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第五話 『彼女が望んだ世界』

「……私ね。この絵本みたいな、幸せな世界を作りたいな」


 そんな世界は作れない。

 平和など訪れるはずがない。

 魔族と人間は相容れず、殺し合うことしか出来ない。


 そう分かっているはずなのに、彼女はそう言った。


「――――」

 

 その横顔は、どうしようもなく悲しそうで。


「……作るよ」

「え?」


 ――無理をして笑う彼女を見た。


 大切な人達を失って、傷付き、悲しみ。

 それでもなお、無理をして笑う彼女を。

 その悲しい笑顔を、本当の笑顔に出来たらどれだけいいだろうと。


 そう、思ったからこそ。


「――俺が作るよ」


 彼は誓った。

 彼女を笑顔に出来る世界を作ろうと。

 英雄になって、幸せな世界を作ろうと。


 それが、彼女・・の約束だった。



 嫌がるエルフィに目薬を差し、迷宮を進んで行く。

 経過は順調だ。

 スロープのように伸びている通路を登り、二階層へ上がる。

 

 二階層に入ってすぐの部屋は、雷帝大蜘蛛の巣だった。

 あちこちに雷を帯びた蜘蛛の巣が張っており、大量の雷帝大蜘蛛が待ち構えている。


 部屋に入ると、灯りに気付いた雷帝大蜘蛛が動き始めた。

 流石に、この数を相手にするのは面倒だ。

 蜘蛛達が襲ってくるよりも早く、俺は離れたところから魔術で火を放った。


「――"火炎弾フレイム・バレット"」


 火が蜘蛛の巣を燃やし、その上にいた雷帝大蜘蛛達にも燃え移る。

 流石にこの程度で死ぬ魔物ではないが、巣が燃えていることでパニックが起こった。

 

