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24.茜色に舞う今日と明日

 時間は刻一刻と過ぎ、ゆっくりと茜色に染まってゆく空の下。

 オームギとレンリは扉があるとされる路地裏を目指し、屋根の上から上へと飛び移っていた。


 商人と相棒の三毛猫から情報を聞くや否や、レンリは焦燥感を抱え魔術を放つ手に力が入る。

 そんな彼を一歩後ろから追いかけるオームギは、急ぎ足の理由を改めて問いただす。


「ねぇレンリ、先にシキ達と合流した方が良かったんじゃないの? 何を血相変えている訳?」


「オームギ、シキから預かった短剣を持っているな?」


「ええ。『大食らいの少身物(グラットン・ダガー)』……記憶を消す魔道具よね」


「そうだ。そしてそれは元々赤の国グラナートのものだと知っているな」


「私を誰だと思っている訳? グラナートの大罪武具くらい知っているわ」


「今追っているのは、その短剣の持ち主だ」


 オームギがシキ達と出会った際、記憶を消す魔道具を預ける事で彼らは信用を得ていた。

 オームギが回収していた橙のコアを敵に奪われ、それを取り戻すために今はシキ達とは協力状態を続けている。そしてその証の一つとして、預かった魔道具はまだオームギが所持をしたままであった。


 オームギとシキ達との関係を聞いていたレンリは、彼女の所有する短剣を話の糸口とし説明を始める。

 赤の国グラナートが所有する大罪武具と呼ばれる特殊な魔道具と、それを所有する者について。


 これから戦う短剣の本来の所持者を、レンリは語る。


「その女は単独で行動しながら、道中見つけた人や生物を攫っていた。記憶を消すその短剣を使ってな。そしてヴァーミリオンの住処へと連れて行き、奴の洗脳魔術で手駒に変えていたんだ」


「でもそれって確かシキが倒したのよね? それで短剣もコアも回収したって……」


「ああ。だが奴はその後シキ達の前から姿を消していた。そして今聞き込みによると、女はまだこの国に潜んでいるらしい。魔道具もコアも失った奴が、わざわざこの国まで来た理由など一つ……!」


「ヴァーミリオンと接触しようとしてるって訳ね!」


 敵の狙いを、敵の手駒として扱われていた男は推察する。魔道具やコアを失っても、ヴァーミリオンの手足として人攫いを行っていた者であれば、何かしら策を持っていると。扉をくぐる方法を知っているのだと。


 だからこそレンリは、相手の女より先に行動をする必要があった。


「俺達は奴らの移動方法が分からない。だから女が戻る前に、あの扉の場所へ行き罠を仕掛ける必要がある」


「罠って、私達もうすぐ出発の予定でしょ? まさかこのままずっと相手を待つって訳?」


「ずっとではない。さっき会った商人に路地裏の調査を頼んだだろう。商人組合かギルド連盟から人が来れば後はそいつらに任せ、俺達は旅立てばいい。それまでの時間稼ぎだ」


「だったらそれこそシキ達と合流した方が良かったんじゃないの? コア探しが終わったんなら待ち合わせした場所に居るんじゃ……」


「案ずるな、ハロエリとハルウェルにシキ達を呼んで来るように頼んでいる。相手はシキも追っている人物だ。ならば国を出るより前にこちらの問題を……あれはっ!!」


 一面を染める茜色。誰も居るはずの無い建物の上に落ちる影。視界の端から伸びるツルはレンリ達と同じ場所を目指し、まるで木から木へと飛び移る生き物のように建物の上を高速で移動していた。


 伸びるツルの根元で空を舞う、明るいクリーム色に一部紫が入った髪をなびかせる少女。

 かつて忘却の通り魔と呼ばれ人々を攫い続けた赤の国の手先が、ついに姿を現す。



「向かわせるものかッ! 砂乱の翼(サンドストーム)ッッッ!!」



 レンリは移動用に使っていた魔術を咄嗟に前へ振りかざし、対象へと放った。

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