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オウカ放浪譚  作者: 天野ハザマ


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ボス退治

「よぉし、やるぜアンナ。ボス退治だ」

「ええ、いくわよオウカ」


 特にそうやろうと言ったわけでもなく、2人は拳をぶつけ合う。

 なんとなく、互いのやりたいことが伝わったという……ただそれだけの話だ。

 しかし、ただそれだけのことが何とも気持ちがいい。


「んじゃ、アタシはあっちから行く」

「オーケイ。じゃあ私は反対側からね」

「よっしゃ、行くぞ!」


 オウカとアンナは同時に右と左に分かれゴブリンナイトへと迫る。


「【ヘイトアップ】!」


 瞬間、ゴブリンナイトはアンナへとその注意を向ける。カイトシールドを構え、防御から即座に攻撃に移れる体制だ。

 そしてこれは、ゴブリンナイトが愚かだという話ではない。スキルとはそういうものであり、だからこそ有用なスキルを持っているかどうかが重視される。

 そして……【ヘイトアップ】でアンナが注意を引き付け今まさに斬りかかろうとしている以上、ゴブリンナイトはほぼ強制的にそちらに注目する。だからこそ。

 そう、だからこそオウカの関節を狙った攻撃が通る。通る、が……ギャリッと鈍い音をたててオウカのシミターが弾かれる。


「!? チェインメイル……! マジかよ!」

「ゴブウウウウ!」

「チクショウ! すまねえ、しくじった!」


 如何に【ヘイトアップ】でオウカが注意を引いていようと、流石に攻撃すればゴブリンナイトはオウカを迎撃しようと剣を振るう。だがそれは同時に、アンナへの警戒が薄まったということになる。


「せやああああああああ!」


 アンナの一撃がゴブリンナイトのカイトシールドで防がれ、そのまま盾で殴りつける一撃で弾き飛ばされる。


「きゃあっ!?」

「馬鹿! 攻撃するときに叫ぶ奴があるか!」

「わ、悪かったわよ! 【ヘイトアップ】!」


 ゴブリンナイトの視線が再びアンナへと向き、今度はオウカはゴブリンナイトの首へ向けて斬りつける。が、結果は同じだ。首を覆うチェインメイルを兜の下につけている。


「げえ……完全防備かよ。魔法士でも連れてこいってか?」


 流石はナイト、といったところだろうかとオウカは敵ながら賞賛したくなる。まあ、味方の(メイド)ナイトは部分鎧だが……。


「おっと!」


 ゴブリンナイトの一撃を受ければ、それだけでオウカの腕がジンジンと痺れ始める。

 その背後からアンナが剣を必死で振るっているが、防御が硬すぎて通じていない。

 一撃、二撃、三撃。更に盾での一撃を受けてオウカは吹っ飛ばされるように大きく後退る。


「離れろ、アンナ!」

「う、うん!」


 アンナがバックステップで離れれば、ゴブリンナイトはそれ以上追ってこない。

 視線だけで背後の階段を見て……すぐにオウカたちへと視線を戻す。


「やっぱりだ。アイツは基本的にあそこからは動かねえ」

「え。じゃあ遠距離から攻撃し放題ってこと?」

「そう簡単にいくとも思えねえし、試せもしねえがな」


 と、そこまで言って……オウカは「ん?」と気付いたように声をあげる。


「いや、試せるな」

「え? あ、それ……!」


 オウカが懐から取り出したのは、先程ゴブリンにも投げた石だ。これならば投げても無くしても全く惜しくない。拾えばいいだけだから、元手はタダだ。


「えー……何個仕込んでるの?」

「それなりだ。さて、と……これをどうする?」


 オウカが振りかぶると、ゴブリンナイトはバカにしたようにグッブブと声をたてて笑う。

 だが、そんなゴブリンナイトにオウカはニヤリと笑う。


「馬鹿が」


 ゴウ、と音をたてて投げられた石がゴブリンナイトの兜に当たり、ゴワンと凄まじい音をたてる。瞬間、ゴブリンナイトはフラついて。オウカの二投目を盾を構えて防ぐ。

 3つ目、4つ目と飛んでくる石を頭を守るようにしてゴブリンナイトは防ぐが……その勢いが弱まっている気がして、ゴブリンナイトは盾をどける。


「あっ」

「ゴブ⁉」


 そこにいたのは、石を投げているアンナ。そして……すぐ近くまで来ているオウカ。


「【ヘイトアップ】!」


 分かっていても瞬間、アンナに注意を向ける。その一瞬が、致命的であろうとも。


「見えたぜ、てめえの弱点」


 オウカはシミターの背でゴブリンナイトの兜を殴打する。

 ガン、ガンと一発ごとに力を籠めて兜を打てば、ゴブリンナイトはフラついて……オウカの蹴りで仰向けに倒れてしまう。

 だが、死んだわけではない。たかだか脳が揺れただけのこと。その硬い防御が破られたわけではない。ないが……馬乗りになったオウカは、すでに勝利を確信していた。

 狙うは、兜に唯一ある無防備な場所……目部分の隙間だ。

 狙い過たず突き込まれたシミターは何かを砕きながら切り裂く感触をオウカに伝えてくる。

 ビグンッと震えるゴブリンナイトの身体から「おっと」と立ち上がると、オウカはシミターを引き抜き軽く掃う。


「マジ強かったぜ。でもまあ……アタシたちの勝ちだ」


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― 新着の感想 ―
投石を防ぐために盾を構えた際に視界が遮られた隙を狙ってスイッチする連携素晴らしいです! どこまでの相手に通じるかにもよるけど、強制的に注意を向かせるヘイトアップ強い! 目部分の隙間を狙っての急所攻撃で…
やはり投石……! 投石は人類最古の投擲武器……! 小兵ダビデが巨兵ゴリアテを倒した必殺技よ……!
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