 その間に、俺達はその部屋を通り過る。

 道を塞ぐ個体だけ、翡翠の太刀で両断しておいた。

 今ならすべての個体を楽に倒せただろうが、無駄な戦闘は避けるべきだからな。


 部屋を抜けてからも、浮遊光に引き寄せられた魔物がやってくる。

 壁や地面の隙間から、黄色の液体が滲み出てきた。

 ボルトスライムだ。


「スライムって、どこか美味しそうな見た目をしていると思わないか?」

「啜って見たらどうだ。シュワシュワして美味しいかもしれないぞ」

「…………」

「考えるな」


 軽口を叩きながら、道を塞ぐスライムを相手取る。

 打撃や斬撃を無効化し、さらに武器を通じて雷を流してくるボルトスライムは厄介な魔物だ。

 しかし、不意を突かれたりしなければ、その対処は難しくない。

 すべてのスライムに共通して言えることだが、液体の中に浮かぶ核を潰してしまえば簡単に倒すことが出来る。


「"岩石弾ストーン・バレット"」


 スライムが襲ってくるよりも早く、岩の弾丸でその核を撃ち抜いておく。

 核を失ったスライムが、ベシャリとただの液体に戻っていった。


「大した精度だな」

「どうも。狙撃も、実戦の中で嫌というほど磨いたからな」


 生き残るために、剣術も魔術も覚えざるを得なかった。

 命がかかっていたからか、『勇者の証』のお陰なのか、習得するのにそこまで時間は掛からなかったな。

 基礎を身に着けてからは、ひたすら実戦に望み続けた。

 旅の途中に、あいつらに教わることもあったがな。


「ふむ。魔力はどうだ?」

「まだそれなりに余裕がある。この分なら、持ってきたアレを使わなくても良さそうだ」


 二度目の召喚をしてすぐの時を思うと、魔力総量もかなり増えた。

 魔術師の平均魔力量よりも、やや多いくらいだろう。


「ならば良い。無理はするなよ」

「……ああ」


 スライムを狙撃し、雷帝大蜘蛛を突破して三階層へと登る。

 今のところ、エルフィは攻撃用の魔眼は一度も使っていない。

 魔王パンチやら魔王キックやら、素手だけで魔物に対処できている。

 俺の力が多少戻ったことで、これまでの迷宮よりもエルフィの負担が少ない。

 ここまでは順調だ。


「そろそろ、上位の魔物が出てきてもおかしくない。気を付けろ」


 そういった矢先、迷宮が光を放出した。

 相変わらず、恐ろしい光量だ。

 最初に痛い目を見たからか、エルフィがビクッと体を震わせていた。


 やがて発光が弱まっていき、迷宮が再び闇に覆われていく。

 完全に光が消える、その直前。


「来るぞ、伊織!」


 浮遊光とは違う、闇を照らす別の光が現れた。

 全身を輝かせながら近付いて来る岩の巨人。

 シャインゴーレムだ。


「後方に別の魔物がいるな」


 シャインゴーレムの後ろに、雷を纏った鳥が翼をはためかせている。

 光雷鳥だ。

 前衛としてシャインゴーレムが構え、光雷鳥が後衛として雷で援護する。

 厄介な組み合わせだ。


 シャインゴーレムは鈍重そうな見た目をしているが、反して動きは素早い。

 さらに、拳闘士のような体捌きで殴りかかって来る。

 生半可な攻撃では、躱されてしまうだろう。


『クェエエ!!』


 シャインゴーレムをすり抜けて、雷光鳥の雷が飛来する。


「――ふッ」


 前に踏み出したエルフィが、魔力を纏ったただの蹴りで雷を消し飛ばした。

 そこを狙ってシャインゴーレムが殴りかかってくる。

 間へ割り込み、"柔剣"で拳を受け流す。

 同時に返す刃で、シャインゴーレムの下半身を斬り飛ばした。


 かなりの硬さを誇るゴーレムだが、翡翠の太刀は紙粘土のように斬り裂いた。

 だるまのように落下する上半身を、


「魔王キィィィック!!」


 後方の雷光鳥へ、エルフィが蹴り飛ばした。


『グェーッ!!』


 飛来した岩の塊に押し潰され、雷光鳥が潰れた。

 即死だろう。


「良い連携だったな」


 得意そうにするエルフィへ相槌を打ち、先へ進む。

 その後も十回以上、連携を組む魔物と出会ったが、危なげなく倒すことが出来た。


 やはりエルフィは魔術や身体能力だけでなく、技能もずば抜けている。

 これまでの迷宮もそうだが、こうも楽に進めるのは、エルフィの実力のお陰だろう。  

 欲しいタイミングで動いてくれるのは、ありがたかった。


 四階層からは、さらに出てくる魔物の数が増えていく。

 浮遊光に呼び寄せられて、大群が押し寄せてくる。

 出てくる魔物のほとんどが連携を取っており、練度も高い。

 

 これまで迷宮に挑んだ教国は、ほとんどが四階層より上に進めていない。

 最高で、五階層までのようだ。

 五階層にあがった者も、雷光龍ライトニングドラゴンによって壊滅。

 数百の精鋭が、ほんの数人しか残らなかったらしい。


 煉獄迷宮の時のように、冒険者のパーティでここへやってきていたら、恐らく四階層より上に進むのは無理だっただろうな。

 

 ここから、エルフィの魔眼を解禁した。

 相手の数が多いからこそ、エルフィの魔眼は効果的だ。

"重圧潰"、"灰燼爆"で魔物の連携を崩し、そこへ斬り込む。

 互いに最小限の負担で、四階層は突破出来た。


 五階層へ上がる。

 恐らく、あと二階くらいで最上層に着く。

 以前挑んだ時は、忌光迷宮は六階層までしかなかった。

 これまでの迷宮のことを考えると、そこまで大きく迷宮の構造は変わっていないだろう。


 だが、の情報を集められたのは、四階層までだ。

 五階層の情報は、ほとんどない。

 これまで以上に、警戒する必要がある。


「!」

「……これは」


 部屋に入ってすぐ、目に入った。

 五階層へ上がった俺達を待っていたのは、


『オオォォオオ――!!』


 雷光龍の群れだった。

 金色に輝く鱗に、黄色の双眸、背中から突き出た翼はバチバチと雷を放っている。

 俺達を軽く見下ろせるだけの巨体が六つ、待ち構えていた。


「……挑んだ連中が壊滅するわけだ」


 灯りのせいで、気配を殺して進むことも出来ない。

 これだけの魔物を正面から相手取らないといけない……となれば、生半可な戦力では壊滅して当然だ。

 心象魔術が使えるレオくらいの実力者がいたならば、話は変わったのだろうが。

 

