビビっているようだ。

 その気持は本当に良くわかる。私も初めてこの部屋を見た時は豪華さに驚いたものだ。

 離れ暮らしのときはそこまでではなかったが、離宮のときはビビりまくっていた。こんな場所に私がどうして、と思ったものである。それを考えると姪っ子ちゃんのビビりようは間違っていないと思う。というか理解が出来る。


 しかし、こんなに萎縮しているのにダンスの練習の事を話しても大丈夫だろうか? 姪っ子ちゃんの気持ちを考えると話すことを躊躇ってしまう。

 今回は見送った方が良い気がする。私はそんな事を考えていた。

 だが、令嬢は違っていた。


 椅子を勧めランチを開始する。

 ランチが始まっていつもの雰囲気になると、やっと姪っ子ちゃんも落ち着いてきたようだ。少しホッとしたような様子を見せながら本音を吐露する。

 「離宮で少し慣れましたけど、学校の中にこんな立派な部屋があるなんて驚きました。いえ、話は聞いていましたけど、聞くのと見るのでは大きく違うのですね。まだ、少しドキドキします」

 姪っ子ちゃんの言葉には同意しかなかった。

 私も離宮に慣れていなかったら同様の事を思ったはずだ。

 令嬢は不思議そうな顔をしていた。驚くポイントが分からないのだろう。

 流石は侯爵家。この部屋を普通の部屋としか認識していないのだろう。理解が追いついていない様子だ。だからといって私から説明すると角が立つ、と思ったらそんなことはなかった。離れはこの部屋よりも質素だった。

 その説明でいけるだろう。

 

 「そうね、このお部屋は本当に立派よね。私も離宮に慣れていなかったら気後れしていたと思うわ」

 「姫様もですか?」

 令嬢は意外に感じたのか私の方に視線を向ける。

 「ええ。離宮を頂く前は離れ住まいだったの。こんなに立派ではなかったわ」

 「そうなのですね。離宮の改築が終わるまでは大変な思いをされたのですね」

 とは侯爵令嬢のお言葉だ。

 そうか、離宮に移る理由が必要だったのだろうけど【改築が終わっていなかった】という理由になっているんだ。これは私も知らなかった。これなら対外的な外聞は立つだろう。横領問題も裁判になったとはいえ、どこまで表立ったのかは私も知らない。

 離れからの鳴り物入りの離宮だ。【改築に時間がかかった】【改築が終わっていなかった】一番波風が立たない理由だ。

 思わず感心していた。

 私は話を合わせながら姪っ子ちゃんの気持ちがわかると同意しておいた。

 「不便ではなかったわ。離れを標準で考えていたので離宮に移った時は驚いたという話よ」

  姪っ子ちゃんは同意が得られて嬉しいらしく「そうですよね」としきりと頷きを繰り返している。

 令嬢は不思議そうだったがこれ以上深入りはしてはいけないと思ったのか、それ以上の言及はなかった。

 どちらかというと、「この部屋に慣れる必要がありますね」と姪っ子ちゃんに言っている。なんて無茶な、と思ったが人間は慣れる生物だ。

 ここに通うようになれば自然と慣れてくれると思いたい。


 この話の流れでは今日の最大の目的、ダンスの話は流れるかな? と思っていたが、令嬢は目的に忠実らしい。

 殿下とのダンスの練習について話し始めた。場を暖めてから、という配慮もなかった。いきなりの本題で姪っ子ちゃんは目を白黒させている。

 それはそうだろう。前フリなしでいきなり「殿下とダンスの練習をするので一緒に参加しましょう」なんて、なんの話かと思うだろう。

 しかも「参加しませんか?」という問いかけではなく、決定事項のように「参加しましょう」と話し始めている。

 私だって、そんな事をいきなり言われたら回れ右をして「失礼しました」と部屋を出て行くだろう。

 令嬢、そこは配慮という言葉を覚えようか?


 案の定。姪っ子ちゃんはヒエッという顔になり固まった。

 この国の男子(男性ではない)の筆頭とダンスの練習なんて、どんな苦行かと思うだろう。私もそう思うから無理強いはできない。

 姪っ子ちゃんは思わぬ話に慄いている。

 「わたしのようなものは、そんな場所へは」

 と呟き最後は尻すぼみになっていた。


 はっきりとは拒否できないだろう。侯爵令嬢直々のお誘いだ。仲は良いとはいえ限界もある。「え、やだ」と言って断るのは難しいだろう。

 私は、その点を思い断っても良いと姪っ子ちゃんに告げる。できたら参加して欲しいと思うが、私がその立場なら、絶対に、絶対にお断りするだろう。

 そう断言できる。なんの苦行だ。

 

 「姪っ子ちゃん。無理強いはしないわ。殿下は慣れない方だし、話した事もないでしょう。私ならお断りしたいと思うもの」

 「よろしいので?」

 今度は令嬢が私を気遣ってくれる。


 今回、私が期待したのは同じ身分くらいの、萎縮しない女の子がいないか聞きたかったのだ。

 姪っ子ちゃんは仲良くしてくれているので気分的に気が楽だが、この件については彼女では気が重いだろう。

 それでは申し訳ないのだ。


 やはり、姪っ子ちゃんの話はなかったことにしようと思っていたが、令嬢はそれに難色を示す。

 姪っ子ちゃんを諭していた。

 「姪っ子さん。お気持ちはわたくしには理解できませんが、やはり姪っ子さんはこの練習会に参加されるべきかと」

 「しかし、わたくしは」

 「慣れない事や殿下との練習について危惧されるのはわかります。ですが、経験しないことには何事も慣れませんわ。それに、今回は問題ないとしても、いずれは似たような話が出てまいります。それならば、わたくしが一緒の席で慣れたほうがよろしいと思いますわ」

 「私に似たような話が出てくるのですか?」

 「ええ。必ず」

 令嬢はきっぱりと言い切った。

 姪っ子ちゃんに今後も同じような話が出てくるというのだろうか? そこまで言い切れる理由はなんだろう? 私が疑問に思っている間にも説得は続く。


 「姪っ子さん、慣れないことに不安はつきものです。失敗することもあるでしょう。ですが、その上で経験を重ねる事が大事だと思っています。慣れれば問題ありませんわ。怖い事や、心配なのは初めの時だけです。がんばりましょう?」

 姪っ子ちゃんは令嬢をじっと見つめていたが、なにかに気がついたようだ。そして頷く。

 「はい、頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします」

 キリッとした表情の姪っ子ちゃんも含め三人で参加する事が決まった。

 

 姪っ子ちゃん。

 巻き込んで申し訳ない。でも、参加してくれてありがとう。

 心強いです。




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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[一言] 少し前の話の感想になりますが、読み返してみて思ったこと。 姫様が離れに住んでいたことについて令嬢が、 「そうなのですね。離宮の改築が終わるまでは大変な思いをされたのですね」 と言っていたのを…
[一言] 姫ちゃんと繋がってれば必然だから令嬢の言いたいことは伝わったかな?
[気になる点] 感想欄を読んで、侯爵令嬢の >「そうなのですね。離宮の改築が終わるまでは大変な思いをされたのですね」 この会話は話の流れでは問題ない模範解答なんですが、姫様と侯爵令嬢の間では認識にズレ…
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