「これだけ一度に出てくると、むしろテンションが上がるな!」

「上がらない」


 さて。

 ここが、第一関門か。


「……押し通るぞ」

「無論だ!」


 余力は十分。

 後は、どれだけ消費せずに進めるかの勝負だ。


「…………」


 戦いの中、ふと思い出した。

 三十年前、教国に来た時のことを。 

 あの時もこうして、強力な魔物に囲まれていたな、と。


 

 三十年前、最初に討伐した迷宮は王国の奈落迷宮だった。

 国土に巣食っていた魔物や魔族を討伐し、俺が戦えるようになってから、奈落迷宮に挑んだ。

 そして、その次に向かったのが、教国だった。

 

"勇者"は聖光神メルトが選んだ異界の人間、という話らしいからな。

 宗教の繋がりで、教国が選ばれたのだろう。

 リューザス、ディオニス、ルシフィナ。

 パーティの三人が揃ったのは、教国へ向かう途中のことだったな。

 

 三人が揃ってから、教国に辿り着くまでにもいろいろなことがあった。

 四天王"千変"と最初に戦ったのも、教国へ向かう途中のことだった。


 ――ただ、元の世界に帰りたい。


 そんな俺の考えが変わり始めたのも、この頃だ。


「……勇者様! どうか、ファミナをお救いください!」


 教国にやってきた俺達を待っていたのは、救助を懇願する言葉だった。

 聖都の一つ、ファミナが魔族によって襲われていた。

 街の人は抵抗しているが、すでにかなりの数の人が犠牲になってしまっている。


「そんな……」


 口元を抑え、悲しげに目を伏せるルシフィナを覚えている。

 俺達はすぐに、ファミナを救いに向かった。


 

「――――」


 ファミナには惨状が広がっていた。


 あちこちに、人の死体が転がっていた。

 親の骸に縋って、泣いている子供がいる。

 致命傷を追いながら、即死出来ずに助けを求めている騎士がいた。


 ――たくさんの、泣き顔を見た。


「――――」


 傷付いた人を、必死に助けようとするルシフィナを見た。

 泣いている子供を、助けようとするリューザスを見た。

 苦しむ騎士を、表情を隠しながら介錯するディオニスを見た。


「――――」


 助けたいと思った。

 救わなければならないと思った。

 悲しむ人達を、笑顔にしたいと思った。


 俺が心象りそうを抱いたのは、この時だったのかもしれない。




「ぐ……ッ」


 ディオニスが血を流し、地面に倒れ込む。

 街を占拠した魔族のボスの一撃が、ディオニスの防御を突破したのだ。


「ディオニスッ!?」


 そちらに気を取られた瞬間、


「しまっ……」


 別の魔族の一撃が放たれた。

 対処が遅れ、回避し切れない。


「――っ」


 俺を庇って、魔族の攻撃をルシフィナが負った。

 胸から血を噴出させて、ルシフィナが血に沈む。


「ルシフィナ!? クソ、どうしたら……」


 仲間を失うかもしれない。

 ディオニスとルシフィナ、どちらを助ければいいのか。

 様々な感情がごちゃ混ぜになって、俺が動けなくなった時。


「――馬鹿か」


 放たれた魔術が周囲の魔族を纏めて吹き飛ばし、炎が道を切り開いた。


「リューザス……」

「今のうちに、あいつらを安全なところまで下げろ。ここは俺が引き受ける」

「な……。お前一人を置いて行けっていうのか!?」

「そうだ。早く行け。ルシフィナが死ぬぞ」

  

 俺の葛藤を断ち切るような、リューザスの冷たい言葉。

 混乱していた頭が、冷静に戻っていくのを感じた。


「……すぐに戻ってくる」

「あァ」


 仲間を死なせてなるものか。

 その一心で、俺はルシフィナとディオニスを運んだ。

 だから、だろう。


「一人じゃなきゃ、いけねェんだよ」


 その時のリューザスの言葉と、歪んだ笑みを俺は気に留めなかった。




「な……」


 ルシフィナとディオニスを街の人に預け、俺が戦場に戻ると、戦いはほぼ終わっていた。

 あちこちに、大量の魔物が転がっている。

 魔族も、残り二人になっていた。


「リューザス……!」


 その中心に、ズタボロになったリューザスが立っていた。

 これだけ傷付きながらも、リューザスは俺達を守るために持ち堪えていてくれた。

 あの時の俺は、そう思った。

 

「……ありがとう、リューザス」


 礼を言いながら、俺もすぐに助太刀に入った。

 残っていた魔族も、リューザスの魔術によってボロボロだった。

 寄ってくる魔物を俺が倒し、その間にリューザスが詠唱する。


 やがて、リューザスの魔術が魔族のボスを消し飛ばした。


「勝った……」

「く、はは。やった。やってやったぞ……!」


 全身から血を流しながら、拳を握りしめ、嬉しそうに笑うリューザス。

 何故か、その笑顔を良く覚えている。


 こうして、俺達は魔族に襲われていたファミナを救った。

 ファミナから、シュメルツへ戻った俺達を待っていたのは熱狂的なコールだった。


「勇者様達が来たぞ!」

「あれだけの魔族を倒した英雄……」

「"英雄アマツ"だ!」


 多くの人が、俺のことを"英雄"と呼んだ。

 ……英雄なんて、くだらない。

 そんな風に思っていた俺だったが、


「……くないな」

「……? 何か言いましたか?」

「いや。みんながこうして笑顔になってくれるなら、英雄も悪くないなって」


 キョトンとするルシフィナにそんなことを言って、すぐに照れくさくなった。

 顔を逸らす俺を見て、ルシフィナは嬉しそうに笑っていた。


「そうですよ。貴方には、みんなを笑顔に出来る力があるんですから」


 その言葉も、その後の俺の心象りそうを形作った要因の一つだったのかもしれない。



 その後すぐに、メルト教団の教皇が礼を言いに来た。


「アマツ様。此度は誠に、ありがとうございました」

「いえ……」

「これも、メルト様のお導きですね」


 何でもメルトに絡めようとする教皇に苦笑していると、彼は聞いてきた。

 貴方達は、どうして戦っているのかと。


「僕は、鬼族なんです」

「お、鬼族ですか」

「ええ。そう驚かれるのも今は仕方ないことでしょう。でも、僕はいずれ、鬼と人が手を取って暮らせる世界を作りたいんです」


 ディオニスは、そう言った。


「では、ルシフィナ殿は?」

「私も、ディオニスさんと少し似ています。すべての種族が手を取って、笑顔で暮らせる世界を作りたい。だから、戦っているんです」


 ルシフィナはそう答えた。


 勇者として戦い始めて、すでに半年以上が経過している。

 その中で、たくさんの泣き顔を見た。

 ファミナでの戦いでも、そうだ。

 

 だから、だろう。

『すべての種族が笑顔で暮らせる世界を作りたい』。

 この言葉が、心に焼き付いたのは。


「では、アマツ殿は?」

 

 尋ねてきた教皇に、俺は答えた。


「俺も、同じです」

「と、いうと?」


 この時に。

 俺は決めた。


「――皆が笑える世界を、作りたいんです」


 欺瞞、偽善、嘘。

 偽りだらけだった三十年前に、俺が確かに抱いた心象だ。


「では……ん? リューザス殿は?」

「あー。彼なら今、血相を変えて部屋を出て行きましたよ。お腹でも壊したんじゃないですか?」


 いつの間にかリューザスは消えており、ディオニスが首を傾げながらそう答えた。

 

「シュメルツに帰ってきてから、気分が優れないようでしたし……。大丈夫でしょうか」

「……あれだけの戦いの後だからな。帰ってこないようだったら、見に行ってくるよ」

「……ええ、お願いします」


 その後。

 教皇と別れてから、ルシフィナと二人きりになる機会があった。


「ねえ、アマツさん。……伊織、さん」


 彼女にだけ教えていた、本当の名前。

 躊躇いがちに、ルシフィナは俺の名を呼んだ。


「どうしたんだ?」

「……さっきの本当ですか?」

「さっきの……?」


 期待するような、不安そうな、そんな表情だった。


「本当に……伊織さんは、その。皆が、笑える世界を……」

「……ああ」


 ルシフィナの言葉に、頷いた。

 

「――俺が作るよ」


 三十年前のあの日。

 俺は、ルシフィナとそう約束したんだ。


 ――その先の、くだらない結末も知らずに。



「――"魔腕・壊断爪"」


 エルフィの五爪が、雷光龍を抉る。

 戦闘が始まってから、十五分が経過したいた。

 今、最後の一匹がエルフィの一撃によって絶命した。


「……ふう」


 龍の血溜まりの中で、一息吐く。

 流石の龍種というべきか、かなり手間取った。

 エルフィの魔腕まで出すことになるとはな。

 とはいえ、幸いにも魔力消費はあくまで想定内の範囲だ。

 これなら、十分に戦える。


「くふ」

「……何だよ」


 今後の戦闘を想定していると、エルフィが小さく嫌な笑みを漏らした。

 

「くふふ、結局、私が抱っこするハメになったな?」

「…………」

「しかし、前に比べると、多少は逞しくなったな。うむうむ、もう少し筋肉をつけると私好みだぞ?」


 戦闘中、どうしても自力ではブレスを回避しきれない場面があった。

"魔毀封殺イル・アタラクシア"を使えば防げたが、出来るだけ魔力は消費したくなかった。

 ……だから、こいつに回避を頼んだんだがな。


「そう照れるな」

「照れる要素がないだろうが」

「くふ。良い良い。元魔王たるこの私に、魔王様抱っこしてもらえたことを光栄に、あいたぁ!?」

「何が魔王様抱っこだ。行くぞ」

「うぅ……」


 龍の死骸を踏み越えて、次の部屋へ向かう。

 別の雷光龍にも遭遇したが、今度はエルフィの手を借りずに倒した。

 他の魔物も蹴散らし、六階層へと上がる。


「……ふむ。魔素の濃さからいって、ここが最上層と見て間違いないだろうな」


 空気中に舞う魔素が、バチバチと静電気のように弾けている。

 これまでの迷宮の最奥部と同程度の魔素量だ。

 警戒を高めながら、六階層を進む。


 そして数十分後、俺達は最奥部へ辿り着いた。


「……あの部屋か」

いるな・・・


 部屋内から、肌を刺すような魔力を感じる。

 間違いなく、雷光龍を遥かに越える存在が控えている。

 

「第二関門だ。気を付けていくぞ」

「……うむ」


 最奥部の部屋へ足を踏み入れた瞬間だ。


「……!」


 前方から複数の紫雷が俺達を狙い撃つ。

 回避し、攻撃を仕掛けてきた相手を視界に収めた。


 そこにいたのは、巨大な骸骨だった。

 三メートル近くある巨体に、赤いマントを纏っている。

 眼孔には赤い光が灯り、俺達を睨み付けている。


「"骸骨王グランド・リッチ"か」


 骨系の魔物の最上位に位置する魔物だ。

 強力な魔術と身体能力、そして高い知能を持ち合わせている。

 外見から魔物に分類されているが、魔族と呼ばれてていてもおかしくない存在だ。


 こいつが雷魔将か。


『嘆かわしい』


 どこに声帯があるのか、雷魔将はそうつぶやいた。

 発言と同時に、周囲にバチバチと紫雷が走る。


『あぁ、何たることだッ! 汚らわしい汚らわしい穢らわしい! 人間と裏切り者が、土足で我が城に踏み込むなど、あってはならないことだッ!!』


 ……うるさいな。

 炎魔将のように、知能がない魔物が一番相手にしやすいのだが。


『――わたしは五大魔将が一人、"雷魔将"ゼラート!』


 大仰な仕草とともに、雷魔将が名乗りをあげる。

 名など、どうでもいい。

 

 さて、第二関門だ。

 この後・・・に備えて、いろいろと布石を打っておくとしよう。


『さあ、貴様らを討ち滅ぼしてくれよう』


 大地を舐める紫電とともに、雷魔将との戦いが始まった。


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